「裏アカ」で性的な告白、ゲームに廃課金 親は知らない「スマホ」の怖さ

「裏アカ」で性的な告白、ゲームに廃課金 親は知らない「スマホ」の怖さ

SNSを通じた誘拐事件や自画撮り被害は、約9割が「実感なし」と答えている(写真はイメージ)

 コロナ禍は経済や社会活動への影響のみならず、子どもの生活にも影を落としている。学校は3カ月近く休校となり、再開後も分散登校や学校行事の中止など混乱がつづく。

 勉強や進路の不安。友達と気軽に遊べない。部活動の試合ができず目標を見失う。そんなストレスからオンラインゲームやSNSにのめり込み、トラブルを抱える子どもも少なくない。

「息子のゲーム依存が心配です」と嘆息するのは、中学2年生の長男と暮らす母親(45)だ。

 シングルマザーで仕事を掛け持ちし、休校中は子どもに留守番させる毎日だった。孤独な“ステイホーム”のせいか、長男はオンラインゲームに没頭。最後に生き残ったプレイヤーが勝者となるバトルロワイヤルゲームに、1日15時間を費やしたという。

「自室にこもりゲーム三昧でした。食事はゲームをしながら簡単に済ませ、部屋から出るのはトイレと入浴のときだけです。ゲーム内のバトルで興奮するのか、奇声を上げたり、壁にペットボトルを投げつけたり。私が注意すれば口論になり、親子で殴り合いのケンカをして警察を呼んだこともありました」

 長男は一時昼夜逆転に陥り、学校再開後も生活リズムを取り戻せていない。勉強そっちのけで深夜までゲームをやめられず、眠気を解消するためのエナジードリンクを手放せなくなった。

 オンラインゲームに詳しくない人でも、パチンコや飲酒に置き換えれば、連日15時間もつづけることの異様さはわかるだろう。昨年5月には世界保健機関(WHO)が、ゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を疾病と認定。ギャンブル依存症などと同じく、精神・行動の障害だと位置づけた。

 健康上だけでなく、犯罪に巻き込まれるリスクもある。9月には横浜市に住む9歳女児が、オンラインゲームを通じて知り合った男(38)の自宅に監禁される事件が起きた。女児は「親のスマホを借りていた」というが、今や低年齢の子どもでもゲームを通じた出会いが日常になりつつある。こうした事件では、犯罪者が言葉巧みに被害者に接近する。たとえばゲームで使う装備品などのアイテムを「プレゼントする」と持ち掛ける。フレンドリーな態度で安心させたあとに、「お礼」として顔写真を送るよう要求したり、実際に会う約束を取り付けたりする。社会経験が未熟な子どもほど「親切な人」だと疑わず、意のままに操られてしまうのだ。

 それにしても、なぜ子どもはオンラインゲームに熱中するのか。

 理由のひとつが「ソシャゲ」の流行だ。

 ソシャゲはソーシャルゲームの略称で、プレイヤー同士がインターネット上でゲームを同時進行し、友達になったり、チームを組んで闘ったりする。遊びながら人との関係性を得られるので、興奮や感動は大きく広がる。

 ゲーム仲間と競えば闘争心が湧く。自分のキャラクターがレベルアップすれば、他のプレイヤーから賞賛される。戦闘系ゲームでチームを組むと、先発隊や後方支援などの役割を与えられる。

 ひとりでスマホやパソコンを操作しているようでいて、実際には他者とコミュニケーションを取り、楽しさを共有できるのだ。

「ソシャゲは仲間との絡み(つきあい)がおもしろいし、ボイチャがあると盛り上がります」と話すのは、愛知県の男子高校生(18)だ。

 彼が言う「ボイチャ」とはボイスチャットの略称で、プレイヤー同士が「声」で会話する。

「基本はゲーム関係の話が多いけど、『今、何してる?』みたいな日常会話もあります。チームを組んでいる場合は、作戦を練る戦略会議とか、戦闘が終わったあとの反省会とか、熱い議論になったりしますよ」

 もともとオンラインゲームでは、文字でやりとりするチャットが使われていた。それが「声」に変わったことでコミュニケーションが容易になった。会社で言えば、メール交換の打ち合わせからZoomのリモートミーティングに変わったようなものだ。


■「廃課金」の悪循環


 意思疎通がしやすい一方で、ボイチャならではのトラブルも少なくない。

「小学生くらいの声で、『死ね』、『ぶっ殺す』なんてフツーにあります。熱くなるのはわかるけど、自己チューなガキが増えてとにかくウザい。対戦相手が女子の声だったりすると、変にナンパする男がいたりして、場がしらけることもあります。チーム内の会議も結構面倒ですね。リーダーからノルマを振られても、声で断るってやりにくいので」

