ゴーン逃亡で大金を手にした「グリーンベレー」逮捕 専門家「実刑にすらならない可能性も」

ゴーン逃亡で大金を手にした「グリーンベレー」逮捕 専門家「実刑にすらならない可能性も」

カルロス・ゴーン被告

 外堀は埋まりつつある。昨年末、カルロス・ゴーン被告(66)がレバノンへ逃亡した事件にかかわった人物が、次々と身柄を拘束されているのだ。中でも、5月20日に米国で捕まった親子は、逃亡作戦の中心人物とされる。今後、彼らには、どんな裁きが下るのだろうか。

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「世紀の逃亡劇」を巡っては、すでにトルコで7名の航空関係者が拘束されているが、今回逮捕された2人こそ、ゴーン被告の依頼を受けて作戦を遂行したキーマンだと見られている。

 米国の司法当局によりボストン近郊の自宅で逮捕されたのは、マイケル・テイラー容疑者(59)と息子のピーター容疑者(27)。今年1月、東京地検はこの親子に対して犯人隠避と入管難民法違反ほう助の容疑で、逮捕状を取っていたのだ。

 社会部記者が解説する。

「ゴーン被告の出国に際しては、息子のピーター容疑者が日本国内における事前準備を担ったとされています。昨年の夏に、ゴーン被告と複数回面会して作戦を練り、逃亡当日のホテル予約なども行っています」

 片や父親のマイケル容疑者は、重要な移動手段となったプライベートジェットに同乗していた。

「パイロットは、関西空港を飛び立った後にマイケル容疑者から作戦の全容を明かされたと証言しています。その際、最後まで無事に送り届けないと命はない、と脅迫されたそうです」(同)

 脅し文句とはいえ、マイケル容疑者はかつて米陸軍の精鋭が集う「グリーンベレー」に所属。数々の戦地で修羅場を潜り抜けてきた元職業軍人だ。退役後は、民間軍事会社を設立して代表に就任、アフガンなどで兵士の養成にあたっていた。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によれば、

「民間軍事会社はPMCと呼ばれ、主に紛争地での要人警護や施設や輸送の警備、地元政府軍の訓練などを行います。業務自体は命懸けの仕事で実際に死ぬこともある。それに比べればゴーンの逃亡幇助はリスクが少ない。命の危険はなく、捕まっても重罪ではない。そんな、日本でのミッションはおいしい仕事だったでしょう。アフガンの米軍縮小など、業界自体も仕事が減少していますから」


■実刑は五分五分


 成功報酬は明らかになっていないが、航空機を運航したトルコ人らには約3千万円が支払われた。テイラー親子は、少なくともそれ以上の額を受け取ったとみるのが自然である。

 いやしかし、結果的に御用となれば異国で牢に繋がれることは免れまい。日米は犯罪人の引き渡し条約を締結しており、今回の逮捕も日本政府が強く要請を行った末に実現したという。

「日本側の逮捕状や証拠資料によって、この親子の容疑は明らかです。早ければ1カ月以内には、日本に引き渡されるでしょう」

 と話すのは、元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏だ。

「犯人隠避と入管法違反で起訴され、有罪判決が下れば最長4年半の懲役刑を言い渡すことは可能です。ただし、世間を騒がせた事件を企てた実行犯であっても人に直接的な危害を加えたわけではなく、初犯であることを考慮されれば実刑判決とならない可能性もある。いずれにしてもゴーン被告の公判が開かれていない状況ですから、裁判が始まってみないと分かりませんが、実刑となるかは五分五分といったところでは」

 刑務所にぶち込まれたとしてもたかだか4年と聞くと、ずいぶん短い印象を受ける。おまけに執行猶予がつくとなると、元グリーンベレーにしてみれば濡れ手で粟。これでは世論も納得しまい。

 その上、引き渡しに応じないレバノン政府に護られたゴーン被告を、今後も逮捕できないとなると……。やはり日本の面子は丸潰れか。

「週刊新潮」2020年6月4日号 掲載

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