「認知症が進行」「子どもの免疫が育たない」 コロナ対策のさまざまな弊害とは

■孤独の方が健康に悪い


 8月に厚労省が発表した「人口動態統計」によると、今年5月、6月の死者数は昨年より減少している。このことと、政府が新型コロナのピークアウトを認め、対策を方針転換すると発表したことを併せて考えると、我々は必要以上にコロナを恐れる必要はないのではないか。今後、これまでのコロナ対策を科学的知見に基づいて検証する姿勢も求められるだろう。

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 医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏はこう語る。

「緊急事態宣言の発出、経済的自粛、移動制限などに、どんな効果があり、どんなデメリットがあったか、検証されるべきです。日本人は民度が高いから感染が抑えられた、という漠たるイメージのまま、結果オーライで終わらせようという流れを感じますが、それはとても危険です。人の命を守った、という触れ込みになっていますが、経済停滞によって自殺者が増えるかもしれない。それも射程に入れて検証すべきです」

 また、森田氏は別のデメリットも指摘する。

「ソーシャルディスタンスは、社会にとって大変なデメリットがあります。健康に悪影響をおよぼす因子として、酒、たばこ、肥満などが挙げられますが、医学的には、孤独のほうが圧倒的に健康に悪い、というデータが出ていて、特に高齢者にその傾向が強い。しかも、日本の高齢者は海外とくらべても孤立している割合が高く、特に奥さんに先立たれた男性は、1、2カ月、だれとも話さないケースも多いそうです」

 そうした実例を、循環器科、心療内科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏が挙げる。

「最近、私が診ている高齢男性が、認知症が悪化して自宅近くの通いやすい医院に移られました。コロナを恐れて家も出られない、という方が多く、この方がわずか1カ月ほどで悪化してしまったのも、そのせいだと思います。高齢者を守るために若者の生活を犠牲にしてきましたが、いまは守られていたはずの高齢者も弱ってきています」


■子どもたちを襲うストレス


 死者は増えていない、という動かしがたい数字と真っすぐに向き合えば、さまざまな行動制限が無意味であるばかりか、むしろ命の危険につながることに、気づくはずだが。

 加えて、小中高生の感染者数にも、正面から向き合ってほしい。いま学校でどんな問題が起きているのか。その一端を教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が説明する。

「学校に来させているのに、昼休みにおしゃべりするな、友だちと触れ合うな、といった指示を出すなど、小さな子どもに無理を強いてストレスだけ与えるような状況は、いかがなものかと思っています。また、たとえば中学受験とのからみでこの問題を見ると、夏休みが短くなったことの影響が出ています。学校の遅れを取り戻すための授業と塾の授業が被ることも多く、中学受験生が内容はわかりきっている学校の勉強につき合わされた挙句、私語厳禁と言われるのは、やはりストレスです」

 子どもたちが、数々のストレスにさらされているというのだ。ちなみに都立学校の場合、〈12月までに実施予定の、児童・生徒等が学年を超えて一堂に集まって行う活動(文化祭、体育祭等)、宿泊を伴う行事や校外での活動は、延期又は中止とする〉と定められている。全国どこも似たような状況で、行事ができないのも、子どもにはストレスだろう。それはかけがえのない機会の欠損でもあり、子どもの成長には痛恨のダメージに違いない。

 子どもたちに重症化リスクがあるならともかく、重症者はゼロである。しかも、家庭内感染が655人で全体の56%、小学生では75%を占め、一方で、学校内感染は15%、小学生にかぎれば2%にすぎなかった。

 たとえば、名古屋市の小中高では、夏休み明けに新型コロナが不安で欠席した児童や生徒が、のべ2195人に達した。不安であるならなおさら、家にいるよりも学校に通ったほうが、安全なはずなのだが。


■子どもの免疫が育たない


 国立病院機構仙台医療センターのウイルスセンター長、西村秀一氏が言う。

「子どもには感染が広がっておらず、重症化しないこともわかっているのだから、それを踏まえて対策を講じるべきなのに、決まりごとのように休校し、行事を中止にし、子どもの機会を奪っています。大人の感染者の濃厚接触者になり、PCR検査で陽性だった子が通う学校を何日も休校にするなど、かわいそうすぎます。屋外の感染リスクはかなり低いので、運動会はやっていいし、屋内でも、ウイルスは体外に出ればジワジワと死んでいくので、接触感染のリスクは低い。感染している子が目の前で咳をしたのを吸い込めばリスクがあるから、マスクはするとして、それなら飛沫が飛ぶのは周囲1メートルに満たない。教室は広いので換気をしていれば、リスクはほとんどないと思います」

 さらに西村氏は、こんな懸念も口にする。

「ウイルスは流水で十分洗い流せると思います。子どもが毎回、石鹸で30秒も手洗いをしていたら、強迫神経症につながって、病的に神経質な子どもが増えないかと心配です」

 重症化しない新型コロナへの感染より、強迫神経症を患うほうがよほど怖くないか。また、感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師はこんな懸念を抱く。

「今年は厳しい新型コロナ対策のおかげで、例年は7、8月に子どもがかかる、小さな水膨れを伴う発疹のヘルパンギーナや手足口病が、まったく流行りませんでした。こんなことは初めてで、子どもたちはかかるべき感染症にかかっていない。抵抗力がある子どものうちに、ある程度感染して免疫を作ることができず、3、4年後、いろんな感染症にやられはしないか心配です」

