小池都知事、科学的知見を無視して営業短縮を要請 飲食店からは怨嗟の声

■高齢者への人気取り


 安倍総理は8月28日の会見で、コロナ対策と社会経済活動との両立は可能であるとの新機軸を打ち出し、重症化リスクが高い人に重点を置いた対策に転換することを明らかにした。この転換は科学的な知見に基づいて打ち出されたのだが、小池百合子都知事は未だに飲食店への営業時間短縮の要請を行っているのだ。

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 小池知事が国と張り合い、自分を目立たせることの代償が、途方もない大きさであることは、いまさら言うまでもあるまい。新宿区のバーの店主が嘆く。

「うちは夜8時から深夜3時という営業形態で、2軒目、3軒目の店として使ってもらっていましたが、時短要請を受け、いまは夕方5時から10時までです。売り上げは7、8割減り、資金を取り崩しながら経営していますが、それも尽きつつあり、いつまでもつかという状態です。選挙の投票率が高いのは高齢者ですし、知事は高齢者への人気取りしか考えていないのではないでしょうか」

 あるいは、こちらの声はもっと知事に届きやすいだろうか。新宿区市谷の寿司屋、鮨太鼓の店員が言う。

「野村克也監督に贔屓にしてもらい、小池知事にも何度か顔を出していただきました。2月に野村さんが亡くなり、監督を偲ぶお客さんで3月は賑わいましたが、4月から客足がパタリと止まりました。都の休業要請が出されてからは閉め、6月に再開しましたが、密を避けるために席数を減らしています。そのうえ10時閉店だと、お客さまには8時半にはお入りいただく必要があり、売り上げに影響が出ます。月100万円単位で下がって、対前年比で半分くらいでしょうか。いつまで続けられるか、と不安になることもあります」

■飲食店をスケープゴートに


 小池知事は、こうした飲食店の塗炭の苦しみを、認識できているのか。自らの支持固めのスケープゴートにして、痛みを感じないのだろうか。国際政治学者の三浦瑠麗さんが言う。

「現状、感染予防策をハイレベルで講じている飲食店が多く、お客を十分に入れられる状況にはありません。そういう店に夜間の営業自粛を求める東京都には、飲食店を生き残らせようという意思があるのでしょうか。私が知っている飲食店店主のほとんどは、政府系金融機関からのセイフティネット融資を受けています。だから、お客が5、6カ月入らなくても息だけはできますが、結局は借金がのしかかります。しかも仕入れのコストやリスクは自分で負う必要がありますから、それなら休業したほうがいい、という判断にもなってしまう。多くは年を越えると厳しい状況になり、店を畳むという判断になるでしょう。東京都は、時短営業要請は延長するけれど、こうした状況は知らない、ということでは困ります」

 そして、こう加えた。

「東京都は連日、感染者数しか見ていない状況に思えます。都民の生活や暮らしにどう責任を負うか、という点で、感染者数を抑えることに関心が傾きすぎているように見えます」

 事実、小池知事が自ら感染者数を発表するせいで、重症者や死者に必ずしも結びつかない数字が独り歩きする。パフォーマンス優先の姿勢が、いちいち経済に打撃を与えるのだ。国に喧嘩を売り、Go To キャンペーンの対象から東京都が外れたことも、日本航空(JAL)や全日空(ANA)、JRなどに、どれだけダメージを与えたことか。さるエコノミストが説く。

「JALやANAといった航空インフラを担う会社は、潰れては困るので、政府は公的資金を注入して救済するでしょう。返済の優先順位の低い永久劣後ローンの引き受けを、実施せざるをえなくなると思います。一方、飲食や観光業は、こうした介入を受けられずに倒産していきます。百貨店を閉めさせたために力尽きたレナウンのような大企業の倒産も、今後起こる可能性があります」

 ちなみに、レナウンは一部ブランドが譲渡されるだけで、本体は清算されそうだが、小池知事はレナウンの悲劇に言及さえしない。

 小池知事の犠牲として忘れてはならないのが、安倍総理である。彼女がお盆の旅行も帰省も自粛するように求めたため、別荘にもゴルフにも行けなくなり、ストレスを解消できず、体調のさらなる悪化を招いてしまった。感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「ゴルフや別荘滞在なら感染症予防に注意を払うでしょうし、高齢の家族とも会わないでしょうから、行ってもよかったと思う」

 と言うのだが。


■薬がないのはインフルも同じ


 ところで、冒頭で触れた会見で、安倍総理はこうも語っていた。「軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります」。これは「2類感染症以上の扱い」の見直しと絡んだ話だ。ただちに、インフルエンザと同じ5類相当とするかどうかはともかく、新型コロナは「死の病」ではない、と明言したのも同じである。

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、

「じわじわ下げると自粛が続いてしまうから、インフルエンザと同じ5類まで一気に下げたほうがいい」

 と言い、こう続ける。

「現在、2類相当の新型コロナは指定医療機関でしか診られない、という縛りがありますが、はるかに感染力の強いインフルエンザも診ている一般の病院でも診るべきです。インフルエンザはワクチンでコントロールできている、というのは幻想で、日本人の接種率は3割強で、有効率も6割程度。また薬で治ると思われていますが、39度の熱が出たらタミフルもリレンザも効きません。タミフルは症状がある期間を7日から6・3日にするだけ。全世界のタミフルの75%は、タミフル信仰のある日本で消費されています。治す薬がないのは、新型コロナもインフルエンザも同じです」


■死者は昨年より減少


 話は戻るが、問われるのは、その程度の感染症に大げさな対策を講じる小池都知事の姿勢である。

 加えて、多くの人が不安を煽られている東京都の感染状況について、医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏は、

「検査の伸びほど陽性者が増えていません」

 と指摘する。つまり感染自体も、さほど広がっていないということだろう。一方、森田氏はこうも言う。

「検査数がかなり増え、検査対象も異なるので、いまの感染者数を以前と単純に比較することはできません。経時的に見るなら、重症者数、死者数をくらべるのがいいと思います。すると重症者はこの夏、大阪で増えたものの、いまは波も収まり、東京には重症者の第2波はほとんど来ませんでした。また、8月25日に人口動態統計の速報が発表されましたが、5月に続いて6月も、死者は昨年より少なかった。新型コロナによる死者が一番多かった4〜5月でも、超過死亡は出なかったのです」

 そして、こう説くのだ。

「冬に新型コロナの感染者が再び増える可能性はありますが、それが日本人の健康にとってどれだけ脅威なのか、しっかり評価しておく必要があります。インフルエンザ、肺炎、健康を脅かすものは山ほどあり、肺炎だけで毎年、日本で10万人が亡くなっている。そういう諸々のバランスを考慮して判断しないといけません。いま、これだけ落ち着いていて、超過死亡も出ていないのに規制を緩められないのは、バランスを欠いた判断だと思います」

「週刊新潮」2020年9月10日号 掲載

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