これから「人食いグマ」が増える 「シカ」とのヤバイ関係にも問題あり

19年度にクマに襲われた人は全国で157人 10年後には大都会にも出没する可能性

記事まとめ

  • 19年度にクマに襲われた人は全国で157人となり、過去最多を記録した
  • クマが人里に現れるのは、ドングリの不作が原因と言われるが関係ないとも
  • ジャーナリストは「10年後には、大都会でもクマは出没するように」と警鐘を鳴らした

これから「人食いグマ」が増える 「シカ」とのヤバイ関係にも問題あり

これから「人食いグマ」が増える 「シカ」とのヤバイ関係にも問題あり

警官のピストルでは、クマに太刀打ちできない

 環境省によると、2019年度にクマに襲われた人は全国で157人。過去10年で最多を記録した。今年は4月から7月にかけて7748件の出没が確認されている。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、クマの生息数は年々増えていると警鐘を鳴らす。

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 クマは、かつて九州にもいたが、近年は目撃情報がなく、現在は主に本州と北海道に生息している。本州にはツキノワグマ、北海道にはヒグマが生息している。ツキノワグマは体長が110〜130センチで体重はオス80キロ、メスが50キロ。ヒグマは体長200〜230センチで、体重は150〜250キロにも達する。どちらも走る速度は時速50キロと俊敏だ。

 富山県では、今年1月から8月末までにクマに襲われて怪我をした人は5人で、2004年から統計を始めて以来最多のペースという。北海道の新ひだか町では、クマの目撃情報が7、8月の2カ月間で34件と、例年の2倍を記録している。

 8月26日には、岩手県八幡平市田山地区の山林で、クマに襲われたと見られる72歳の男性の遺体が発見された。

 クマによる人身被害の多い秋田県では、7月8日から8月末まで発令していた「ツキノワグマ出没に関する注意報」を、9月末まで延長した。目撃件数が例年より多く、農作物の食害が相次いだためだ。とにかく、クマが増えていることは間違いなさそうだ。


■実態は10万頭


「昨年のクマの捕獲数は5900頭で、過去最高でした」

 と解説するのは、田中氏。同氏は10月10日に『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)を出版する。

「ツキノワグマの生息数は、50年前は6600頭でした。1992年には1万頭前後、2010年には2〜3万頭と推定されています。ヒグマは、90年代で2000〜3000頭。2014年には約1万頭と、この20年で2倍以上に増えています。もっとも、毎年5000頭も捕獲しているのに、これだけ増え続けているわけですから、実際は5万頭、いや10万頭いる可能性がありますね」

 なぜ、クマが増えているのか。

「日本の森林は50年前まではげ山が多かったのですが、植林が進んで木が増えました。1980年から90年にかけて林業が衰退したことで、木の伐採が大幅に減っています。つまり、木の実など、クマのエサが豊富になったため、クマも増えたわけですね」

 クマは木の実よりも、人間の作った野菜や果物を好んで食べるという。

「一般的にクマが人里に現れるのは、ドングリが不作だからと思われています。実はそうではありません。ドングリよりも野菜や果物の方が美味しいからです。畑には、農業廃棄物が沢山あります。出来の悪い野菜や、作り過ぎて廃棄した野菜をクマは喜んで食べます。また、りんごやみかん、桃なども好物です。それらがクマを人里に引き寄せるのです」

 秋田市の果樹園で8月10日、りんご約250個がクマに食い荒らされた。クマが民家に侵入するケースもある。8月18日、岩手県の大船渡市の民家にクマが玄関の引き戸を開けて侵入、冷蔵庫にあった果物を持ち去った。


■駆除されたシカがクマのエサに


 さらに、クマが増えた原因として、田中氏は駆除されたシカの処理と大きな関係があると指摘する。                                   
「現在、日本にはシカが400万頭以上いると言われています。増えすぎたため、年に50〜60万頭駆除しています。本来、駆除したシカは土に埋めなければいけないのですが、山の中で深さ1メートル以上の穴を掘るのは至難の業です。ほとんどは埋めずに、落ち葉をかけて隠すとか、沢に捨てるというのが現状でしょう。そうした駆除されたシカがクマのエサになっているのです」

 シカの肉に味をしめたクマは、家畜や人間を襲うという。

「2016年の5月から6月にかけて、秋田県で起きた襲撃事件には驚きました。出会い頭ではなくて、クマが積極的に人間を襲ったのです。4人が死亡、4人が重軽傷を負いました。殺人グマと呼ばれていました」

 これは、「十和利山クマ襲撃事件」と呼ばれる、戦後最悪の獣害事件だ。十和利山の南麓に広がる酪農地帯で、タケノコ採りに入山した男女が次々にクマに襲われた。4人の遺体には、クマに食べられた痕があった。

 山間の集落や地方の田舎に出没していたクマは、今後、中小の地方都市にも出没するようになると予想する。

「10年後には、大都会でもクマは出没するようになります。2年前、北海道砂川市の市街地にヒグマが出没しました。猟友会が出動し、警官の許可をもらってクマを射殺しました。ところが、近くに人家があったため、『捕獲規制区域』となり、書類送検されてしまったのです。猟銃の所持許可も取り消されました」

 警官のピストルでは、クマに太刀打ちできない。

「警官が所持している38口径のピストルでは、クマは即死することはありません。ですから、獣害専門の警察官を設ける必要があります」

 山間の集落では、畑や家の周りを高さ2メートル程の柵で囲んでいるところが増えている。

「作物というより、身の安全のためです。田舎では獣害は日常となっています。都会の人ももっと獣害に対する危機感を持って欲しいですね」

週刊新潮WEB取材班

2020年10月9日 掲載

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