「逆バリ人生」はうまくいく 今後の目標は「セミリタイア界の若手」(中川淳一郎)

「逆バリ人生」はうまくいく 今後の目標は「セミリタイア界の若手」(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 佐賀県唐津市に11月1日から移住することになりました。元々私は「2020年8月31日をもってセミリタイアし、アメリカで大統領選をリポートする」といった目標を立てていたのですが、コロナでそれも叶わず……。チンケなウイルスで人生設計を狂わされたのはむかつきますが、まぁ、アメリカの惨状を考えると仕方がない。

 ただ、人生ってものは成り行き次第、その時々の判断で好転もすれば悪化もする。佐賀に行くことでまた良き出会いがあればいいな、と思っています。今回書くのは「逆バリ人生」についてです。

 敢えてメジャーではない道を進むと案外目立つことができ、ライバルが少ない状況を作れます。私は大企業を4年で辞めましたが、当時は「もったいない!」と言われまくったものです。しかし、今や大企業では45歳でも早期退職の対象になってしまっている。47歳の今考えると、私は27歳のあの時にさっさと会社を辞めて良かったと思う。

 その後、雑誌のフリーランス編集者になりましたが、5年後の2006年、ネットニュースの編集を開始します。当時はネットは「格落ち」扱いで、編集者のなり手があまりなかったのです。しかし私は、今後ネットは隆盛の時代を迎えるだろう、と見込んでいたため、このオファーを受けました。紙メディアの編集者からは「お前、ネットの仕事してるのかよ」とバカにされましたが、「うるせー、今に見ておれ」のコンチクショー精神でやっていたら、あれよあれよという間にネットが強力なメディアになってしまった。

 あの時逆バリをしたから賭けに勝てたな、と思っています。そして、多分ネットメディアもこれからは競争が激しくなるから、あとは若者に任せた!と一抜けでセミリタイアし、地方生活を開始することに。

 これも「70歳定年法」が施行される昨今の風潮に逆バリしています。ここから狙うポジションは「セミリタイア界の若手」「東京脱出男」という、またもやニッチな分野です。果たしてこんなものにニーズがあるのかどうかは分かりませんが、取りあえずこの分野でハッソーハッソーしてみます。

 それにしても、年間364日働く生活から解放されたのは嬉しくて仕方がありません。先日、佐賀生活の予行演習とばかりに、江戸川放水路でハゼ釣りをしてきました。朝からボートに乗り、ビールを飲みながら仲の良い友人と釣り糸を垂らす。ブルルッという独特のあたりが来て竿を上げれば、あのかわいいハゼがくっついている。その後は友人宅で一緒に天ぷらを作ったのでした。あぁ、人間的ってこういうことなんだなぁ、とつくづく思った。

 そして、やっぱりコロナでこの社会はおかしくなった。4月までは私も「これはヤバいウイルスでは……」とビビっていましたが、5月に入ると「これ、たいしたことないんじゃね?」という方向に舵を切り、以後は恐怖を煽るテレビ報道を批判し続けた。この時も逆バリをしたわけですが、多分私の読みが当たるでしょう。厚労省はさっさと「マスクは不要」と宣言してくれよ〜。自主性のない日本人はお上が何か言わないと動けないんだからさぁ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年11月5日号 掲載

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