リニア改良型試験車“試乗体験レポート” ふかふかシートで時速500キロの乗り心地は?

“世界最速鉄道”の開業はいつになるのか。静岡県との協議が難航し、2027年に予定していた「リニア中央新幹線」の品川―名古屋間の開業は、先延ばしになりそうだ。一方で、車輌の開発は順調に進んでいるという。JR東海が改良型試験車の走行を公開するというので、体験しに行ってみた。

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 東京―大阪間が最速67分。「リニア中央新幹線」の開業を心待ちにしている人は多いだろう。出張族で東海道新幹線をよく利用する記者も、その一人だ。

 リニア新幹線の課題と言われているのが、「振動」と「騒音」だ。それを低減することに成功したのが、今回お披露目となった改良型試験車である。

 10月19日、山梨県都留市の「山梨リニア実験センター」には、メディア初公開とあって、100人以上の記者・カメラマンが大挙していた。記者は初めて、リニア新幹線を取材する。一方、他社の記者たちを見ると、明らかに慣れた雰囲気の人たちが。“鉄オタ記者”なのか、専門用語を交え解説している人もいる。

「乗り心地はかなり改善されたらしい」

 彼らの立ち話を聞いていると、期待で胸が膨らんできた。

 試乗は、「山梨実験線」と呼ばれる笛吹市と上野原市の42・8キロメートルを2往復するかたちで行われる。車輌は7両編成で、後方の6、7号車だけが改良型試験車。残りは「L0」系と呼ばれる旧型車輌だ。取材陣はA班とB班に分けられ、まずA班が改良試験車、B班が旧型車輌に試乗し、区間を一往復する。

 その後、A班とB班が交代して、もう一往復するという段取りだ。記者はB班。旧型に乗ってから新型、という順番であり、リニア初取材の身としては、比較しやすいのでありがたい。

■振動や騒音が気になった旧型の「L0系」


 まずは旧型の「L0系」。車輌に入ってすぐに感じたのは、“いつもの新幹線と変わらない?”といった既視感だった。あまりシャレっけを感じない。近未来の乗り物というイメージを持っていただけに、正直、物足りなさがあった。

 東海道新幹線との違いは、座席の配置だ。東海道新幹線は3席・2席なのに対し、こちらは2席・2席。だが座ってみると、なぜか3席シートのような窮屈さがある。

 ただ、やはり時速500キロのスピードは圧巻だった。車輌が動き出すや否や、壁に設置されたモニターの数字がめまぐるしく動いていく。走り出して45秒ほどで、

「いま浮きました!」

 と、広報の人。確かにふっと浮いたような感覚。時速150キロくらいだ。さらに数字はみるみるうちに上がっていき、40秒と経たないうちに、

「いま東海道新幹線の最高時速285キロに達しました!」(同)

 あっという間に加速していく感じは、ジェットコースターに乗っているような怖さもある。そのままたった2分で最高時速の500キロまで達してしまうのだ。やがて減速が始まり、

「いま東海道新幹線の速度に戻りました」(同)

 と言われるのだが、500キロとの落差のためか、“東海道新幹線ってこんな遅かった?”といった錯覚にも陥った。

 約8分で42・8キロ先の目的地の笛吹市に到着。折り返し上野原市へ戻る。なるほど、このスピードならば、品川―名古屋間を40分で駆け抜けるのも可能だとよくわかった。

 ただ、乗り心地はというと、普段乗っている新幹線よりも振動と騒音が気になる。特にトンネルに入る時などは、上下に体を揺さぶられるような揺れを感じた。

■2センチ広い、ふかふかの座席はグリーン車のよう


 さあ、次は待ちに待った新型車輌だ。6号車に入った瞬間、視界がぱっと白く開けた。天井パネルの中にまっすぐ伸びる2本の高輝度LEDが、白を基調とした室内を隅々まで灯し、スタイリッシュな空間を作り出している。

 目を引くのは、青とグレーでデザインされた大きな座席だ。さっそく座ってみた。ソファーのようにふかふかで気持ちいい。多層構造のクッションを背もたれと座面に採用し、体圧を分散させているという。

 先ほどの旧型よりもゆったりしている。聞けば座席幅は約2センチ広いという。たった2センチの差が、こんなにも大きいものなのか。最も気に入ったのが両耳を包み込むような形状をした、頭部のクッションだった。長時間乗っていても、首や肩が疲れなさそうだ。もっとも、高速移動が売りのリニアに、そんな心配など無用なのだが……。

 一言でいえば、グリーン車のような快適さ。旧型とはえらい違いである。

 7号車も新型車輌だが、照明などのテイストが少し変わる。JR東海によれば、比較検証するために、異なるメーカーの改良型新車輌を2種類用意したという。こちらも白を基調とした開放感があるデザインだが、6号車に比べると柔らかい明るさだ。照明を、東京ドームの天井のような素材を通しているからだという。

■目と閉じたらいつの間にか寝入ってしまった


 両車輌ともに、広い空間を確保するため、荷棚が小さめな作りになったところも注目すべき点だ。大きなリュックを置くのは窮屈そう。代わりに、航空機のように前の座席の下に収納スペースが新たに設けられた。

 ほか気になったのは、USBコンセントが座席には付いてはいるが、普通のコンセントがない点だろう。これでは、ノートパソコンの充電ができないと心配になったが、将来的にはモバイル機器はこれまで以上に小型化し、USBで事足りると予測したうえでのことだという。

 では、肝心の走行中の乗り心地は、旧型と比べてどのくらい変わるのか。

 再び列車が動き出すと、違いは明らかだった。椅子のクッションが振動を吸収してくれるのか、揺れをあまり感じない。音も静かになったような気がした。天井に吸音素材を活用するなどして、車内の反射音を低減しているという。

 そのほか、車内からはわからないが、改良型は車輌の先頭部に凹凸をつけるなどして空気抵抗を13%下げ、消費電力や社外騒音を低減する改良が加えられているという。もちろん、まったく振動や騒音が気にならないというわけではない。だが、座席の快適さを加味すると、記者には日頃乗っている新幹線以上に快適に感じられた。スタート地点へ戻る走行中、うとうと微睡(まどろ)んでしまったほどであった。

 こんな快適空間で、大阪まで1時間ちょっとで行ける日がくるならば、どれだけ便利であろう。夢の実現が待ち遠しい。

週刊新潮WEB取材班

2020年10月20日 掲載

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