「ともだちとあそぶとおこられます」子どもの悲痛な声 コロナ過剰対策で不眠症も増加

 菅義偉政権が発足後、なにを措いても真っ先に取り組むべきは、8月28日の会見で安倍晋三総理が辞意とともに、以下のように表明したことの具体化だろう。

〈新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します〉

 実際、新型コロナは、1月28日に閣議決定された政令で、感染症法の「2類感染症相当」とされた。さらに2月13日には、エボラ出血熱やペストなどの1類感染症ではじめて可能な「無症状者への適用」がつけ加えられ、さらには1類感染症でさえも認められていない「外出自粛要請」なども行えることになった。そして「2類感染症以上」と定められたが、現実には「1類感染症以上」の対策を講じているのだ。

 だが、新型コロナが上に挙げられた感染症と同等に扱われるべきものでないことは、明らかである。

 「週刊新潮」9月17日号でも報じたが、厚生労働省発表の人口動態統計によれば、今年5月の全国の死亡者数は昨年同月より3878人少なく、6月も対昨年比で1931人減っている。少子高齢化が進み、死亡者は増えて当然というなか、感染のピーク時にも、むしろ死亡者数が減っていたのは、新型コロナは多くの人が命を奪われるような病気ではないことの証左というほかない。

「新型コロナウイルスに対する意識のあり方を、社会全体として変えていく必要があり、そのためには法律上の位置づけを変えなければなりません」

 と、東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏が訴える。

「社会全体として、新型コロナへの意識が負のスパイラルに陥っています。武漢での映像を見て多くの人が怖いと感じたあと、日本にも感染者が出て指定感染症2類相当にされ、怖い感染症ということになってしまった。そこにダイヤモンド・プリンセス号の問題が起き、追い打ちをかけるように五輪が延期になり、志村けんさんが亡くなり、感染防止に小池都知事の力が入って、みなさん、ますます恐怖を募らせ、そのなかで新型コロナの実態が忘れ去られてしまいました」

 また、「2類以上」とされたことで、「非常に強い制約を社会的に課す権限が、都道府県知事に与えられてしまった」(唐木氏)ために、経済的リスクや医療崩壊のリスクが生じてしまったわけだが、同時に看過できないのが、子どもたちへのリスクである。

 ちなみに、文部科学省の集計によれば、6月から8月の3カ月間に、全国で新型コロナに感染した小中高生は1166人で、そのうち半数以上が無症状で、重症者はゼロだという。

 要は、子どもは感染率が低いうえに重症化しないのだ。そのうえ日本小児科学会によれば、子どもの感染経路の8割は家庭内で、学校や幼稚園、保育所を通して感染したケースは、1割程度だという。いわば学校は、シェルターのように感染しにくい場のはずだが、現実には学校側も保護者も、子どもが学校で感染しないように神経を尖らせ、その影響が子どもに及んでいる。

 唐木氏が続ける。

「新型コロナが2類以上の扱いであるかぎり、学校現場でも軽々しく扱うわけにはいきません。事実、感染者が出たら学校は非難されます。やはり学校の評判は、子どもたちを守るためにも守る必要があるので、リスク管理の観点から、学校の過剰反応もやむをえないと思います。そういう事態を踏まえても、早く季節性インフルエンザと同じ、指定感染症5類相当にしないといけません」

 都内の私立高校の教諭も、こう語る。

「感染者が出たら、指定感染症2類以上の扱いですから、学校名が明かされ、外部の声が高まって、学校がかき乱されてしまうでしょう。気をつけていても感染するときには感染すると思いますが、学校の場合、それが許されません」


■「学校に行きたくない」


 そんな環境下、学校でいまなにが起きているのか。横浜市の中学校教員は、

「一人でも感染者が出たら学校全体を休校にせざるをえず、保護者からは“感染症対策をしっかりしていなかったからだ”と非難される。学校の管理職はそれを気にしています。ですから、運動会や合唱コンクールのような大きな行事はすべて中止。授業は遅れているので勉強はそれなりに大変で、それなのに楽しい行事はことごとくなくなり、生徒にとって学校へ来る張り合いがなくなっています。部活も時間が短縮されたり、接触するような練習は避けたりしていますからね」

 と語ったうえで、こんな例も挙げる。

「生徒会の選挙があるんですが、投票用紙の回収が問題になりまして。投票用紙から感染したら困りますが、紙は消毒できず、どうすればいいかと。結局、選挙管理委員会の生徒がゴム手袋をするということで、校長の許可が下りましたが、こういうことは、かえって子どもたちの不安をかき立ててしまうと思うんです」

 新型コロナ禍の学校へ聞き取り調査を続ける、桃山学院教育大学人間教育学部の松久眞実教授の話からは、子どもたちが置かれた現場の状況が、生々しく伝わる。

「近畿圏の小中学校に聞き取りをしていて、私の体感では、不登校の子が1・5倍くらいに増えている感じです。コロナが怖いという敏感な子もいるし、仕事がリモートになった家族が家にいるのに、“なんで自分は学校に行かなきゃいけないの”という子もいる。もともと繊細な子は、休校期間中に新学年を迎え、先生や友だちが替わると、“人と会うのが怖い”ということもあるそうです」