“ノルマ”と聞いてもピンとこないかもしれないが、これも問題のひとつだ。

 ソシャゲ内でチームを組み団体戦を行う場合、メンバー同士の協力が必要になる。戦力の低いメンバーがいるとチーム全体に影響するため、「明日までに〇ポイント獲得」といった強化ノルマが課せられる。

 同調意識が強い日本の子どもは、「仲間に迷惑をかけられない」などと思い込みやすい。

 ノルマ達成のために長時間ゲームをつづけたり、「廃課金」と呼ばれる高額な課金をして、有料アイテムを大量購入したりする。時間やお金をつぎ込むほど、「これまでの努力を無駄にできない」という心理状態に陥り、ますますゲームをやめられない悪循環だ。

 ボイチャのような「声」でのコミュニケーションはSNSにも及んでいる。

「トークアプリ」や「ボイスSNS」と呼ばれるが、要は利用者同士がランダムにつながり、匿名で会話できるシステムだ。90年代に流行したテレクラ(テレホンクラブ)のアプリ版とも言えるが、特に10代の人気を集めている。

「クラスの女子は半分くらい使ってますよ」

 と話すのは、千葉県に住む女子高校生(17)。

 2年前から週に1、2度は利用するという。

「ヒマつぶしにちょっと誰かと話そうかって使い方もできるし、友達と一緒にいたずら半分でやることもあります。『キモイ人に当たった』とか、話のネタにするとみんなにウケるんです」

 ツイッターやインスタグラムなどのSNSも利用するが、「やっぱり会話できたほうが楽」だと笑う。

「テキストメッセージ(文章の投稿)は微妙なニュアンスが伝わらない。LINEのグループトークでも、ちょっとした言葉を誤解されてハブられる(仲間はずれになる)ことがあります。でも、ボイスSNSなら、相手の声から年齢や雰囲気がわかりやすい。話がおもしろいとか、優しそうな人だと『会ってもいいかな』って気持ちになるんです」

 実際に会ったことはないという彼女だが、その理由は「話した相手が遠くに住んでいたから」。逆に近くの人なら、「今から会おう」と会話が弾み、ノリに任せて行動するというわけだ。

 動画投稿サイトのユーチューブには、ボイスSNSで会話する様子を撮影した動画投稿が散見される。ランダムにつながる際の反応が生々しく映し出されるが、こうしたリアリティ動画も最近の流行だ。

 とりわけ人気を誇るのが、前述したソシャゲでの戦闘映像を配信する「ゲーム実況」だ。プレイヤーが勝ち残っていく状況が生中継されたり、攻略法が明かされたりするため、展開が気になって延々視聴する子どもも多い。

 埼玉県の女子高校生(16)はコロナ自粛以降、自宅でユーチューブを見る時間が増えたという。音楽やお笑いのライブ配信、アニメ動画などを視聴してきたが、ここ最近ハマっているのが「告白動画」だ。

「失恋したとか、お金がないとか、個人の打ち明け話もあるけど、ダントツでおもしろいのは美容整形の告白動画です。一般人の女子が、整形前、手術中、入院生活、退院後という感じで、リアルな顔出しをするんです。術後の様子とかをイッキ見して、友達とSNSで盛り上がる。『傷が怖い』、『腫れがすごい』って、もう“祭り”状態ですよ」

 整形前後の変化だけでなく、かかった費用や周囲の反応まで明かされる。

 プライバシーを切り売りするような動画だが、意外にも彼女は「応援したくなる」と言う。

「自分の素をさらして、明るく生きるためにがんばってるわけでしょ? 私や友達が祭り状態になるのは、告白動画に自分を重ねるからだと思います。自分じゃできないけど、“この人スゴイよ”って感じで、つい見たくなるんです」

 ありのままの姿に共感できるというのだが、思春期のような感受性の強い年頃では、思わぬ行動につながる場合もある。


■「裏アカ」で性的な告白


「恋愛体験を告白する動画や、性的嗜好を明かすツイートを見て触発されたようです。ただ、その後の影響までは冷静に考えられなかったんでしょうね」

 沈痛な表情で語るのは、高校2年生の娘を持つ母親(44)だ。娘は10カ月前から不登校になり、自宅に引きこもっている。引き金になったのは、娘が開設したツイッターの投稿。性的な告白が綴られ、学校内で噂になった。

「同じ学校の男子名を出して『〇〇君とヤリたい』とか、『縛っていいよ』とか、目を覆うような内容でした。娘に問いただすと事実ではなく、性的な想像でつい大げさに書いてしまったと。告白動画に感情移入しすぎて、赤裸々に語りたくなったそうです」

