ヤクザと大乱闘で注目、歌舞伎町の「スカウト」というお仕事  実態は“不動産屋”?

新宿歌舞伎町「スカウト」の実態 指定暴力団住吉会系の"スカウト狩り"騒ぎで注目

記事まとめ

  • 先月末、住吉会系幸平一家傘下の暴力団幹部ら5人の組員と、3人のスカウトの男らが逮捕
  • 背景には、新宿歌舞伎町でおきた暴力団による"スカウト狩り"があったとされている
  • キャバクラや風俗店に入店させるスカウトの仕事場は、路上からSNSに変わったという

ヤクザと大乱闘で注目、歌舞伎町の「スカウト」というお仕事  実態は“不動産屋”?

ヤクザと大乱闘で注目、歌舞伎町の「スカウト」というお仕事  実態は“不動産屋”?

知られざる実態は…

スカウト狩りを警戒し、グッチは身に着けないように


 先月末、東京・新宿歌舞伎町で乱闘したとして、指定暴力団住吉会系幸平一家傘下の暴力団幹部ら5人の組員と、3人のスカウトグループの男らが暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕された。背景には、暴力団による“スカウト狩り”があったとされているが、一体、スカウトとはどのような仕事なのか。業界に詳しい作家の酒井あゆみ氏が取材した。

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 事件が起きたのは6月4日の午後10時過ぎ。直後から目撃者によって撮影された動画がいくつか出回り、現在もSNSなどで見ることができる。大勢の男たちがターゲットと思しき相手を追いかける映像や、ビルの外階段の近くで「コラ!」と声を上げ暴行する映像など……。パトカーが駆け付け歌舞伎町の路上が騒然となっている様子を収めたものもあった。

 動画ではどちらがどちらを暴行しているのか分かりにくいが、報道によると、暴力団員らがスカウトの男たちを襲撃し《お互い入り乱れてボッコボコの殴り合いになり、数人が路上に投げ飛ばされた》(10月31日付「日刊ゲンダイDIGITAL」より)ということらしい。襲われたスカウトたちも反撃し、乱闘騒ぎになったようだ。

 逮捕されたスカウトの男3人は「ナチュラル」というグループの代表を務める双子の兄弟と、その2人の弟だった。ナチュラルの従業員が他グループの優秀なスカウトを引き抜きトラブルになり、双方の“ケツモチ”の暴力団(ともに幸平一家傘下)が仲裁に入るも、決裂。メンツをつぶされた暴力団側は、ナチュラルの双子を探すべく“スカウト狩り”を行っていたという。

 15年間にわたり歌舞伎町で働くAさんは、小規模なスカウトのグループの代表を務めている人物だ。ナチュラルとは無関係だが、当時はスカウト狩りを警戒していたという。

「“ヤクザがナチュラルの双子を探している。スカウトを見つけると連行して、関係者かどうか、双子の居場所を知っているか吐かされる”という情報は、4〜5月頃には入ってきていました。だから、自分のグループのスカウトには歌舞伎町に近寄らないよう伝えていました。スカウトと分かると手当たり次第に……ということだったので、スカウトっぽい服装をするなとも言っていました。『グッチ』とか『バレンシアガ』は身に着けるなよと。実際、勘違いされてヤクザに捕まり、名刺を出させられたホストさんもいたようです」

 Aさんによれば、ナチュラルは「昔からある、イケイケのグループ」。事件の背景については、報道とはちょっと違う話を聞いているそうだ。
 
「ナチュラル、引き抜かれたグループ、それとヤクザたちとの間で話し合いはあったっぽいのですが、自分が聞いている話では、ナチュラルがバットでヤクザを“やっちゃった”らしい。ナチュラルに完全に非がある話なんですよ。だから、事件の後にナチュラルは3グループに分裂しているのですが、母体だったグループは残っており、今後、ヤクザに金を払い続けることで決着したと聞いています。ナチュラルは西東京のあたりから歌舞伎町にやって来たらしいんですが、昔から評判は悪かった。5年ほど前でしょうか。スカウトした未成年の女の子に偽造の免許証を持たせて、風俗店に入店させたことがあったんです。後日それと知らずに雇った経営者が警察に捕まってしまい、店は営業停止になってしまった。店は損害賠償をナチュラルに請求し、その額は数千万円だったとか、聞いています」

 普段は表には出てこない夜の世界の出来事だけに、真相は確かめようがない。とにかく、ナチュラルは界隈で知られたスカウトグループであったことは間違いないようだ。


■スカウトの実態 嫌がる子を無理に…はしない


 スカウトといえば、「路上で女性に声をかけ、キャバクラや風俗店に入店させる」というイメージが根強いだろう。ところが詳しく話を聞くと、また別の実態が見えてくる。

 スカウトの歴史は50年ほど。自分の店で働く女性を勧誘するためにキャバクラが雇っていた専属のスカウトが、そのルーツだといわれている。そこから店と切り離される形でスカウトは発展。個々のスカウトが複数の店とつながりをもち、条件に応じて女性を割り振って紹介する。その名が世間に広く知られるようになったのは、2005年に連載が始まったスカウト会社を舞台にした漫画『新宿スワン』の影響が大きいだろう。

