「松坂慶子」をしのぐ美貌で「朝鮮総連大幹部」に愛された美人詐欺師とロールスロイス

■金日成国家主席ともパイプがあった総連の裏金庫番から3600億円を引き出す


 テレビドラマ『細うで繁盛記』は、こんなナレーションで始まる。銭の花の色は清らかに白い。だが蕾(つぼみ)は血がにじんだように赤く、その香りは汗のにおいがする――。岩合(いわごう)直美(69)が、日本一の美人詐欺師として目覚め、銭の花を咲かせたのは、朝鮮総連大幹部に愛された、その時からだった。(以下は「週刊新潮」2015年8月6日号掲載記事を再編集したものです)

 岩合は1950年12月、高知県に生まれた。地元の私立高校を卒業後、姉が大阪の高島屋で働いていたのを頼って同じデパートに入り込んだ。

ここで、さる納入業者の社長と知り合い、愛人になる。当時を知るジャーナリストによると、

「社長はある人から10億円を借りていたのですが、その返済が滞ってしまった。で、連帯保証人だった直美と彼女の会社がこれを背負うことになった。1985年ごろのことです」

 その貸主こそが、先に触れた朝鮮総連大幹部こと、具次龍氏(故人)である。彼はそのころ、金融会社「龍伸興業」の会長で、朝鮮総連全国商工会の副会長や朝銀東京信組の副会長を務めていた。

「総連の裏金庫番とも言われた男で、毎年、北への送金を欠かさず、規模は5億円を下らなかった。だから、金日成国家主席ともパイプがあったのです」(公安関係者)

 程なく直美は具会長の愛人となった。彼は彼女を溺愛した。それこそ、目の中に入れても痛くないという具合に。その愛情に乗じた彼女は、自身の会社と島屋との架空取引を餌に、会長からカネを引き出し始める。

「それは、彼女の会社があたかも高島屋の大口取引先であるかのように見せかけたものです。直美は、“私が納品会社と島屋の間に入ることで10%のマージンが得られる”と具氏に説明。商品の購入代金として金を引き出していた。その総額は3600億円にものぼったのです」(社会部デスク)


■架空伝票操作がバレるのを怖れ、監禁を画策


 岩合は、吸い上げたカネを使って、不動産や株に手を出す。5億円の千代田区のマンション、10億円の品川区の土地に加えて、時価で90億円を超える株(ユニチカ145万株、川崎製鉄109万株、住友金属59万株など)……これらはみな、具会長には内緒で手に入れたものである。

 しかしながら、返済予定だったカネを用意できず、架空伝票操作がバレるのを怖れた直美は89年暮れ、会長の監禁を画策。これはともすると、会長を亡き者にしようという考えあってのことだった。

 果たして、計画は不首尾に終わった。翌年、営利略取・監禁容疑などで逮捕・起訴されるも、執行猶予付きの判決が下る。

 その後、会長から詐欺罪で警視庁に告訴されたが、愛人関係にあったことが幸いし、嫌疑不十分で不起訴処分となったのだ。

 直美が会長から湯水のようにカネを引き出していたころのことである。

 ダイヤモンドをちりばめた1000万円クラスの腕時計をはめ、ロールスロイスの後部座席にふんぞり返り、居住地は千代田区六番町の超高級マンション。日本橋にあった自社ビルの社長室は、総大理石造りだった。

「松坂慶子をしのぐ美貌と評判でした。“デキるいい女”を演じた岩合を、バブル紳士は放っておかなかった」

 と、先のジャーナリストが次のように解説する。


■カリブ海に沈んだ金塊をロシアの船が吊り上げようとしているから…


「彼女が活躍したバブル時代、不動産や金融関係の人間には表に出せないカネが結構あった。彼女はそれを狙い、“運用を任せて”と訪ねて回ったのです。怪しいカネの使い道が出来るのだから、そりゃ協力したくなったでしょう。ただ岩合としては、焦げ付いてもカネの性質上、彼らは泣き寝入りするだろうと踏んでいたのです」

 バブルが繚乱の花を咲かせ、カネがダブつき、行き場所を失った結果、岩合の周辺に蝟集(いしゅう)していたのである。もっとも、バブル崩壊と共に勢いを失った彼女は、その後どうしていたのか。

「白金の『都ホテル』で……」

 と、彼女の知人が苦笑交じりにこぼす。

「11年前に会ったんですが、かつての彼女とはずいぶん違っていて、色気らしきものはすっかりなくなっていました。話は金持ちを紹介してくれという類のものばかり」

 それは大要以下の通りである。

カリブ海に沈んだ金塊をロシアの船が吊り上げようとしているから、誰か出資してくれ。知り合いの病院長がカネに困って大きなダイヤを売りたがっているので買ってくれ――。

「ダイヤについては写真と保証書しか見せず、実物を持ってこないんだ」(同)

 なるほど、汗のにおいではなく胡散臭さだけを漂わせていたわけだ。直美は9年前まで、関東圏の大都市で借家住まいをしていたが、近所の住人によると、

「季節に関係なく黒い服装で、“なんだか魔女みたい”って家族で話し合った記憶がある。トボトボ歩いているのをよく見かけましたよ。え、松坂慶子? とんでもない。一緒に暮らしていたお父さんの実家へ帰る、そう挨拶に見えたのが最後です」

 ロールスロイスから徒歩へ。銭の花は散り果て、蕾がつくこともないようなのだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月21日 掲載

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