数千万円の最先端医療! 「京アニ放火殺人犯」を生き長らえさせる意味

京アニ放火容疑で青葉容疑者が先月、逮捕 トータルの治療費は、数千万円に上るとも

記事まとめ

  • 京都市内の病院に入院中だった青葉容疑者が京アニ放火容疑で先月、27日に逮捕された
  • 犯行直後はまず京都市内の病院に搬送も、火傷が全身の9割近くだったと社会部記者
  • 青葉容疑者のトータルの治療費は、実に数千万円に上るとみられるとも

数千万円の最先端医療! 「京アニ放火殺人犯」を生き長らえさせる意味

数千万円の最先端医療! 「京アニ放火殺人犯」を生き長らえさせる意味

「聖地巡礼」中の青葉容疑者(松浩不動産提供)

 京都市内の病院に入院中だった青葉容疑者が逮捕されたのは、先月27日の朝だった。

「昨年7月18日の事件当日について青葉容疑者は、『ガソリンをまいて火をつけたら右腕に引火したので外に出た』と供述しています。逮捕状執行時に告げられて初めて36人が亡くなった事実を知ったといい、『犠牲者は2人ぐらいだと思った』とも話しています」(社会部記者)

 身柄を伏見署に移され、生々しい火傷の痕が残る姿でカメラの放列に虚ろな眼差しを向けていた青葉容疑者は、

「犯行直後はまず京都市内の病院に搬送されたのですが、火傷が全身の9割近くに及び、表皮、真皮、さらに脂肪組織にまで達する最も重い『V度』の状態だったため、2日後には医療設備の整った大阪の近大病院にドクターヘリで運ばれていきました。近大病院で自らの焼け残った皮膚を培養して移植する手術を5回にわたって受けたのち、昨年11月には容態が回復したとして元の病院に戻っていたのです」(同)

 現在も寝たきりの状態が続き、食事や排泄には介助が不可欠。車いすには座れるものの、同じ姿勢を長くは保てないという。

 日本熱傷学会代表理事の櫻井裕之医師が言う。

「V度熱傷であれば、一定の厚みを持つ皮膚がすべての層で傷害され、手足の関節を動かせなくなることも十分考えられます。また(青葉容疑者には)正常皮膚が残っている部位が限られているので、伸展性のある皮膚を作り直すのは非常に難しいと思われます」

 培養皮膚移植については、

「テレビ映像で見る限り、毛髪が生えていたので、頭皮はV度熱傷を免れたのでしょう。あるいはそこから薄く皮膚を採って植皮術を繰り返したり、培養表皮を作成するなどしたのではないでしょうか」

 としながら、

「重症熱傷の集中治療をする場合には、費用が1カ月で1千万円をゆうに超えるケースもあります」

 実際に青葉は近大病院で、皮膚移植はもちろん、危険な状態を脱した昨年9月以降も、もっぱら集中治療室でリハビリや治療を続けてきた。

 厚労省が定めた当時の診療報酬から換算すると、青葉容疑者のように広範囲に熱傷を負った重篤患者が集中治療室に入ると、「管理料」として最初の1週間は1日あたり13万円以上の費用がかかり、8日目からは1日12万円余り。さらに、国内で唯一、厚労省から認可されている医療機関向け培養表皮製造業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」社によれば、細胞を採取して培養するのに446万円、また10センチ×8センチの培養表皮を移植するのに15万4千円が必要であり、目安として培養表皮1枚で成人男性の体表面積の0・5%をカバーするというから、青葉容疑者のトータルの治療費は、実に数千万円に上るとみられる。が、

「青葉は事件前から生活保護を受けており、治療費は原則無料。通常、生活保護費の支給は国が4分の3で、居住する自治体、青葉の場合だと政令市のさいたま市が4分の1を負担し、そのままの比率で医療費も負担することになります」(捜査関係者)


■熱中症のおそれが


 犯罪史上稀な凶悪犯にもかかわらず、膨大な公金をつぎ込み、一般人には手の届かないような最先端の高額医療で救命せざるを得ないジレンマ。それは、逮捕後もなお周囲を苛むことになりそうで、この捜査関係者いわく、

「勾留先は、設備の老朽化が進む京都拘置所ではなく、医療体制が充実している大阪拘置所になりました」

 というのも、熱傷専門医の百束比古(ひゃくそくひこ)・日本医大名誉教授によれば、

「(青葉容疑者は)10カ月にわたって寝たきりだったため、全身の瘢痕拘縮のみならず、下半身の筋肉は衰えて体を支えられずに手もうまく使えず、機能しているのは脳と眼、また発声、飲食あるいは呼吸を司る口腔だけだと思われます。すでに全身の汗腺もほとんど失われているでしょうから発汗障害があり、夏場などは熱中症にも罹りやすくなります」

 つまりは空調完備の個室でなければ、命に危険が及ぶというわけだ。それゆえ、

「これまで大阪拘置所には車いす対応の居室はありましたが、今回、青葉の収容に備えて、エアコン設置をはじめ、ストレッチャーや介護ベッドを入れられるように居室や面会室を改修しました。また、医師や看護師も増員し、24時間態勢で対応できるようにしています」(前出・捜査関係者)

 こうした改修費用だけでも100万円近くかかったというから、まさしくVIP待遇である。

 先の社会部記者いわく、

「青葉には現在、刑事の専門家である遠山大輔弁護士らが国選でついています。2008年に起きた舞鶴女子高生殺害事件で逆転無罪を勝ち取った人権派の敏腕で、青葉の刑事責任能力の有無をはじめ、殺人ではなく傷害致死を主張するなどして攻めてくるでしょう」

 青葉容疑者の体調如何では公判の順延も大いにあり得る。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が言う。

「本件は裁判員裁判のはずですから、裁判員の方の混乱を招かないよう公判前整理手続で争点を明確にする必要があります。(青葉容疑者の)弁護人としては、予想外に火が広がってしまったのか、あるいは誰がやっても同じように火が広がるのかという部分も検証しなければならない。そうした状況を把握した上で戦い方を練る必要があるので、本人の体調以前に準備には時間がかかる。初公判は早くとも半年先ではないでしょうか」

 近大病院で容態が回復した後、病床で青葉容疑者は「どうせ死刑だから」「(延命は)意味がない」と言い捨てた。遺族のためにも法廷で真実を語らせ、相応の罰と向き合わせるべく生かされているのだという“意味”を、はたして理解しているのだろうか。

「週刊新潮」2020年6月11日号 掲載

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