検察人事…「林次期検事総長」誕生で、その次は誰か

■ゴーン逃亡で幕を開けた2020年の法務検察


 読売新聞は6月30日の午前の配信で、《【独自】稲田検事総長が退任へ、後任に林検事長…国民の信頼回復が急務》と題し、検察トップの交代を伝えた。年明け時点ではカルロス・ゴーン被告の逃亡で法務検察は上を下への騒ぎとなっていたこともあり、今回の人事は全く想定しない展開となったことは確かだ。今後の検察人事を展望する。

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 読売の記事は、こう続いている。

《検察トップの稲田伸夫・検事総長(63)が7月中に退任する意向であることが関係者への取材で分かった。後任には林真琴・東京高検検事長(62)が就く見通し。検察ナンバー2だった黒川弘務・前東京高検検事長(63)が賭けマージャン問題で5月に辞職しており、林氏にとっては、国民の信頼回復や検察組織の立て直しが急務となる》

「稲田総長が辞めて林さんになるのは当たり前なので、記事そのものには驚きはありませんが、一連の人事をめぐる混乱にひとまず区切りが付いたのかなという感じがします」

 と、司法担当記者。

「どこの省庁もそうだと思いますが、法務検察も早くからトップ候補を定めて、要職を歴任させていく。近年は総長の任期は2年ほどなので、それと定年とを踏まえた人事を進めてきました。黒川さんと林さんとは司法修習35期でエース同士。同期から総長が2人生まれた例(26期の笠間総長→小津総長)が過去にないわけではありませんが、検察にとって相当なピンチの時に限られます。どちらかと言えば林さんが総長候補として先行していましたが、ある時を境に黒川さんがオーバーテイクするんです」

 それは2018年1月に、林氏が名古屋高検検事長に就任した時を指すのだという。

「それ以前の人事についても異変と言うか異例の出来事がありましたが、やはりこの名古屋異動で、黒川さんと林さんとは勝負あったということになったんだと思います。そして翌年1月、黒川さんは検察ナンバー2の東京高検検事長に就任したことで、あとは稲田総長がいつ辞めてバトンを引き継ぐのかということがテーマになっていきました」

 稲田氏が総長に就任したのは2018年7月。2年務めた2020年7月に黒川氏にバトンタッチすれば問題なかったのだが、そこに立ちはだかるのが定年問題だった。

 検察庁法では、検事総長の定年は65歳で、東京高検検事長など高等検察庁の検事長は63歳。東京高検検事長だった黒川氏は20年2月に63歳を迎えるため、稲田氏が総長として2年を務めてしまっては後を襲うことが叶わない。

「もちろん法務検察側は、稲田さんが辞めるタイミングを早めにするように話を進めました。過去の総長人事は基本的に、法務検察の方で固めたうえで官邸に伝え、それが追認されるという流れです。稲田さんも去年の暮れ前には退任して黒川さんに後を譲る決断をして、それを官邸も把握していました。しかし、稲田さんがどう言うわけか、それをひっくり返して“辞めない”となった。定まっていた人事の青写真が突如崩れ、しかも定年が絡んでいるのであまり時間がない。法務省の辻裕教事務次官が官邸と稲田さんとの調整役となりましたが、それがうまくいかなかったんですね、結果として」

■38期の赤レンガ派


 そして黒川氏が63歳を迎える直前の今年1月、政府は従来の法解釈を変更し、その定年を半年間延長した。

 政治部デスクによると、

「官邸が気脈を通ずるとされる黒川さんを、稲田さんの後任に据えようというハラは誰の目にも明らかだと報じられました。それでも政府高官らは意に介さないスタンスでしたね。ただ、それから、検事長ら幹部の定年を内閣の判断で延長できる検察庁法の改正案が国会で審議されるに至り、雲行きが怪しくなりました。世間はその改正は改悪だというわけです。検察の独立性への異議申し立て、黒川さんの定年を延長したのは政府にとって後ろめたいからだといった批判が大きくなった。ワイドショーでも取り上げられる中、《賭けマージャン》報道が出て、万事休すとなったわけです」

 黒川氏が辞職し、一転して非常時となった検察としては、今年7月30日に63歳を迎える林氏を東京高検検事長に据える以外に選択肢はなかった。と同時に、7月中に稲田氏が退任して林氏が総長に就くことも確定的となった。

 では、今後の人事について、先の司法記者に展望してもらうと、

「林さんの後には堺さん(徹・最高検次長検事/司法修習36期)が就くのではと言われています。ただ、堺さんが総長になるかと言うとそれはない。法務省次官の辻さんが一旦、どこかの高検検事長をやって、林さんの後の総長になる見込みです」

「辻さんは司法修習38期で、総長の登竜門とされる法務省の人事課長などを務め、その後は官房長、刑事局長、次官と歴任しています。稲田さんを説得できなかったのは優柔不断だとか、法解釈を変更してまで定年延長することに積極的ではなかったとか、面白みに欠けるが筋は通っているなどといった指摘はあるものの、人当たりはよく、能吏だと思います。法務検察の世界では、特捜に長くいて捜査のことに精通するタイプか法務官僚タイプ(通称・赤レンガ派)かという区別をよくしますが、典型的な赤レンガ派。優秀な特捜検事でも法務官僚の水が馴染まない人は多いが、法務官僚として出世した人なら特捜検事として十分にやっていけるというのはよく聞く話ですから、正真正銘のエースであることは間違いありません」

週刊新潮WEB取材班

2020年7月1日 掲載

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