 そして森田氏も、

「赤ちゃんも熱を出しながら、こういうウイルスにはこういう抗体、というように免疫を作っていて、新型コロナもその一つ。だから死亡者がいないのだと思いますが、それらを一つひとつ“恐怖のウイルスだ”と怖れ、排除したら、二つのデメリットが生じます」

 と指摘し、続ける。

「いまのように手洗いや消毒を徹底し、無菌状態でないとダメだという風潮だと、子どもの免疫力が育たなくなる恐れがあります」

 矢野氏と同じ意見だ。

■同調圧力


 もう一つのデメリットは、

「大人の同調圧力、コロナファシズムとも言うべき空気を子どもたちに見せるのは、教育上よくない。日ごろ“個性が大事だ”と言われている子どもたちですが、“全員手洗いしなきゃいけないんでしょ”“手洗いせず新型コロナに感染したら村八分なんでしょ”と、世間の空気を敏感に察知します。子どもには、社会では自分の判断よりも同調圧力のほうが大事だ、というメッセージとして伝わってしまっていると思います」

 感染した子どもへのいじめの頻発も、同調圧力を学んだ結果だろう。再開すべきは大人のための行事も同様で、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。

「野球場にも観客を5万人入れて問題ないと思います。新型コロナウイルスは基本、そばにいる人にしか感染しないので、何万人集まろうと、感染者の周りの数人が感染リスクにさらされるだけで、リスクが全体に広がるわけではない。みんなで肩を組んだり抱き合ったりしなければ大丈夫です。東京オリンピックもできると思う。すでに多くの国で下火になっていますし、入国の際にしっかり検疫すれば、多少の流入があっても、自然と収まると思います」

 IOCのコーツ副会長も7日、「東京五輪は新型コロナに関係なく開催される」と明言した。もっとも国内の世論調査では、開催を望む人は4人に1人。過度に恐怖心を膨らませた人たちの同調圧力もあり、学校もイベントも、なかなか元に戻らない。


■スウェーデン在住、サッカー選手の声


 一方、軒並み都市封鎖をした欧州諸国のなかで、ゆるい規制による集団免疫戦略をとったスウェーデンは、怖がる人が日本より多くてもよさそうだが、

「日常生活で“コロナ怖いね”とか“いやだね”と騒ぐ人は、見たことがありません。政府の公衆衛生庁がいまも週2回会見して情報を、冷静に忖度なく発信し、国民はそれを信じて実行しています。国がウイルスを科学的に評価し、適切に対応してくれている、という信頼感があるのです」

 と話すのはスウェーデン在住のサッカー選手、安岡拓斗氏である。ちなみにかの国も野放しではない。

「サッカーリーグも6月の再開時は無観客で、8月27日からようやく500人以下まで観客を入れています。レストランの営業時間は戻っていますが、席と席は離されています。ただ、この夏、近所のビーチは去年並みに人が大勢いました」

 政府がなにかを発信するたびに、国民が疑心暗鬼になる日本との違いは大きいようだ。日本はどこでボタンをかけ違えたのか。東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の、唐木英明氏に総括してもらう。

「毎年冬の3カ月で約1千万人が感染するインフルエンザとくらべ、新型コロナの感染者は約7万2千人と100分の1未満。死亡者数も、インフルエンザは毎年約3千人、関連死を含めると約1万人ですが、新型コロナで亡くなったのは現在約1300人で、ほとんどは基礎疾患が悪化して亡くなった関連死です。感染力と死亡者数で比較し、新型コロナはインフルエンザより恐ろしい感染症とは、言えないと思います。実は、2月13日に東京都医師会が発表した資料には、すでにインフルエンザと大して変わらないと書かれていたのです」

 では、なぜそれが、結核などと同じ指定感染症2類相当とされたのか。

「真偽ないまぜの情報氾濫のせいで、みなさんが怖れていたし、今後の展開がわからなかったこともあったからでしょう。ただ最初は仕方なくても、なるべく早くインフルエンザと同じ5類相当に下げるべきでした。それができなかった背景には、専門家会議の存在があったと思います。彼らは感染を防ぐことだけを目指し、国民を誤解させてしまった。そんなことをしたら大変なことになる、と意見するリスク管理の専門家を、政府が起用すべきでした」

 そういう専門家がいないところに、メディアの姿勢が影響を及ぼしたわけだ。

「ニュースが毎日、今日の感染者数という煽り方をしたせいで、一般の人に恐怖心が染みついた。それを取り除くには、しっかりしたリスクコミュニケーションが必要です。また、この騒動で得をしているのが都道府県知事。一生懸命対策していますと、ここぞとばかりにアピールしてポイントを稼いでいる。メディアも知事も大局観をもって、世の中をよくするために、考えて行動してほしい。そうしなければ、一般の人の考え方は変わりません」

 政府の逆張りを身上として「特別な夏」を演出、「緊急事態宣言には効果がなかった」という科学的な知見は一切無視し、飲食店などに夜10時までの時短営業を続けさせる東京都の小池知事は、こうした知事の典型であろう。唐木氏は、

「新型コロナがインフルより恐ろしい理由として、治療薬とワクチンがないことが挙げられますが、議論が逆です。治療薬とワクチンがあっても年間1万人が亡くなるインフルと、どちらもないのに死者が少ない新型コロナと、どちらが恐ろしいか考えてほしい」

 と語るが、真っ先に考えてほしいのは、要らぬ対策で経済に穴を開け続けている小池知事らである。万一、すでに考えたうえで自己アピールのために行っていたなら、その罪は重すぎる。

「週刊新潮」2020年9月17日号 掲載

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