郡山のガス爆発事故、報ステ「コロワイド」「レインズ」の名を全く出さない違和感

郡山のガス爆発事故、報ステ「コロワイド」「レインズ」の名を全く出さない違和感

郡山市役所で住民らに謝罪するコロワイドの野尻公平社長(左から3人目)ら

 7月30日朝、福島県郡山市で起こった爆発事故。改装中だった「しゃぶしゃぶ温野菜」が起こしたガス爆発で、1人が死亡、19人が重軽傷を負い、周辺の民家やビルなど少なくとも184棟に被害が及ぶ大惨事となった。それゆえテレビ各局の報道番組はこの事故を大きく扱ったが、中でも「報道ステーション」(テレビ朝日)の報じ方には違和感があった。

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 30日朝9時前、ドーン!という爆発音とともに発した衝撃は、爆発元から300メートルも離れた高校の窓ガラスも打ち破った。爆発元の「しゃぶしゃぶ温野菜」郡山新さくら通り店の運営元は、焼き肉チェーン「牛角」なども展開するレインズインターナショナル。今話題のコロワイドの100%子会社である。

「デイリー新潮」は、コロワイドによる大戸屋買収について複数回にわたって報じてきた。また、「週刊新潮」(7月23日号)が、同社の蔵人金男会長がM資金詐欺に遭い、32億円も騙し取られていたことを報じた記事をご覧になった方もいるだろう。

 報道番組は今回の事故で、これらについて報じることはなかったが、「報ステ」の報道は明らかにおかしかった。その様子を再現してみよう。


■“運営会社”?


富川悠太アナ:今朝、福島県郡山市の飲食店で、大規模な爆発が起こりまして、1人の方が亡くなりました。建物はご覧のように、骨組みだけになっております。実はこちらのお店は、新型コロナの影響で、4月から休業していたんですが、改装工事を行っていたんですね。昨日、つまり爆発する前日には、当初予定になかった工事を行っていたことが分かりました。

――ここで、現場からの映像、ナレーションに切り替わる。

ナレーション:爆発が起きたしゃぶしゃぶ店は、JR郡山駅から3・5キロほど離れた道路沿い。

――〈しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店〉とのテロップが入り、近隣の高校でもガラスが割れ、怯える生徒達の姿、校長のコメントが入る。

ナレーション:店の中から男性1人の遺体が見つかりました。近くにいた19人が怪我をして、うち女性2人は重傷です。これほどの爆発がなぜ起きたのか、“運営会社”によると、「店は新型コロナの影響で、4月から休業。現在改装中で、来月3日から営業を再開する予定だった」と言います。亡くなったのは改装工事の責任者でした。現場に倒れているプロパンのボンベらしきもの。去年撮影された画像には、ボンベが6本立っているのが確認できます。消防によると6本のうち3本からガスが漏れ出ていたそうです。“運営会社”によると、工事はガス関連のものはありませんでしたが、昨日、ガスコンロ近くにコンセントを増設する工事が急遽行われていました。


■最後までコロワイドは出さず


――どういうわけか、コロワイドやレインズなどの会社名は全く出さない。そして映像は夕方に行われた会見に変わる。テロップには〈高島屋商店 新妻勝人社長〉の文字。

新妻:想定されるのはガスが漏れて充満していたとしか考えられないですけれども……。

記者:ガス警報器は付けていたのか?

新妻:もちろん、付けております。

――高島屋商店とは「しゃぶしゃぶ温野菜」郡山新さくら通り店を経営するフランチャイズ(FC)加盟社である。現在、業務上過失致死傷の容疑で検証が進められている。同社に責任は及ぶことはもちろん、そのFC本部である運営会社レインズ、その親会社であるコロワイドも捜査の対象となるはずだ。だからこそ、この会見場には、両社の社長が横浜本社から足を運んでいたのだ。「報ステ」では、コロワイドの野尻公平社長の顔がちらっと映っただけで、映像はスタジオの富川アナに戻った。

富川:“運営会社”によりますと、4月の時点でガス台の調子が悪かったということで、昨日、IH化するためのコンセントを増設する工事を行っているそうなんですね。4月以降の休業期間中も元栓を閉めたまま、ガス台に関しては使っていなかったということです。

 時間にしておよそ5分、コロワイドやレインズの名を出すことなくニュースは終了した。事故の責任は全て高島商店にある、とテレ朝が考えているのならともかく、同日夕方に放送された報道番組「スーパーJチャンネル」では、野尻社長の謝罪シーンをきっちり放送していた。

野尻:この度は甚大な被害を引き起こしてしまいまして、誠に申し訳ございません。被害に遭われた方、皆様に対して、全力で対応させていただきたい。

 テロップには〈郡山市役所 午後5時過ぎ コロワイド 野尻公平社長〉とあり、彼が真摯に謝罪をしているシーンを流していた。だから、なおのこと「報ステ」の報じ方に違和感があったのだ。


■「牛角」のCM


 なんだかおかしいなあ、と思いながら「報ステ」を見ていると、富川アナから「報道ステーション、また明日です」と、おしまいの挨拶。その直後だった。「牛角」のCMである。前述した通り牛角はコロワイドグループであり、レインズが運営している。

