「痛みゼロ」のマンモグラフィーが実用化 乳がん撲滅への第一歩に

「痛くないマンモグラフィー」が登場 「乳がんほぼ100%見つけられる」と太鼓判

記事まとめ

  • 乳がん検査のX線マンモグラフィーは、乳房を強く挟むため痛みが生じ敬遠する人も
  • マイクロ波マンモグラフィーの開発に成功し、「痛くないマンモグラフィー」が登場
  • これまでの実験で、乳がんをほぼ100%見つけられることが明らかになったという

「痛みゼロ」のマンモグラフィーが実用化 乳がん撲滅への第一歩に

■画期的な「マイクロ波」で乳がん検査


 従来のがん検診では、部位によっては苦痛を伴うため、患者を遠ざける一因にもなってきた。胃や大腸の内視鏡のみならず、乳がん検査のX線マンモグラフィーもまた“痛み”との戦いを強いてきたのだが、それが一転、「痛くないマンモグラフィー」が登場したのだ。

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 乳がんは現在、女性の11人に1人が罹るとされ、一方で早期発見による10年生存率は90%以上となる。

 超音波(乳腺エコー)検査は深い位置にある腫瘍が見つけにくく、厚労省は現在X線マンモグラフィーを推奨しているが、検査で乳房を強く挟むため痛みが生じ、被曝の不安もあって敬遠する人が少なくなかった。さらにアジア人に多くみられる「高濃度乳房」の場合、乳腺もがんもともに白く映ってしまうなど、正確性も決して万全ではない。

 そんな中、神戸大学の研究チームは昨年9月、微弱なマイクロ波を患部に当て、乳がんの立体構造を映し出す検査装置「マイクロ波マンモグラフィー」の開発に、世界で初めて成功したと発表。電波は携帯電話の千分の1以下で被曝の心配もなく、0・5ミリ程度の腫瘍も発見可能だという。

  開発にあたった木村建次郎・神戸大数理・データサイエンスセンター教授が言う。

「X線マンモグラフィーでは、正しく診断するために“タコせんべい”のように乳房を平たくする必要がありますが、あまりの痛さに失神したり、内出血を起こしたりする人もいました。また、精度の落ちる超音波検査も、機械を強く乳房に押し付けるため痛みがある。それらと異なり、マイクロ波は乳房の奥深くまで届き、がんによく跳ね返るという性質があるのです」

 このマイクロ波を検査に使うには、

「がんの箇所を判別するための画像を作り出さなければなりません。そのために応用数学上の『散乱の逆問題』という未解決問題を解かねばならず、我々は10年以上かけ、初めて解析的に解くことに成功したのです」

■ほぼ100%発見


 そこから新技術の誕生へと繋がったといい、

「現在は臨床検査の段階で、すでに400人以上の方の協力を頂いてデータを集めました。これまでの実験で、乳がんをほぼ100%見つけられることが明らかになっています。世界では毎年約50万人の方が乳がんで亡くなっています。今はまだ臨床研究の段階ですが、薬機法承認が得られてこの検査が普及すれば、間違いなくゼロになると思います」

 そう太鼓判を押すのだ。そこで、試みに20代女性記者が臨床研究の被験者として受診することになった。場所は神戸・三宮の「岡本クリニック」。上半身裸のまま仰向けに寝て、片方の腕を肩より上まで、耳につくようにしっかりと伸ばす。同じ側の乳房に、全体を覆うくらいの大きさの半透明のシールが貼られ、ベビーパウダーが塗布される。シールには方眼紙のように細かな線が描かれ、その線に沿って微弱な電波を出すセンサーが動いていく。

 気になる痛みは全くなく、なぞられている感覚しかない。片側が終わると、もう片側も同じように腕を上げてシールが貼られる。両胸あわせて測定時間はおよそ20分程度で、がんは無事、発見されず。

「検査結果は3D画像で、ハイコントラストで出力されるので一目で判別でき、医師の技量で診断の精度が左右されることはありません。またマイクロ波の場合、乳房の形や高濃度乳房も検査の精度に関係ありません。商品用の検査機械は、治験が終わった後、早ければ来年度から販売できる見通しです」(同)

 価格は1台数千万円というが、乳がんが根絶できれば安いものである。

「週刊新潮」2020年8月13・20日号 掲載

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