リニアの開業延期 “過激”化した静岡「川勝知事」の主張

リニアの開業延期 “過激”化した静岡「川勝知事」の主張

“過激”化する知事

 21世紀の“夢の超特急”が是非ものかどうかはともかく、その実現に暗雲が垂れ込めている。2027年に開業予定のリニア中央新幹線は、環境への影響を懸念する川勝平太静岡県知事(71)がJR東海にNOを突き付けたことで、開通が危ぶまれているのだ。その様子はまるであのグレタさん、なんて声まで上がって――。

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 リニアは最終的に東京と大阪を結び、総工費9兆円に達する大事業だ。そのうち3兆円は財政投融資で借り入れる、つまり公的資金を投入する予定となっている。

「いまの東海道新幹線で十分ではないか」という声も聞こえるが、今後、南海トラフ地震が発生すると高架橋の崩落など、交通ひいては日本経済の大動脈たる新幹線は寸断される可能性がある。リニア開業は災害対策という側面もあるのだという。

 工事をストップさせているのは、ルート上わずか11キロしか横切らない静岡県、そのトップの川勝知事である。

「最もネックになっているのは、“水問題”です」

 とは、リニア問題に詳しいジャーナリスト。

「静岡工区の南アルプスを貫通するトンネル工事の影響で、湧水が流れ出て、県内を流れる大井川の水量が減る恐れがあるのです。何も対策をしなければ毎秒2トンの水が流出、生活用水や農業用水に大きく影響する可能性がある。7年前にこの問題が分かってから、川勝知事とJR東海で折衝が行われてきました」

 JR東海は流出した湧水をトンネルの一番低い場所にプールし、川に戻すと提案したのだが、

「工事の一区間で水が戻せないことが発覚。JRサイドは防水シートなどでの対策は行うと説明するも、結果、知事は着工を認めず。この6月中に準備工事に入らないと27年の品川―名古屋間の開業が困難になってしまいます。知事と手を取り合って推進してきたJR東海からすれば、とんだちゃぶ台返しです」(同)

 6月26日にはJR東海の社長と川勝知事のトップ会談が開かれるも、問題解決には至らず。7月3日にJR東海は「2027年の開業は難しいという認識である」と、事実上の延期表明を行っている。

 なぜここまで拗(こじ)れてしまったのだろうか。もしかして、県内に一つも駅が設置されないから?

 その理由について川勝知事をよく知る県政関係者は、

「とにかくあの人は頑固な上、言いたいことをすぐ言ってしまう性格なんです」

 と言ってこう語る。

「6年前に静岡へのサミット誘致をめぐり、静岡市長と揉めて、いまに至るまで犬猿の仲となっています。ある時の会談では川勝さんに“君”と呼ばれた市長が、“君と言うが市長だ”と一触即発に。また、沼津駅付近を高架化する際にはJR貨物の態度が気に入らないといって、交渉を一時放棄したこともあった。プライドが高くて、気に障ることがあるとすぐ高圧的に口に出してしまうんですよ」

 昨年には、知事の政策に反対する自民党県議らを「ヤクザ」「ごろつき」と評し、問題になった。

 さる静岡県議によれば、

「敵を作って怒らせては、自分の土俵に引き込む、知事の常套手段です。ただ、怒るとすぐに顔に出てしまうのですが……」


■水を得た魚


 川勝氏は09年、当時の民主党などに推され、静岡文化芸術大学の職を辞し、初当選する。当初は2期で退任する予定だったと、前出の県政関係者が言う。

「川勝さんは以前から奥さんに“2期でやめてほしい”と言われていました。ところが一転、3期目も出馬することになったのは、当時、民進党に所属していた細野豪志さんが自民党と密かに通じ、出馬しようとしたからでした。川勝さんとの会談場所に記者を勝手に呼んだりするので、怒り心頭、出馬することにしたのです」

 そこへ今回の川の水問題。敵ができた知事はいま、“水を得た魚”となり、“川で恫喝”の真っ最中といったところ。先のジャーナリストはこう分析する。

「環境問題は声高に叫んでも誰も傷つく人がいませんし、強く言えば言うほど支持を得られる。知事はいまや環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんみたいです。大井川の水の大切さについて、自身が好きな地元の日本酒を引き合いに出していて、なかなか無条件で旗をおろすとは思えません」

 さて、川勝知事に真意を尋ねようとしたが、県の知事戦略局職員を通じ「取材を受けない」との由。頑固な性格だけに取材拒否も頑な、というわけだ。代わって静岡県庁の担当者は、

「決してリニア工事に反対しているわけではありません。問題が残っている中で工事を始めることに異議を唱えているのです」

 今後について、JR東海は国土交通省と協議するとしている。

「週刊新潮」2020年7月2日号 掲載

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