賭けマージャンを国会で質問「江本孟紀氏」が振り返る後藤田法相の珍回答

賭けマージャンを国会で質問「江本孟紀氏」が振り返る後藤田法相の珍回答

江本孟紀氏

 黒川検事長の一件で一気に注目度があがった「賭けマージャン」。実は国会で1993年に取り上げられていたことも話題になっている。質問した側のエモヤンこと江本孟紀元参院議員(72)に、コトのあらましを聞いてみたところ……。


■「金丸電撃逮捕」の直後


「後藤田さんの時でしょ、オレ質問したんですよね」

 そう話すのは、江本孟紀氏ご本人。「後藤田さん」とは後藤田正晴法相を指す。江本氏は1992年の参院選でアントニオ猪木率いるスポーツ平和党から比例代表で出馬、初当選していた。

「あの時は政治とカネの問題が盛り上がっていたんでね、取り上げることにしたんですよ」

 駆け足ながら、当時の政治状況を振り返っておこう。

 1992年8月、東京佐川急便から金丸信自民党副総裁への5億円のヤミ献金問題が持ち上がる。金丸氏は東京地検特捜部に上申書を提出。特捜部は金丸氏の事情聴取さえできずに政治資金規正法違反で略式起訴。罰金額は20万円だった。「強いものに弱い検察」批判が噴出、東京・霞が関の「検察庁」の表札には黄色いペンキがかけられる。

 信頼を大いに失墜した検察の窮地を救ったのは「国税」だった。金丸氏が割引金融債のワリシンなどで38億円の蓄財をしている――。情報提供を受けた特捜部は、1993年3月6日、金丸氏を脱税容疑で逮捕。検察は息を吹き返し、その後、大きな疑獄に踏み込んでいくことになる。

 江本氏が質問に立ったのは「金丸電撃逮捕」の直後、3月24日の参院予算委員会においてだった。予算委員会と言えば喫緊の課題を討議し合う国会最注目の場。質疑内容はざっと以下の通りだった。

江本 最後に法務大臣に一言お聞きしたいことがございます。賭けマージャンのことなんですけれども、世間一般にやられておりますので、大体どの範囲ならいいのかということをぜひお聞きしたいと思います。我々野球界の出身者なんかは、かなりマージャン賭博事件とかいろんなことで永久追放処分になったり、スポーツ界なんかでは非常に厳しい処分をされておりますが、しかし世間一般では賭けないでただ積み木だけするということはあり得ないので、大体どの程度ならいいかなということをお聞きしておいた方が皆さんもやりやすいと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

後藤田法相 江本さんはどれくらい賭けているんですか。

江本 私は10年前からやめております。

後藤田法相 まことにどこまでが賭博になりどこまでならば博打にならないのか、境目は何だ、こういう御質問ですが、易しいようで実際ここでお答えするのは非常に難しいんです。だから、こういうところでのお答えだとすれば、刑法百八十五条で、偶然の勝敗にお金や物を賭けてそれの取得を争う、これは博打になるわけですね。ところが、そのただし書きに、娯楽の程度であればいい、こう書いてあるんです。それはどういうことかと言えば、社交儀礼の範囲内であれば私は賭博にはならないのではないかなと、これ以上は答えられないんです。お許し願いたいと思います。

江本 どうもありがとうございました。いまいちよくわからないんですけれども、まあなるべく捕まらないようにみんな気をつけたいと思います。


■幻の“3万円くらいまでだったら許される”


 再び、江本氏はこう話す。

「あぁそんなやり取りでしたか。確か後藤田さんが、“まあ3万円くらいまでだったら許される”みたいなことをウッカリ言ったと記憶しているんですがね。それで委員会の場もザワついて、後藤田さんは答弁を訂正したんじゃなかったでしたっけ?」

 当時の新聞記事を拾ってみると、

《たった六分間の持ち時間だったが、沈滞ムードの予算審議に笑いをまいた》

とし、こう続く。

《苦笑いしながら答弁に立った後藤田正晴法相は「江本さんはどれだけかけてるの?」とけん制球を投げた後で「こういう所で答えるのはやさしいようで難しい。刑法一八五条はただし書きで娯楽の程度ならいいといっている。社交辞令の範囲内ならとばくにならないということ。これ以上は言えません」》

 どうやら江本氏の記憶違いだったようだ。警察官長官などを務めた官僚時代はカミソリの異名を取った後藤田氏も法相の頃は、その鋭さは鳴りを潜めたなどとも言われていたが……。

「なるほど、そうでしたか……。オレの父親が警察官で、その縁で後藤田さんとは以前から知り合いで、その仲間意識で質問させて頂いたように思います。質問でどれくらい賭けてるかについて聞かれて、“10年前からやめている”と答えているようですが、元々オレはほとんどやってないんですよね」

 あれから27年。東京高検検事長を辞職した黒川弘務氏の賭けマージャン問題を受け、法務省の川原隆司刑事局長は5月22日の衆院法務委員会で、山尾志桜里氏の答弁に立ち、「賭けレートは『点ピン』と呼ばれる1000点100円だった」と明らかにした。

「オレが質問した頃は牧歌的な時代だったんですよね……」(江本氏)

週刊新潮WEB取材班

2020年5月23日 掲載

関連記事(外部サイト)