地方の風俗はどう変わったか? コロナ前・最中・後とで…現場リポート

■都市部の出稼ぎや休業中のキャバ嬢が地方へ大移動


 地方は都市部とは異なり、コロナ禍でも出張客の減少など多少の影響はあってもそれなりに風俗の需要はあった。そのため出稼ぎ風俗嬢などが殺到したが、4月7日の緊急事態宣言の発令で状況は一変、客足は途絶え供給過剰に。店は目先の利益に狂奔する一方で、梅毒の感染者も続出し、地方の風俗は崩壊寸前とも言われている。4月15日以降、感染者がゼロの秋田県を例に地方風俗の現状を追った。

 ***

 自粛要請が出る前から既に首都圏の歓楽街に人通りはなかった。例えば千葉市の繁華街・栄にいた20代の客引きは、声をかける相手もない路上で退屈そうに立っていた。

「声をかけようにも週末ですら誰も出歩いていません。路上にいるのは同業の客引きと地回りのヤクザくらいなものでした」と、2月の様子を振り返る。連日報道される感染者数や未知のウイルスに対する都市部の住民の恐怖心は高まるばかりだった。

 一方で、地方の感染者数は極めて少なく、歓楽街は比較的活発だった。都内や大阪など都市部のスカウトマンたちは当時、東北や山陰地方などコロナ感染者の少ない土地向けに担当する風俗嬢を売り込むことに忙殺された。出勤制限がかかり生活苦のキャバクラ嬢や突然アルバイト先を失ったフリーターから、TwitterなどのSNSを通じて問い合わせが殺到したという。

 スカウトマンの1人は「いくら地方の風俗が東京と比べ動きがあるといっても、所詮地方の小さな需要です。大した人数は店側も必要ありません。完全な買い手市場で女の子に支払う最低保証(客の有無にかかわらず支払う報酬)なんて交渉もできませんでした」と話す。完全歩合制の風俗業でも待機所の収容人数には限度があり、何人でもという訳にはいかない。男性は、北は青森、南は鹿児島までコロナ感染者の少ない地域へ女性を斡旋したという。

 そうしたスカウトマンの仲介により、地方にはかなりの数の「出稼ぎの風俗嬢」が押し寄せた。その上、コロナの影響で売上が激減して出勤制限をかけられた地元のキャバクラ嬢ら飲食店の女性も風俗勤めを始めたことで、完全に供給過剰となっていた。

 そこに4月、緊急事態宣言が発令。コロナ感染の少ない地方でも警戒感が増し、客は一気に霧散した。兼業の風俗嬢や家庭を持つ風俗嬢はみな休業。当時出勤していたデリヘル嬢によると、店内の待機所には独身のベテランと出稼ぎ組、短期で稼ぐつもりの兼業風俗嬢などしかいなかったという。

 秋田市のデリヘル関係者は、「あの頃は電話がほぼ鳴らず、鳴ってもリピーターが中心。フリー(指名など)のお客さんはほぼいませんでした」と当時の状況を説明する。

 ごくたまに新規の客が電話してくることもあったが、大体が「通常なら即出禁になるような連中ばかり」(前同)だったという。そうした客についたことのある20代のデリヘル嬢が具体例を教えてくれた。

「印象に残っているのは50代くらいで、マスクと競泳用ゴーグルを着けて手術で使うゴム手袋をしているお客さんでした。キスもラップ越しだったのに下はゴムを着けず『お小遣いあげるから』と無理やり押し倒されそうになりました」。

 この女性は断ったそうだが、少ない利用客で生活費を稼がなければいけない風俗嬢の中にはそういった客を受け入れるケースもあったことは想像に難くない。18〜20代前半の若い嬢ばかりが指名されていたのも、ムリな要求に応じる割合が高いと悪質な客側が判断したためだろう。

■取り分はパート代程度だからバイトに…


 若い出稼ぎ組や短期の兼業風俗嬢は、通常なら即座にNGにする痛客(非常に不愉快、非常識な客)であっても仕方なくではあるが、彼らを相手にギリギリ稼ぐことができた。著しく生活が苦しくなったのは人妻や熟女系のベテラン風俗嬢たちである。緊急事態宣言の中、出勤していた40代のデリヘル嬢は当時の状況をこう説明する。

「たまに若い子が泣いて待機室に戻ってくるんです。そういう時に私たちのような指名のない人間が『代わりに行って』と派遣されるんです。いつもならNGどころか店の男性スタッフが注意しに行くのですが、あの時期に風俗へ来る客なんて危ないのしかいません。店側もそれを分かっていながら、客がいないから背に腹は代えられず、何も言わないんですよ」

 本番強要は当たり前。シャワーを浴びようとしない客、盗撮をしようとする客、何らかの薬物を摂取し明らかに目付きのおかしい客……半日近く鳴らない電話を待機所で待ち、若い風俗嬢が逃げ出すような客がようやく相手につく。店と風俗嬢の取り分は4対6で、そこから諸経費を引かれて手取りは1万円を切る。「体を売ってパート代程度です。今はスーパーの売上が伸びているとテレビで見たのでスーパーのパートに応募するつもりです」と、先の40代のデリヘル嬢は力なく笑った。