 不登校の増加について、新潟大学医学部小児科の齋藤昭彦教授に、補って説明してもらうと、

「私の外来でも見られるようになってきたのは、休校や分散登校などで学校に行かない期間が増えたことによる体調不良です。学校に行きたくないという下地をもつ子どもは、コロナ禍で学校がさまざまに変化したことに、行かなくていい理由を見つけてしまったんです。子どもなりに漠然とした不安も強くもっていると思う。結果、頭が痛い、調子が悪いと訴える子が増えているという印象です」

 傍証も得られたところで、松久教授の話に戻ると、

「大人から神経質に指導されるストレスは大きいと思います。たとえば、マスクをあごに下ろしている子がいると、それを見た子が家で“○○はマスクをしていない”と伝える。すると保護者から学校に、指導してほしいと連絡がきたりします。夏休み明けに詩の授業をした先生が言うには、手を洗わないで叱られた、など例年より暗い内容の詩を書く子が多く、ウイルスや死を連想する言葉を使う子も多かったそうです」

 子どもたちの間で分断も起きているようだ。

「いまは1日1回しか外で遊べないので、廊下や教室の後ろでくっついて遊んでいると、それを見て“来ないでほしい”と思う子と気にしない子との間で、ぎくしゃくしてしまう。以前と同様にふざけている子に対し、嫌な気持ちになる子がいるのです。外で遊べず行事もなく、一致団結という経験もできないことが、校内でのトラブル増加につながっていると思います」

 むろん、分断は学力の面でも起きており、

「以前は早くできた子が、ほかの子の学習を助けることもできましたが、いまは子ども同士が近づいたらいけないので、それもできない。低学力の子はどんどん置いてけぼりです。パソコンやタブレットも、勉強に意欲的な子にはいいですが、そうでない子は親のサポートがないかぎり、端末でゲームをしてしまう。その点でも、学力差がかなり開いてしまったようです」

■衝撃のアンケート自由記述


 保護者も悩んでいる。小1の女児を持つ母親は、

「うちの子の学校は半日だけ運動会をやりますが、応援団はフェースガードをつけるとかちょっと異常。給食の時間も話すのは禁止で、前を向いて黙々と無言で食べるのも、気持ち悪い」

 と不快感を示し、小2の男子の父親が、

「運動会のリレーを楽しみにしていたのに、中止になって落ち込んでいます」

 と嘆く。こうした状況下で、子どもたち一人ひとりがどうストレスを溜めているのか、「コロナ×こどもアンケート」によって明らかにしたのが、国立成育医療研究センターの半谷まゆみ研究員である。

 第1回は4月末〜5月末に、主に緊急事態宣言下での子どもたちの気持ちを調べたという。6月中旬から7月末に行った第2回では、誤った知識や考えをもとに、他者への偏見や差別的感情をもってしまう「スティグマ」がどのくらいあるかも聞き出している。結果、感染した子が治っても「あまり一緒に遊びたくない」と回答した子どもが、22%に及んだという。

「ストレスを抱えている子は1回目が75%、2回目が72%で、子どもたちのストレス反応は依然多くみられたのが、最大の発見でした。親と子の関わりについては、家で怒鳴られたり、叩かれたりという割合が、2回目ではさらに高く出て、子どもたちが学校のほか、家庭でもストレスにさらされていることがわかりました」

 また、2回目の自由記述の項目では、

「胸が詰まるような声が寄せられました。小学校低学年からは“せんせいがこわいです。ともだちとあそぶとおこられます”“きゅうしょくを、もっとたのしくたべたいです”“外に出たときに、知らない人とすれちがうだけでこわくなる”“かぞくがコロナで死なないか心配。学校に行きたくない”。高学年から中高生に多かったのは、行事や部活動など大事にしていたものをすべて奪われ、遅れを取り戻すための勉強だけ押しつけられているのが嫌だ、というものです。“飲み屋さんとかで大人たちが騒いでいるのを見ると、私たちが普段学校とかでしている対策は何なんだろうなと思う”という中学女児の意見も、まさにそうですし、私には中学男児の“子どもも学校のコロナ対策に参加したい。決められたことしかしないのはおかしい”という意見が、胸に響きました。ただ従いなさい、というのでは、子どもは余計にストレスを溜めてしまう」

 そして、半谷研究員は懸念して続ける。

「このままの状況が続くと、子どもの心はどんどん不健康になっていきます。2回目の結果では、“死にたくなる”という声や、自分や他人を傷つけてしまうという、重度な症状が出ている子どもも見られました」

