アビガン副作用で、レムデシビルは効果なし… 対コロナに期待の既存薬

アビガン副作用で、レムデシビルは効果なし… 対コロナに期待の既存薬

どの薬が本当に有効なのか(写真はイメージ)

■「重症化で免疫暴走死」を防ぐ「アクテムラ」


 ワクチン開発は1年先、2年先ともいわれる中、それまでは既存の薬で防衛するしか道はない。最近、承認されたレムデシビルには効果を疑問視する声が上がり、アビガンは副作用が心配――。いや、頼もしい味方は他にも控えていた。

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 例えば、重症患者に限定して投与する方針のエボラ出血熱の治療薬、レムデシビルは、アメリカのトランプ大統領が声高にその効果を喧伝してきた。アメリカの国立衛生研究所はレムデシビルが患者の回復を早めるとするが、中国の研究グループは「効果はない」とも指摘、その有効性に疑問符がつけられている。アビガンについても催奇形性、つまり胎児に奇形が出る副作用や腎機能障害なども懸念されている。

 そこで以下の二つの薬に期待が高まっている。一つは、フサン。急性膵炎の治療薬だ。

 膵炎の薬がなぜコロナに……。東京大学医科学研究所分子発癌分野教授の井上純一郎氏が、まずは新型コロナウイルス感染の仕組みから解説する。

「ウイルスの人体への感染は、ウイルスを覆うウイルス外膜が人体の細胞を覆う細胞膜と融合することで起こります。ウイルス外膜から突き出る突起様のS(スパイク)タンパク質がACE2という人体の細胞の受容体にくっつく際、人体のタンパク質を分解する酵素が働くことで膜融合が進行します。すなわち、この酵素の働きを抑制できれば、ウイルスの感染、増殖を抑えることができるのです」

 とした上で、フサンの有効性について、

「急性膵炎は膵液が膵臓の組織を破壊するものですが、膵液の中にタンパク質分解酵素が含まれ、この薬はその働きを抑える治療薬として使われてきました。すでに、ウイルス感染を防ぐことはMERSウイルスで検証済みでしたが、今回、新型コロナウイルスを使った実験でも同様の効果を確認できました。アビガンのような副作用もありません」

 さらに、

「血液が凝固するのを防ぐ作用もあることが分かってきました。十分に確認できてはいませんが、血栓の問題も解消できるのでは、と期待しています」(同)


■リウマチとの共通点


 その血栓ができる原因として、免疫の暴走があると 記事「コロナ」は『肺炎』だけではなかった 血栓、脳梗塞を引き起こす仕組みとは」で触れた。暴走を抑えるのに用いられるのが、リウマチの治療薬、アクテムラだ。

「リウマチの薬がコロナに効くと言えば、“なんでやねん”とみんな思うんですよ」

 とは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授の岸本忠三氏。アクテムラ開発につながるインターロイキン6(IL6)という物質の発見者である。

「ウイルスの欠片が血管の内側の細胞に付着すると、免疫の働きを高めるタンパク質のIL6が分泌されます。しかし、IL6が過剰に働くと血管内皮を傷つけ、血栓ができたり、血管の液性成分が流れ出て肺が水浸しになる。これがコロナの重症化パターン、サイトカインストームというわけです」

 リウマチとの共通点については、

「コロナではサイトカインストームが急速に進行する一方、この現象がゆっくり慢性的に起きるのがリウマチです。どちらもIL6の過剰な働きが原因。アクテムラはIL6が過剰に働くのを防ぐ薬ですから、今回のコロナによる肺炎患者にも効果的なのです」(同)

 実際、大阪はびきの医療センターでは、アクテムラを13人の重症患者に投与、9人の患者が回復している。岸本氏に、どのタイミングの投与がもっとも良いのか尋ねると、

「大阪はびきの医療センターで試していますが、私はサイトカインストームを起こす前の中等症の患者さんに投与するのが重症化を防ぎ、良いのではと思っています。もっとも、重症化するリスクがあるのは高齢者や糖尿病など持病のあるごく一握りの人。こうした人たちを救えれば、大騒ぎすることはありません。風邪の親玉くらいで考えておけばよいのです。私はコロナで担ぎ込まれたらアクテムラを処方してくれと言いますよ」

 いずれも日本発のフサンにアクテムラ。コロナ・シンドロームという親玉の退治へ、心強い助け舟となりそうだ。

「週刊新潮」2020年5月28日号 掲載

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