コロナ「第2波パニック」を煽るワイドショー 感染者急増のウラに10万円の見舞金

【新型コロナ】ワイドショーが第2波到来と報道 市中に広がらず収束中と疑問視も

記事まとめ

  • 東京都内でコロナ感染者が連日100人を超え、ワイドショーが第2波到来と報じている
  • しかし、ホストの感染者急増の裏には10万円の見舞金があったらしく、収束中だという
  • また、玉川徹氏の傲慢さを指摘し、不安をかき立てるテレビの罪を指摘する声もある

コロナ「第2波パニック」を煽るワイドショー 感染者急増のウラに10万円の見舞金

コロナ「第2波パニック」を煽るワイドショー 感染者急増のウラに10万円の見舞金

どんちゃん騒ぎの象徴

 東京都内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日100人超え――。ワイドショーは早くも第2波到来と煽り、不安を抱えた人の足が街から遠のいている。しかし、実態は「夜の街」で検査を広げただけ。市中に広がらないまま収束に向かっているのだが。

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 歴代2位の366万票余りを獲得し、再選を果たした小池百合子都知事(68)は、投開票を翌日に控えた7月4日、「都民のみなさまには不要不急の他県への移動は控えていただきたい」と呼びかけていた。

 たしかに、都内における新型コロナウイルスの新規陽性者数は、7月2日に107人と、5月2日以来の100人超えを記録してから、大台に乗るのが当たり前になっている。緊急事態宣言下で日々繰り返された「他県への移動」云々との呼びかけが復活するのも、致し方ないのだろうか。

 小池知事の呼びかけからは、都民の間に感染が広く拡大しているように受け取れるが、東京都福祉保健局感染症対策課に聞くと、どうも事情が異なる。

「6月30日から7月6日までの1週間に新たに確認された感染者は、計696名で、うち夜の街関係の従業員とお客さんは272人でした。感染経路を追えない人も増えているものの、繁華街での感染者が多いのは事実です。とはいえ、一般のバーや居酒屋などでの感染は少数で、職場クラスターも少ない。一般のバーなどでは静かに飲む方が多く、職場でもあまり大声を出したりはしません。キャバクラやホストクラブは遊び方、すごし方が違うので、感染に差があるのではないかと思います」

 国内最大の繁華街で、多くの感染者を出している歌舞伎町を抱える新宿区の健康政策課にも聞いた。

「現在、陽性者が出ていて濃厚接触者が多いホストクラブなどを対象に、保健師の判断で、ほかの従業員への検査もお願いしています。いままで検査対象にならなかった自覚症状がない層に検査を広げているので、陽性者数は当然増えます。感染を止めるための積極的な取り組みの成果が表れているのだと、理解していただきたいです。また、いまの数字はあくまでも感染者が出た店で検査をした結果で、普通の飲食店も多い歌舞伎町全体で感染が拡大しているのとは違います。キャバクラやホストクラブに感染者が多いのは、狭い場所に大人数で、お酒を回し飲みしたりしているからではないかと思います」

 昨今、悪名高い歌舞伎町だが、感染の広がりは一部にかぎられ、数字の増加も、これまで見逃されてきた感染者が捕捉されているにすぎない、というのである。

 信州大学特任准教授で法学博士の山口真由さんは、

「都民の一人として、感染者100人以上という数字が独り歩きしていることに疑問を感じます」

 と、こう述べる。

「検査数を増やせ、と言ったのはマスメディアでしたが、実際、検査を増やしたら感染者が見つかるようになった。そこで、100人を超えたとワーッと騒ぎ立てるわけですが、それでいいのか、数字先行で冷静な議論ができなくなっていいのか、と思います」

 東京都や新宿区の話からわかるように、彼らはメディアが求める通りに検査を増やしたにすぎない。ところが、そのメディアがバイアスをかけ、悲観的な話に仕立ててはいまいか。


■ホストが感染する理由


 山口さんが続けるには、

「“夜の街”と一括りにされていますが、具体的にどういう場所で、なにが行われているのか、実態が伝えられていません。現状では、たとえば池袋を歩くだけでも危険だ、と感じられてしまうなど、いたずらに私たちを不安にさせています」

 そこで、まずは夜の街の実情を掘り下げたい。日本水商売協会の甲賀香織代表理事が話す。

「新宿にはホストクラブが200〜250くらいあって、従業員に一人でも陽性者が出ると店全体がPCR検査を受ける、ということが進められています。もともとホストクラブやキャバクラは、感染者が出ても隠す傾向にありました。スタッフは自分のせいで店が潰れると考え、症状が出ても言い出せない。そこをなんとかするために、新宿区は感染者が出ても店名を公表せず、休業要請もせず、陽性者1人10万円を給付する、というやり方です。ホストにすれば、それでなんとか検査を受けにいくという感じだと思います」

 ホストの感染者が増えた背景には、10万円の「エサ」があったというのだ。前出の都の担当者は、

「これは新宿区独自の取り組みで、予算も新宿区が組んでやっています」

 と言うので、前出の新宿区の担当者に確認すると、

「10万円の見舞金はまだ原案段階で、近く詳細が決まる予定ですが、申し込みも始まっていません」

 だが、内々にはホストに伝えられているという。PCR検査をなかなか受けさせてもらえない新宿区民にすれば、釈然としない気持ちが残りそうだが、地下に潜りがちなホストを振り向かせるためにはやむを得ない出費だということか。