 スカウトの仕事場は、新宿、池袋、渋谷、六本木など。キャバクラと風俗店の多さから考えれば、最も活動が盛んなのはやはり歌舞伎町だろう。スカウトといっても看板を掲げるわけではなく、いつの間にか去ってしまう者も多い。極端な話、あなたが誰かを店に紹介すれば、その時点であなたもスカウトなのだ(実際は信用のない人間からの紹介は店も受け入れず、だからスカウトという商売が成り立つのだが)。つまり、いったいどれくらいのスカウトが居るのかは確かめようがない。Aさんは「歌舞伎町で100近くのスカウト会社があるんじゃないですかね。コロナでもっと潰れちゃっているかもしれませんが」と話す。

 女性が店に勤務している間は、スカウトはSB(スカウトバック)と呼ばれる報酬を店から受け取り続ける。スカウトと店との間の取り決めによるが、女性が稼いだ分のうち5〜20%が、スカウトの報酬になるとされる。Aさんがいう。

「世間で思われているような“嫌がる女の子を無理やり働かせる”ということはしません。だって、辞められたらこちらの収入がなくなってしまいますから。同じ理由で、飲み屋(キャバクラ)がいいか風俗がいいかも、女の子の希望を汲みます。スカウトとしてはどちらに入店させたいか?一概には言えませんが、風俗店のほうが話は早いですよね。月給制の飲み屋と違って、風俗は日給で支払われますから、すぐにバックが発生する。飲み屋は体験入店というシステムがあって、体入中はバックがないから、無駄に終わることもある。バックではなく入店時点で金を払う“買い取り”制の飲み屋も多い。ただし、基本的には女の子が主導の仕事です。無理強いして警察行かれたら終わりですからね」

 とはいえ、単に女性を入店させるだけが彼らの仕事ではない。長く、気持ちよく女性に勤めてもらうことが収入になるため、入店後のケアも怠れないのだ。むしろそこがスカウトの腕の見せ所だという。

「一番稼いでいる時で、月に500万円から600万円の収入がありました。ただその時は100人ほどの女の子を店に入れていて、彼女たちからの愚痴や、紹介先の店とのトラブルの連絡が、ひっきりなしに携帯に入ってきていました。それこそ24時間、寝る暇もなく携帯をいじって電話やLINEをしていました。しばらく間が空くと、どれがどの子だったかも怪しくなります。それにキャバクラや風俗で働く子ですから、基本的には精神が病んでいる。付き合っていると、こちらも病んでくるんです。色関(いろかん=色恋の関係を指す)に持っていって、長く働いてもらった女の子もいましたが、とりあえず店に来てくれれば大きな金になるホストと違って、スカウトは女の子をケアし続けなければならない。一度そういう関係になると続けなくてはならず、結果的に効率が悪いんです。だから今は連絡をとる女の子は20人くらいに絞っています」


■路上からSNSに変わる仕事場


 スカウトという仕事の善悪を論じることはここでは止そう。Aさんの話を聞いていると、まるで不動産の仲介・管理業者のようだ。

「自分は大学生のときからスカウトの仕事をしています。スカウトの方にスカウトされて始めました(笑)。卒業後に3年ほど働いていたのですが、スカウトの経験を活かし、某大手不動産で仲介の仕事をしていたんです」

 ただしAさんは、当初から他のスカウトとはやり方が違っていた。路上で女性に声をかけるのではなく、ネットを活用していたというのだ。そして現在では、むしろこちらの方が主流のスカウトの方法になっている。

「ナチュラルは昔ながらの路上スタイルを続けているみたいですが、そもそも新宿区はスカウト行為が条例で禁じられていますからね。いまはTwitterを使って、仕事を探していそうな子にメッセージを送ってスカウトしています。あるいは、フォロワーの多い女の子に『いいお店です』とか『体験入店してきました』と呟いて、拡散してもらうなどの方法です。自分が駆け出しのときはSNSが今ほどではなかったので、当時主流だったmixiを使っていました。夜の仕事に興味のある女の子募集、みたいなグループを作ったりして。mixiはTwitterと違って顔写真を載せる子が少なかったから、会ってみたら『あれ?』という女の子が多かったことを覚えています……」

 路上からSNSに場が変わるとともに、スカウトの仕事の内容も変わってきた。これまで取り上げてきたような仕事のみならず、病院事務や介護士、弁護士なども、スカウトの紹介先になっているというのだ。人手不足のところにスカウト在り、の様相である。

「女の子と話をするときには喫茶店を使いますが、電源があって携帯が充電できるから、基本的にはルノアール。コーヒー代は高いですが、自腹です。あとは鬼のような連絡でかさむ携帯電話代も、もちろん自腹。だからスカウトは、収入が安定するまでは結構たいへん。それでもやればやっただけ稼げるから、自分は続けられてきました」

 ホストやキャバクラ嬢に比べれば、目立つことは少ないスカウトという仕事。夜の世界を陰で支える、縁の下の存在といえるのかもしれない。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月4日 掲載

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