コロナ禍に不要不急の美容整形 28歳女性が33万円で“お直し”した部位は

■日本美容医療協会からの「お願い」


 新型コロナウイルスによる外出自粛期間中、美容整形が注目されているという報道があった。なぜ不急であるはずの美容クリニックに行く人がいたのか。緊急事態宣言中、女性器の整形手術を行ったという渋田さん(28歳・仮名)に話を聞いた――。

 外出自粛期間中、飲食業界やレジャー産業をはじめ様々な事業者が経済的打撃を受ける一方で、美容外科手術に注目が集まっているとの報道があったのをご存じだろうか。日本経済新聞は、5月12日付電子版で「美容整形『多くは不急、今は控えて』」という記事を配信。〈複数の美容関係者が明らかにした〉として、「顔のたるみとり」や「二重整形」などの申し込み件数増を報じているのだ。

 美容外科はしみ取りなど顔を近づけて行うため感染リスクが高い上に、品薄となっているマスクや消毒液、ガーゼなどの医療資源を消費する。不急にもかかわらずコロナ禍に来院する「不謹慎な患者」に警鐘を鳴らすべく、美容分野の公益社団法人である日本美容医療協会は、ホームページで〈美容医療をお受けになろうとお考えの方へ 新型コロナウィルス(COVID-19)感染予防に関する日本美容医療協会からのお願い〉という文書を発表している。そこには、以下の文言がある。

〈現在不要不急の外出を控えるように、政府や都道府県から要請があります。美容医療は不要の医療ではありませんが、多くの方にとって不急の医療と考えます。またマスクや医薬品などの医療資源もそれを切実に必要としている現場に優先して使用していただきたいと考えています。手術後の継続的な治療などの必要な場合を除き、今お考えの美容医療は感染が収束するまでお待ちいただきたいと考えます。〉

■33万円かけて女性器を整形した会社員女性


 それでも、なぜ緊急事態宣言下に美容整形を行う人がいたのか。その理由に、「ダウンタイムを乗り切りやすい」ということが挙げられる。ダウンタイムとは、施術してから肌が元の状態に回復するまでの期間のことだ。施術後は麻酔や手術により腫れやむくみ、アザなどができるため、しばらくは外出や人との面会を制限せざるを得ない。

 新型コロナ感染対策でテレワークやマスク着用が浸透したことによって、ダウンタイム期間中も大きく生活を変えずに済むようになった。美容整形に関心がある人にとって、コロナ禍は絶好のチャンスというわけだ。

 東京都在住の会社員女性、渋田さん(28歳・仮名)も、外出自粛を逆手にとって美容整形に踏み切った一人である。彼女が行ったのは、「婦人科形成」と呼ばれる女性器の整形手術。33万円(税込・モニター価格)を払い、小陰唇の一部を切除した。

 小陰唇とは女性器の部位のひとつで、膣口を両側から保護するように覆うヒダ状の皮膚のことだ。渋田さんが「自分の小陰唇が人と違う」と気付いたのは、小学校1年生の時の水泳の授業の後だった。巻きタオルをつけて着替えをしている友達が、パンツを穿こうと足を上げたとき、股のあいだが垣間見えた。

 渋田さんは、「そのとき友達の女性器を目撃するまでは、自分のものが普通より大きいとは思いもしませんでした」と振り返る。


■コンプレックスのせいで思春期の恋愛にも支障が…


 これをきっかけに、渋田さんは自分の小陰唇にコンプレックスを持ち始めた。

「下半身のコンプレックスのせいでなかなか恋愛に積極的になれませんでした。高校時代に何人かの男子に告白されましたが、いつか『そういう関係』になることを思うと交際する気持ちが失せ、断り続けていました」


■大学時代、「小陰唇縮小手術」の存在を知る


 大学生になると、整形についてネットで調べるようになった。そこで見つけたのが「婦人科形成」の中の「小陰唇縮小手術」だった。まさか小陰唇を整形する手段があることなど、そのときまで思ってもみなかった。

 そうはいっても、婦人科形成にも事実上のダウンタイムがある。前述の通り、通常ダウンタイムは腫れやむくみ、アザなど見た目の問題を指すが、小陰唇縮小の施術後は激しい痛みに襲われ移動が困難になるため、広義のダウンタイムがあると考えていい。

 このコロナ禍で美容整形がブームになっていると聞き、渋田さんにも「整形熱」が高まった。ちょうど転職の合間の有給休暇消化中で、外出自粛により外に遊びに行く予定がなくなった。そこで、緊急事態宣言中の5月9日、「今しかない」とばかりに都内の美容クリニックにカウンセリングに向かった。