 CMがあるので、コロワイドやレインズの名を敢えて出さなかった? “大人の事情”? まさかそんなことはあるまいが、念のため、テレ朝に聞くと、

〈当該事故の報道に当たって、当社が何らかの配慮を行った事実は一切ありません。貴誌のご質問の前提には誤解があり、趣旨にも明確な誤りがあります。間違った報道につながると危惧しております。なお、ご質問事項について真実に反する記事が報じられた場合、当社への名誉毀損などに該当する可能性が高いことを申し添えます〉(テレ朝広報部)

 事実を確認しただけになのに、やけに居丈高な回答である。テレ朝の名物記者・玉川徹氏が官庁からこんな回答を受け取ったら、激怒して『モーニングショー』で放送するのではないだろうか。いったい“誤解”とは何なのか、再度問い合わせると、「スポットCMの定義」なんだとか。ならば誤解のないように、その定義を教えてほしいと頼んでも、教えてくれないのである。

 ちなみに、翌日の「報ステ」で今回の事故を扱うことはなく、牛角のCMは番組後半に流された。メディア文化評論家の碓井広義氏は言う。

「スポットCMは、番組提供のタイムCMとは異なり、番組を指定したCMではありません。だから、牛角CMは『報ステ』には関係ないと言いたいのでしょう。とはいえ、そんなことは視聴者には関係のない話でしょう。その日、報道するニュースに関わる会社のCMが入っているなら、事前にスポンサーに話を付けてCMを差し替えるべきです。それを外せなかったのか、外さなかったのかは分かりませんが、できなかったために歪んだ報道になったのでしょう。しかもテレ朝の看板番組として、非常にお粗末ですね。また、事故当日には番組終了後のステブレ(Station Break)で流すことで、「報ステ」と無関係を装いつつ、翌日には番組時間内のPT(Participating commercial)で流したというのも姑息です」

 これに業界通も同調する。

「CMが入っていたから、ニュースではレインズ、その親会社のコロワイドを出さなかったと考えるのが自然です。会見の司会はコロワイド社員でしたし、なにより『報ステ』が名前を伏せた“運営会社”の発言として説明した箇所は、会見での発言と照らし合わせると、レインズの根本寿一社長の発言と重なるのですから」


■レインズ社長の会見


 具体的には、「報ステ」が“運営会社の発言として扱ったのは、上記の通り3カ所ある。まず、〈“運営会社”によると、「店は新型コロナの影響で、4月から休業。現在改装中で、来月3日から営業を再開する予定だった」〉については、

根本:当該店舗は緊急事態宣言が発令された4月23日以降休業しているお店でございます。このお店は7月21日から7月31日まで、こちらで改装工事を行っておりました。引き渡しが7月31日でございます。再オープンが8月3日を目指して工事をしておりました。

 また、〈“運営会社”によると、工事はガス関連のものはありませんでしたが、昨日、ガスコンロ近くにコンセントを増設する工事が急遽行われていました〉は、

根本:なお、先ほどの工事内容を確認していく中で、コンセントの交換、先程途中で急遽工事が入りましたが、この際の工事内容については基本ガスを使用する工事ではないので……。

 そして、〈“運営会社”によりますと、4月の時点でガス台の調子が悪かったということで、昨日、IH化するためのコンセントを増設する工事を行っているそうなんですね〉は、

根本:7月29日昨日(中略)ここに加えて急遽ガスコンロ近くにコンセントを増設、これが、工事依頼が急遽入りました。これは厨房のガスコンロが使用できない状況を鑑みて、IH、いわゆる電気の熱源で厨房を工事するということを設計して工事がございました。

 いずれもレインズの根本社長の発言である。レインズと高島屋商店、両社の社長をニュースで扱えば済む話である。にもかかわらず、なぜ高島屋商店社長だけの発言だけが実名で使われたのだろうか。

「根本社長は真摯に答えていましたから、会見映像も使ってあげれば良かったと思いますけどね。コロワイドの野尻社長も『全力で対応』すると明言していましたし、レインズは早速“爆発事故被害状況受付窓口”を立ち上げて、対応に取り組んでいます。ちなみに、コロワイドの大戸屋への株式公開買い付け(TOB)は、敵対的TOBとなっており、批判の声も出ています。これ以上、ブランドイメージを損なわないためにも、事故対応はしっかりやろうとしているのでしょう」(前出・業界通)

 被害が甚大だけに賠償も多額になると思われるが、

「大戸屋株を手に入れるため、コロワイドは1株あたり3081円という価格を設定しています。これはTOB発表直前の終値2113円の1・46倍に当たります。コロワイドは3月期連結決算の最終損益で64億円の赤字となっているにもかかわらず、大幅に上乗せした価格、およそ70億円もはたいて大戸屋株を買い取るというわけです。すでに大戸屋株主には、TOBに協力を要請する文書が送られていますから、買収を諦めることはないでしょう。同社は7月28日には90億円の第三者割当増資を発表しました。増資の理由は、あくまで財務基盤の強化のためとしていますが、大戸屋買収のための備えと見る向きは少なくありません。そこへきて、この事故です。期せずして、被害者のための資金の準備は整っています。手厚い補償をしてもらいたいですね」(同)

 テレ朝の広報は、何を勘違いしているのか。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月5日 掲載

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