【コロナ禍】屋形船の風評被害は甚大 朝日報道でわかった東京都の重すぎる罪

【コロナ禍】屋形船の風評被害は甚大 朝日報道でわかった東京都の重すぎる罪

屋形船イメージ

 緊急事態宣言が解除されても、まだまだ続きそうなコロナ禍。かれこれ3か月前、都内で初のクラスターが屋形船で確認された――と大々的に報じられたことをご記憶だろうか。5月17日付の朝日新聞(朝刊)は「屋形船 独り歩きした感染経路」というタイトルで、この際、感染経路を巡る東京都の発表に勇み足があったと報じた。結果、東京の屋形船は「クラスターの象徴」のように扱われ、甚大な風評被害を受けることになったというのだ。

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 まずは、朝日の報道を要約してご紹介しよう。

 2月13日、隅田川などで屋形船を運行する「船清」の女将に品川区の保健所の担当者から電話があった。1月18日に屋形船で開かれた新年会に参加したタクシー運転手の男性が新型コロナに感染した、と。

 翌日、保健所から再び電話。今度は70代の従業員の陽性が判明したと告げられたという。この従業員は、1月15日に約70人の中国人ツアー客の対応をしていた。女将は、客の中に武漢出身者と見られる者は5人いたが、コロナの感染者は確認されていない、とツアー会社から聞かされていた。そのため、従業員が感染したと聞かされて驚いたという。

 ところが、都の発表は「中国人客→屋形船の従業員→タクシー運転手」という感染ルートを示唆するものだった。2月15日時点で、朝日の取材に都の担当者は「屋形船がきっかけで感染が拡大した」と語ったという。おかげで、屋形船=コロナのイメージが独り歩きしてしまったのだ。

 タクシー運転手の感染が判明した後、屋形船で行われた新年会に参加したタクシー組合関係者の感染が相次いで判明。船清の従業員は、40代の従業員も感染していたことが判明した。

 つまり、クラスターとはいうものの、感染経路は不明。わざわざ新年会の場所が「屋形船」と公表する必要はなかったというのである。


■小池都知事と加藤厚労相に要望書


「屋形船でコロナ感染者が出たと最初に報じられたのは、2月14日の金曜日でした。その翌週から予約がほとんどキャンセルになりました……」

 とため息をつくのは、江戸川区で屋形船を運航する「あみ達」の女将・高橋並子さん(40)である。

「3月から4月にかけての花見シーズンでは、毎年9000人のお客さんが乗船なさいます。それが今年はゼロ。うちは大正5年の創業ですが、戦時中以外、こんな状況になったのは初めてです。都の要請を受けて船は4月3日から5月31日まで休業しています。6月は予約はほぼゼロ、7月は5件予約が入っていますが、状況によってはどうなるかわかりませんね。普通の飲食店は4月の緊急事態宣言から休業となっていますが、うちは2月から実質的に休業しているようなものですから、本当にしんどいですよ」

 あみ達では、営業再開に向けて万全のコロナ対策を講じているという。

「船内には、救急車で使われているオゾン発生器を設置しています。これはコロナウイルスを無害化するものです。それから、医療機関で使われている除菌シートで、テーブルなど船内を消毒しています。また、2月の時点から、お客様には検温をさせていただき、37・5度以上あるお客様には乗船をお断りさせていただいています。船内は、ゆったり乗っていただけるように、112人定員のところを、半分以下の50人未満にしています。稼ぎ時となる花火大会は、10月に延期になった江戸川花火大会以外、ほとんど中止になりました。この先どうなるんでしょうね」(同)

 東京都の屋形船業者は70社ほど。屋形船東京都協同組合、江戸屋形船組合、東京湾遊漁船業協同組合と3つの組合がある。この3つの組合の代表が3月30日に小池百合子都知事宛てに、4月6日には、厚労省の加藤勝信大臣宛に営業支援を求める要望書を提出した。

「屋形船が風評被害にあったので、是正して欲しいと思ったのです」

 と語るのは、屋形船東京都協同組合の理事長で屋形船「小松屋」の4代目社長、佐藤勉氏である。

「東京都の発表以来、屋形船はクラスターの発生源と見られています。屋形船を知らない人は、閉鎖された空間という印象を持っているようです。けれども実際は、船の前方後方、両脇には窓があり、天井には換気扇もありますから、非常に風通しの良い空間となっています。そういう現状を都と厚労省に認識していただきました。さらに、風評被害のせいで、どの業者も予約がすべてキャンセルとなり、新規の予約も入ってこない状況となっていますので、営業支援と協力金を求めました」

 江戸屋形船組合の組合長で屋形船「網さだ」の荒井勇司代表取締役もこう言う。

「緊急事態宣言が解除されて、6月から営業が再開しても、今まで通りの仕事ができるかどうか難しいと思います。うちとしては、今まで60人とか70人だった定員を、最大20人くらいまでに減らして営業再開に臨む予定ですが、果たしてお客さんが戻ってくるのでしょうか。クルーズ船もそうでしたが、船と言うと、感染源のイメージとなってしまいましたからね、今まで通りの営業ができるようになるのかわかりません。コロナの特効薬やワクチンができて、感染の心配がなくなり、普通のインフルエンザと同じような扱いになった時に元に戻るのか。コロナ禍で、新しい生活様式に変わってしまい、人が密集する空間を避けるようになり、日本の文化である花見や花火、江戸時代から続く屋形船が廃れてしまうのではないか、と不安で仕方ありません」

 小池知事も屋形船の業者に特別な支援を考えた方がよさそうだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月28日 掲載

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