「カウンセリングを経て、手術日は5月17日に決まりました。何の根拠もありませんでしたが、その頃にはコロナも収まっているだろうと思っていたので、感染リスクはあまり気にしていませんでした。それに、美容クリニックって、プライバシーを保つために待合室では離れて座るから『密』になりにくいんです。オペ中、医師はマスクや手袋を付けているし。クリニックへの行き帰りの電車も人がほとんどいなかったので、感染リスクはスーパーに買い物に行くのと同じくらいだと思っていました」

 ちなみに渋田さんがカウンセリングを受けた5月9日、東京都の新型コロナ新規感染者は36人。連日のように100人を超えていた4月と比べると落ち着いてきた時期ではあるが……。その5日前に安倍首相から緊急事態宣言延長の発表がされたことを踏まえると、その行動はいかがなものだろうか。


■ハンバーガー店で感じた鋭い痛み


 予定通り17日に行われた施術は、計1時間ほど。まず全身麻酔をかけられ、より痛みを感じなくするために局所麻酔もかけられる。手術は寝ているあいだにあっけなく終わった。

 ところが、その帰り道で渋田さんに猛烈な痛みが襲いかかった。

 病院を出た後、渋田さんはまず一目散に近くのハンバーガー店に向かい食事をとった。というのも、全身麻酔が効いている間にもし吐いてしまった場合、吐瀉物で窒息死する可能性があるので、施術前8時間は何も食べてはいけなかったからだ。手術が無事に終わった安心感の中ハンバーガーをほおばっているときに、ナイフをあてられるような鋭い痛みを感じたという。施術終了から40分ほど経ったタイミングだった。


■「ツーンという痛みがずっと継続するんです」


「最初は『あれ……? 痛い……?』程度の強さだったのが、『あ、これ痛い』に変わってきて冷や汗が出てきました。でも時間が経てば収まるものだと思ったし、あの気さくで優しい担当医に心配かけたくないという気持ちもあって、ハンバーガー店を出て地下鉄の駅から家に帰ろうとしたんです」

 だが、ホームへ向かう長い階段を下りているときに我慢できなくなり、歩くのも立つのも困難になったという。半泣きでクリニックに電話をするも、迎えに来てもらえるわけでもなく、意識が遠のきそうになりながら来た道を引き返した。術後の縫合が甘かったようで、患部に血がたまっており再手術をすることになった。

 その日は処方された痛み止めのロキソニンを飲み早めに寝たが、翌朝目が覚めた瞬間から再び痛みを感じ始めた。

「1回目の手術後に感じた、ナイフをあてられているような痛みが続きました。ツーンという鋭い痛みがずっと継続するんです。立てないほどではないですが、今まで感じたことのない種類の痛みでした。場所が場所なのでしんどかったです。また、患部から血が出るため、1週間ほど生理用ナプキンをつける生活が続きました。清潔を保つために2時間おきに取り替える必要があるのですが、傷口がナプキンとくっついて、ベリっとはがすときとても痛かったです。術後2日は本当に辛かった……。しばらくはまともに歩けませんでしたし、時間が自由に使える外出自粛期間中じゃないとオペは難しかったなと思いました」


■整形で人生を前向きにすることができたと言うが…


 コロナ禍の外出自粛を逆手にとり、33万円の大枚をはたいて性器を整形した渋田さん。長年のコンプレックスを解消して何か見える世界が変わっただろうか。

「他者に対する想像力が高まりました。私の場合は、他人から見えない部分を整形したわけじゃないですか。もしかしたら、人は誰しも見えないコンプレックスを抱えながら生きているんじゃないかなと思うようになりましたね。私は体のコンプレックスのせいで小さい頃から自己肯定感が低かったので、初めて会った人とかが少し様子がおかしかったりすると、『何か辛い過去があったのかな?』と想像できるようになりました。余計なお世話かもしれないですけど。

 それに、この手術をきっかけに、仕事をもっと頑張ろうと前向きな気持ちになれました。これから全身脱毛もしたいし、お尻にある大きなほくろも取りたい。自分で稼いだお金でコンプレックスを解消していくってすごく健全なことだと思いますし、悩んでいた頃の自分が報われるような感覚もあります。幸せな人間って、きっと周囲の人にも幸せを還元できると思う。もっとコンプレックスを解消しながら、周囲の人も自分も大切にしながら生きていきたいです」

 彼女の美を追い求める姿勢自体は至極ポジティブだ。だが、家族や身近な人を感染リスクにさらしてまで行うことだったのだろうか。

 コロナ禍という非常事態に、見えない部分のコンプレックスを解消した渋田さん。見えないウイルスとの闘いはまだまだ続く。

文=万亀すぱえ

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月23日 掲載

関連記事(外部サイト)