コロナで戦後最悪の「GDP28%減」 JAL、ANAの悲痛な叫び

コロナで戦後最悪の「GDP28%減」 JAL、ANAの悲痛な叫び

航空会社は風前の灯

■「経済の死滅」


 コロナによる経済的損失は計り知れない。4〜6月期のGDPは、なんと戦後最悪の27・8%減だったのだ。とりわけ厳しい状況にある航空業界では何が起きているのか。

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 実は、経済的損失は「死の病」以上に、私たちの生活を蝕んでおり、4〜6月期のGDPは、戦後最悪の27・8%減だった。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、

「4〜6月期のGDPは前年同月比で13兆円減りました。一方、失業者数は26万人しか増えていませんが、失業者数はGDPに半年遅れて動きます。それを考えると、10〜12月期には前年から100万人以上増えると考えられます」

 と言って、続ける。

「宿泊、観光、飲食など移動や接触を伴うビジネスは、本当に厳しいと思う。インバウンド需要がゼロになって、百貨店なども厳しいです。こうした業界の業績は、コロナへの過度の恐怖心がなくなるまでは、元に戻りにくいでしょう」

 とはいえ日本のGDPの落ち込みは、32・9%減の米国や、59・8%減の英国より小さいが、シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏は言う。

「それは自粛も要請にすぎないなど、規制が緩かったからですが、その分戻りも弱い。V字回復は難しいと思います。前代未聞の落ち込みなのは周囲を見れば明らかで、飲食店なども“休業します”が“閉店します”に変わってきている。知り合いの社長は、“国の政策で銀行や信金が無担保無利子で融資してくれても、元本は返さなければならないが、その自信がない”と言います。東日本大震災のときは復興すればお客が戻ると見込めましたが、いまは終わりが見えず、従業員に退職金を払えるうちに廃業してしまう。日本経済が落ち込むのも当然です」

 そして、続ける。

「経済は大きくいうと需要、供給、金融、財政でできています。リーマンショックの際は金融システムに公的資金を注入すればよかった。東日本大震災の際は工場を再稼働させ、供給を復旧すればよかった。いまはみな感染が怖いため需要も供給も蒸発し金融は緩和カードを切り尽くし、財政も再出動は無理で、経済を刺激する要素がありません」

 新型コロナと経済の死滅とをくらべて、どちらが怖いか議論の余地もあるまい。国際政治学者の三浦瑠麗さんが言う。

「感染流行の影響で、ある分野のものが売れ、ある分野のものは売れなくなった、ということと、本格的な不況の到来とでは、意味合いが異なります。私が懸念するのは、社会や経済を元に戻すのが遅れた結果、出口の見えない本格不況になることです。3密は避けたほうがいいとはいえ、映画館やコンサート会場も、持続不可能なレベルでのお客の入れ方を強いられています。マスクや消毒はきちんと守ってもらって、あとは普通にやってもらう。社会を救う手はそれしかないと思っています」

 そうしなければ、私たちの社会は総崩れになるだろう。


■ANAを襲った不運


 試みに、航空業界を覗いてみたい。

「航空業界は人件費、飛行機の購入やリース費用など、現金支出が多いのに、どこの会社も現金収入が9割減とかなので、お金が回らなくなっています」

 と、航空アナリストの杉浦一機氏が解説する。

「JAL(日本航空)とANA(全日空)は、業界団体を通して国に低金利融資を要請しましたが、中小企業の支援が先だと財務省に断られてしまった。なんとか政府系金融機関にJALが5千億円、ANAが1兆350億円の融資の約束をとりつけたところです。2010年に経営破綻したJALは、まだ財務体質が改善されていますが、ANAは、人件費や飛行機のリース代などの固定費だけで、月に600億円ほどかかるため、かなり厳しい」

 しかも、ANAには不運もあった。

「五輪に照準を合わせて、3年かけて新たに35機購入し、人員を17%増やし、今春には国際線を14路線、新規開設しました。それがすべてあだになり、有利子負債が8428億円に増えてしまった。そのうえ、7月末にも路線の縮小などの発表をする予定でしたが、できていない。状況が日々悪くなっているので、予測が立てられないんです」


■国際線は96%減


 そんななかANAもJALも、お盆の需要に期待をかけていたが、結果は虚しかった。ANAホールディングス広報部に聞くと、

「国内線は5月末に相当落ち込んだあと、6月になると直前の予約が増え、夏休みの予約が入り、右肩上がりになっていました。ところが7月頭からの感染者数の増加を受け、予約が鈍化。お盆の実績は旅客数で対前年比約7割減、国際線に至っては約96%減。4%しかお客さまが搭乗されなかったんです。業績的にもかなり打撃がありました」

 東京都の小池百合子知事が今夏を「特別な夏」と位置づけ、「旅行、帰省をお控えください」と訴えた影響は大きかっただろう。結果、東京は「Go To トラベルキャンペーン」の対象から外され、お盆の行楽ムードは一気にしぼんだ。

 そうした一つひとつが社会の基盤を蝕み、ついには瓦解させかねない。そのことの恐ろしさは、国内の死者が未だ1200人ほどの感染症とは、くらべるべくもないはずだが。

 小池知事の無定見を話題にしたついでに、彼女が率いる東京都の不可思議を、ほかにも指摘したい。

 新型コロナの感染状況の深刻さを判断する際、最も重要なのは重症者数と死者数である。ところが死者の発生後、都がそれを発表するまで、最大43日もかかっているのだ。また、厚労省は重症を「集中治療室(ICU)で治療」「人工呼吸器を使用」「体外式膜型人工肺(エクモ)を使用」のいずれかに当てはまる場合と定義しているのに、都はICUの患者を除外していた。

「重症者をどうカウントするかは大事な問題。重症者という言葉の一人歩きは避ける必要があり、定義を共通させてほしい」

 とは、感染症に詳しい浜松医療センターの矢野邦夫医師の意見である。しかし、東京都福祉保健局に聞くと、

「死亡者は、医療機関が保健所に死亡の連絡をし、その後、都に連絡がありますが、医療機関からの連絡が遅れたりすると、発表が遅れることがあります」

 と、まるで他人事。またICUの患者を除外していることについては、

「ICU在室者が必ずしも重症ではない、人工呼吸管理下の重症者は必ずしもICUにいない、集中治療の基準が病院によって異なる場合がある、などと医療現場から聞いており、引き続き現行の通り、重症者数を発表していきます」

 と答えた。前都知事の舛添要一氏は、不可思議のわけをこう読む。

「仮に都の定義のほうが正しいとしても、データは統一して比較しなければ意味をなしません。東京都は全国と足並みをそろえることを拒否していると言え、要は、小池知事が国とケンカしているというパフォーマンスを見せたいだけでしょう。“国に屈せずに頑張っている”とね。死者数の公表の遅れも根っこは同じで、データの扱いや情報公開がずさんなのです」

 自分さえ支持されれば、後は野となれ山となれ、という小池知事の姿勢の、見事な反映と言えようか。

 話を戻せば、ANAホールディングス広報部の話はこう続く。

「ポイントは国内需要の復活と海外渡航の解禁で、お客さまのマインド次第ですが、マインドはなにかあれば冷え込みます。われわれはPCR検査や検疫体制の強化を期待しつつ、安心してご利用いただけるように準備するしかありません」

「週刊新潮」2020年9月3日号 掲載

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