 大人が恐怖を煽ったまま、取り除かないために、子どもたちはまさに壊れようとしているようだ。臨床心理士でスクールカウンセラーも務める明星大学の藤井靖准教授が語る。

「コロナの影響による子どものうつは、この秋から冬にかけて増えると思います。ソーシャルディスタンスやマスク、行事中止の影響が大きく、特に人の印象は55%が、視覚的な情報によって決まるというのに、マスクをすると顔の半分以上が隠れる。先生は子どもの変化に気づきにくくなり、いじめや問題を抱える子どもがスルーされる危険性が高まります。マスクは子どもたちの心理的距離にも影響します。今年は子どもが集団に溶け込む4月が休校で、学校が再開してもマスクのせいで同級生や先生の顔が見えない状況が続いている。このためクラスに馴染めない子が、通常30人に2、3人程度だとすると、今年は10人程度いるクラスもある。また、不眠症も気になります。通常は子どもの不眠症は少ないのですが、今年は例年にくらべて4、5倍に増えています」


■「感染者数」の呪縛を解け


 医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏は、

「子どもの1年と大人の1年とでは、意味が全然違い、小学1年生の1年間は、大人の5年、10年に匹敵するというくらい、子どもの過ごす時間は中身が濃い」

 と言って、続ける。

「子どもたちは喧嘩したり仲直りしたりしながら、人との距離のとり方を学びます。犬やライオンの子も甘噛みしたりしながら、たがいの距離感をつかみ、彼らの社会での団体行動や集団生活を学びますが、人間も同じです。そういう点で、無理にソーシャルディスタンスをとるとか、行事ができないとか、学校の日常を取り戻せないのは、本当に失うものが大きい」

 精神科医の和田秀樹氏も、

「子どもは喜びを感じたり、ほめてもらったり、という快体験を通じて、心理的な発達が促されます。行事を通じ、これまでやってきたことを披露し、周囲の反応も含めての達成感を得ることで、健全な発達につながります。その意味で、いまのコロナ対策は危険かもしれません。それに一番の問題は、ほとんど感染者が出ていない県もふくめ、全国で同じ対策になっていることです。対策によってどう影響に違いが出るか、比較対象もないので、仮に悪い影響が出ても、気づくのが遅れてしまいます」

 と語り、こう加えた。

「新型コロナの怖さを判断するうえで、重症者数や死亡者数が大事なのに、感染者数ばかり気にするのも問題です」

 事実、日々メディアが伝える100人、200人という感染者数が、そのまま死亡者予備軍の数であるかのように錯覚しているため、子どもの重症者はゼロという事実を前にしても、過剰な対策を解こうとしないのだろう。森田氏が言う。

「感染者数をカウントすることが当たり前のような空気です。未知のウイルスで、重症者も死者も多数出かねないといわれた3、4月は、すべて数えてもよかったかもしれません。しかし、風邪でもインフルエンザでも、すべての感染者を数えたことなどないのです。感染者が増えても死者数が増えないという現象は、日本のみならず多くの国で見られます。過去の経験やデータに学び、感染者数に振り回されないように、ギアを変えていく必要があります」

 だが、それもこれも、冒頭で記したように「2類感染症以上」という扱いのままだから、なのだ。日本総合研究所のチーフエコノミスト、枩村(まつむら)秀樹氏が言う。

「2類以上という扱いは過剰対応で、マイナスが大きすぎる。2類以上の扱いをするウイルスでないのは明らかなのに、過剰な対策によって経済に甚大な損失が出ているほか、子どもの教育や健康など、幅広い方面に大きなマイナスが及んでいます。教育では社会と接してはいけないという風潮が、日本の10年、20年後の大きなマイナスにつながるでしょう。経済面ではGDP成長率が、2020年度はマイナス6%と予想され、そのうち半分は消費の喪失が原因なので、ほとんど人災です。当初はともかく、さほど怖れるべきウイルスでないとわかったのに自粛を続けるのは、自らの首を絞めているようなもの。結果的に失業者、自殺者の増加につながります」

 現に、8月の自殺者は全国で1849人と、前年同月にくらべ240人以上も増えた、と発表されたが、

「経済的理由による自殺者が増えるときは、一般に男性が中心ですが、今回は女性が多い。そこがわからないのですが、まだ3%を切っている失業率は4%を超え、これから40〜60代の男性の自殺者が増え、年間で2千人増えると予想しています」

 とのこと。そして、こう締めるのだ。

「いつまでも2類以上の扱いをしていては、“恐怖のウイルス”という国民の認識を変えられません。指定感染症を解除するしか方法はないと思います」

 失業率と自殺者の増加に関しては、日本経済の心臓たる首都東京で無駄な自粛を延々と続けさせるあの人の罪が重すぎよう。新型コロナを「死の病」と誤解する層に自己アピールする小池百合子都知事。まさに万死に値するが、知事の暴走を防ぐためにも、子どもたちを、ひいては日本を救うためにも、菅新総理が新型コロナの扱いを一刻も早く、2類以上から5類相当に下げることを強く望む。

「週刊新潮」2020年9月24日号 掲載

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