 ところで夜の街のなかでも、なぜホストクラブで感染が広がるのか。甲賀代表理事が続ける。

「ホストクラブの顧客の中心はキャバクラや性風俗で働く女性。勤務時間がかぶるキャバクラ嬢より性風俗のほうが多く、普段から常に人と濃厚接触している彼女たちは、店でクラスターが起きても通うのをやめません。顧客がコロナ対策をあまり求めないので、経営陣も対策に力を入れようとせず、基本的な対策もできていないホストクラブが多い。いま私たちが店を回って指導していますが、行政が放置してきたツケが回ってきていると思います。またホストは寮生活の人が多く、2段ベッドが置かれた6人部屋で暮らしていたりする。そういう生活も感染拡大の要因になっている可能性があります」

 経済評論家の門倉貴史氏が補って説明する。

「ホストクラブはシャンパンコールなど大声を出すことが多く、3密にもなりやすい。また休業期間の損失を穴埋めするため、前のめりになっている部分もある。顧客のキャバ嬢はお気に入りのホストを一番にしたいからと、一晩に100万円使うことも珍しくありません。一晩に大金を使って大騒ぎするキャバ嬢を、コロナで経営が苦しいいま、感染対策だといって疎かにはできないわけです」

 こうした夜の街を中心とした東京および首都圏の感染状況を、どう判断すべきか。朝のワイドショーの視聴率競争の勝者、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」では7月6日、白鴎大学の岡田晴恵教授が次のように指摘していた。

「先週水曜日(1日)の新宿区の陽性率、ホストクラブ従業員の集団検査を除いた数字で29・2%、前日は30%超えです。東京都は陽性率4・4%ですよね。でも、ここだけは20%超えています。2月、4月でさえ全国平均5・8%。この驚異的な数字をどう考えるか。つまり新宿区の市中感染率が相当高いんですよ。だから、これをやらないとダメなんですよ。そうしないと埼玉、千葉、神奈川をひっくるめて通勤通学圏が問題になりますので」

 だが、この発言には重大な誤りがある。「集団検査を除いた数字」かもしれないが、夜の街を集中的に検査した数字には違いなく、市中に感染が蔓延しているわけではない。それを「市中感染」と言い切って不安を煽るとしたら、罪が重すぎるのではないか。


■4次感染までで止まる


 同じ日の同番組では、コメンテーターで同局の玉川徹氏もまくし立てた。都内の感染者数について、感染経路がわかる人数が赤、感染経路不明者数が青で示されたグラフを見ながら、

「青い部分がどんどん増えていくのかなと思うんです。そうなると全体の赤い数も、200では済まなくなるだろうと思っています」

 と、どんな専門知識に依拠するのか不明ながら、今後は感染者が急増すると予測。さらに「秋冬じゃなくても、第1波レベルのことは起こるんじゃないかと思ってましたんで」と、自身の見識を誇らしげに語ったのち、国内の観光需要を喚起する政府の「Go To キャンペーン」を、こう一刀両断にした。

「この(感染者が増えるという)状況をまったく考えてなかったということでしょ、国は。第2波はどうせ冬なんだから、それまで大丈夫だろうと思ってたんでしょうね。政府はそういう認識だっていう、その辺がもう私の不安をさらにかき立てるんですね」

 いったい源泉がどこにあるのか不明だが、玉川氏の揺るぎない自信は、次の発言からもわかる。

「だれもがこうやってね、一生懸命テレビ見ているわけじゃないんでね。少なくとも僕らはこれ(新型コロナウイルス関連の特集)を毎日やっているわけで、毎日変化を頭のなかに入れているわけで、だからこそ見えてくることがあるんですよ。だけど同じ認識を国民全員が持っているとは、考えない方がいい」

 真実や真相は自身の手元にだけある、という傲慢さが強く鼻につく。こうした言辞が心に刺さった人たちが、無意味な不安をかき立てられ、恐怖におびえることを思うに、テレビの罪は計り知れない。

 ほかの番組も、「すでに第2波の到来」という取り上げ方が目立つが、専門家たちはいまの状況を、どう見るのか。感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師が語る。

「感染者が増えたとしても、医療リソースにどれくらい負担がかかるかという点が重要です。軽症者は入院させないようになって、そこにマンパワーとコストがかからなくなりました。しかも重症者が急増している状況ではないので、医療の逼迫度は低いと思う。新たな感染者は若い人に多いため重症化しにくいのも、医療への負担を軽くしていると思います」

 第2波との関連では、

「いま感染者が増えているのを第2波とは考えておらず、第1波の残り火だと感じています。第2波が来るとしたら冬で、その際の感染者の増え方はこんなものでは済まないと思うし、心筋梗塞などが増える時期で、医療リソースも逼迫しかねない。それに備えることが大事なのに、いまの状況を第2波だと強調すれば、いまの波をコントロールしたときに第2波を抑えたと勘違いしてしまう」

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授も、いまの感染状況を、

「大部分は夜の街で積極的に検査した結果なので、第2波と呼べるほど大きな流行ではありません」

 と断言。さらには感染者数が今後、減少すると読み、その根拠をこう語る。

「夜の街でくすぶっていたものが5月末から6月に広がり、収まってきたところです。私が新宿のホストクラブ経営者に聞き取りをすると、最も感染者が出た時期は終わり、いまは下火だと話していました。新宿でピークアウトしているので、神奈川や埼玉に広がっていた感染も、近日中にピークアウトしていくと予想しています。大阪のクラスター調査では4次感染までしか確認できませんでした。つまりホストから客のキャバクラ嬢や風俗嬢、次にその客、そこからだれかに感染しても、そこで止まる可能性が高いのではないか。それにホストは一人暮らしや寮生活が多く、高齢者にうつす危険性は低い。電車通勤しても車内ではマスクを着用し、大声で話さないので、人にうつすリスクは非常に低いと思います」

 メディアがバイアスをかけることで悲観的な見立てばかりが喧伝されているが、専門家の科学的なデータにもう少し耳を傾けてみてはどうだろうか。

「週刊新潮」2020年7月16日号 掲載

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