 5月25日に緊急事態宣言が解除されると、自粛の反動か利用客は一気に戻ってきた。県内では特別定額給付金が支給され始めたことも追い風となり、予約の電話がひっきりなしに鳴っていると業界は嬉しい悲鳴を上げている。しかし、それに冷や水を浴びせるように複数の店舗で梅毒の感染者が出た。

 秋田県の発表する統計によると、年初から6月21日までの梅毒感染者数は27人。21〜28日までの間にも3人の感染者が判明している。全国的に見れば大した数ではないが、秋田県の2018年の梅毒感染者数は16人であり、6月末の時点で約2倍も感染者が増加している。ちなみに、他の性病はほぼ横ばいだ。

 県内のデリヘル業者は「出稼ぎ組と、通常なら出禁になる客に利用させたことで感染が広まったのではないか」と推測する。あるデリヘル店では20代後半と30代の風俗嬢が感染し、店を去った。そのうちの1人は周囲に「明らかに病気を持ってそうな客だったが、次に客が来るか分からずそのまま受け入れてしまった」と話しているという。梅毒の潜伏期間は3〜6週間なので発病から逆算すると、ちょうど緊急事態宣言の解除後だ。

 緊急事態宣言の解除後、県内では特別定額給付金の振り込みが始まり、週末のみならず平日の昼でも若い風俗嬢は予約ですぐさま埋まってしまう状況となった。しかし……。

「飲み屋で酔っぱらった勢いで電話するライトユーザーはそれなりにいたのに、今では酒を飲んでもすぐ家に帰るためそういった層は確かに減りました」と、デリヘル店の店員。電話はひっきりなしでも、指名されるのは20代前半まで。それ以上の年齢だとほぼ客が付かないという。

「これまでも18歳から20代前半が人気でしたが、20代半ば以上の嬢にも客はついていました。主な利用客は中高年ですからね。若い方がいいけれど自分と年齢は幾らか近い方が話しやすいとか落ち着けるとか、そういう理由で指名がありました。しかし、今ではそういった層の需要は激減しています。コロナもあって、より欲望に忠実になったということなんでしょうか。1日に1人客がつけばいい方です」

 若い出稼ぎ組を派遣しようにも、既に皆店を去っている。実際の在籍数とホームページに記載している数とでは大分隔たりがある。需要に対して在籍はその半分ほどで、自粛期間中とは打って変わり、需要の伸びに人員が追い付いていない。そんな状況だから、辞めた風俗嬢などの写真を使い回し、人数だけは揃っているように見せかけている店が少なくない。

「お互いの店から空いている嬢を回してもらって何とかやりくりしています。紹介文にはEカップと書いている嬢の差し替えで、Bカップの嬢を送る程度は日常茶飯事ですよ」

■いわゆる「裏引き」の流行


 そういった需要と供給に著しい偏りがあるとはいえ、せっかく客が戻っているのにどうして信用を落とすような真似をするのか。梅毒感染者の発生を機に店を辞めた女性は、自粛期間中から20歳の“素人”になったり30歳の“人妻”になったりと差し替えで他店の在籍嬢として派遣されていた。実年齢は20代の半ばである。

 店長らは「稼げる時に稼いでおかないと、いつコロナの第2波で店が営業できなくなるか分からない」と言っていたという。店側も緊急事態宣言の影響で売上が激減し、給付金というあぶく銭が入った今こそ損失を補填するチャンスと見ているのだろう。ただ、梅毒の感染者が出たことについてはかん口令を敷き、嬢の差し替えなどを日常的に行う、いわば客を騙すような商売のやり方が長続きするとは思えない。

 店側が目先の金に追われている一方、働く女性たちも違う稼ぎ方を模索し始めたようだ。秋田市内の風俗店をよく利用していた40代の男性は現在、数人の風俗嬢たちと店を介在せず金銭のやり取りをしている。いわゆる裏引きだ。きっかけは緊急事態宣言下に風俗嬢を呼んだ際、客の質が最悪だと愚痴っていたことだという。

「危ない客ばかりで気が滅入るというので、『じゃあ、少し多めに払うから直接会おう』と持ち掛けたら簡単に応じてくれました。コロナ前なら黙殺されたのでしょうが、よほど酷い客が多かったのでしょうね」と話す。

 給付金の一時的なバブルに湧き、急速に信用を落とす店と個人営業を活発化させる嬢たち。そして顕在化した危ない客と危険な性病。そういう場所であり、そういう仕事だとみな頭では分かっていても、ここまで露見してしまった今、地方の風俗というものはコロナ前と同じように続けていけるものだろうか。

畑中雄也(はたなか・ゆうや)
1980年生まれ。出版社、新聞社勤務を経て現在は食品製造業を経営。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月6日 掲載

関連記事(外部サイト)