 彼女は娘のツイッターをときどき見ていたという。ところがそれは「本アカ」で、要は本人と特定できる表向きのアカウント。性的な告白をしていたほうは「裏アカ」で、親はまったく承知していなかった。

 ツイッターなど一部のSNSでは、ユーザーが複数のアカウントを持つケースがある。アカウントとは「サービスを利用する権利」という意味だ。

 銀行口座に例えれば、家族が知っている口座が「本アカ」、ヘソクリ口座が「裏アカ」で、キャッシュカードを使い分けていると考えればいい。

 それにしてもなぜ「裏アカ」が特定され、学校内の噂になってしまったのか。友達の「裏アカ」を見つけたことがあるという女子高校生(18)はこう話す。

「裏アカといっても、本アカと共通してる部分があるんですよ。たとえば投稿してる写真が同じとか、好きな芸能人や飼ってるペットの名前を出してるとか。部活の試合で勝った、風邪をひいて学校を休んだ、そういう個人情報を書き込んであると、検索で引っかかるんです」

 性的な告白をした先の女子高校生は、「裏アカ」に同じ学校の男子名を出していた。おそらくそうした情報から特定されたのだろうが、実は「本アカ」「裏アカ」を問わず、SNS利用にはリスクがつきまとう。

 一般的にはあまり認識されていないが、SNSでは投稿写真や書き込みから個人情報を割り出すことができる。

 たとえば中学生の少女が「今日は15歳の誕生日」と投稿すれば、年齢と投稿日から生年月日がわかる。「家族と焼肉を食べました」という書き込みとともにメニュー写真が掲載されると、店名などから生活圏が絞り込める。仮に生活圏内の中学校が1校ならば、投稿者の学校名は簡単に特定できるのだ。

 さらに「自画撮り」と呼ばれる自分の顔写真を出していれば、学校前で待ち伏せされる可能性もある。誰かが写真と同じ少女の後をついていけば、今度は自宅が特定されるというわけだ。

 情報セキュリティ企業のデジタルアーツが実施した「第13回未成年者の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2020年4月)によると、子どものSNS利用率は小学生・77%、中学生・95%、高校生・97%に達する。

「裏アカ」の所有率は小学生・32%、中学生・34%、高校生・55%。日常的にSNSや「裏アカ」を利用しながらも、当人たちの危機意識は低い。SNSを通じた誘拐事件や自画撮り被害は、約9割が「実感なし」と答えている。


■コロナいじめも


「みんなやってるから平気」、そんな意識の低さが顕著に表れるのがSNSいじめだ。SNSいじめでは、不特定多数による誹謗中傷や、事実無根の情報に基づく一方的な攻撃が起きやすい。5月にはテレビの恋愛リアリティ番組に出演していたプロレスラーの女性が自殺に追いやられ、大きな問題になった。

 一方、子どものSNSいじめは同級生や部活動の仲間など実生活の関係性から起きやすい。

 加害者の特定は容易だが、反面、加害者との関係性を完全に断ち切るのがむずかしくなる。お互いが顔見知りの場合には、実際の性格や外見などが攻撃材料になるため、被害者のダメージはより深刻だ。

「加害者は被害者の子の悩みやコンプレックスをネタに、エグイ言葉でいじめてくるんです」

 伏し目がちに語るのは神奈川県に住む女子高校生(16)だ。中学時代、クラスの女子集団からLINEのグループトークで執拗ないじめを受けた。当時の彼女は硬い髪質に悩んでいたが、「わざと毛の話を振られた」という。

「ひとりがタワシの写真を投稿する。そしたら別の子が『剛毛に近づくと痛いので注意』とか、『みんなで避けよう』なんてつづける。私のことを言ってるんだとわかるけど、明日も学校で顔を合わせると思うと言い返せないんです」

「痛い」や「避けよう」は遠回しな中傷だが、個人名は挙げられていない。あくまでも匂わせているだけという表現で、実は巧妙なSNSいじめの典型例だ。

 公立中学で生徒指導を担当する教師(41)は、コロナ禍でのSNSいじめの増加を懸念している。

「学校再開後、生徒や保護者からの相談が増えたんです。コロナ絡みでいじめるような陰湿なケースもあり、対応に苦慮しています」

 たとえば「飛沫が怖いからしゃべらない」というこじつけで、特定の生徒を無視する。「3密回避」を攻撃材料にするケースでは、「〇〇と同じ教室にいるとヤバイ」、「近くの席の人は除菌しよう」などとSNSに書き込む。

「クラスのグループLINEで、『コロナになりそうな子』や『密になる人がいない子』を投票で選ぶという集団いじめもありました。持病のある女子生徒や友達が少ない男子生徒をランキングし、みんなで『祝』のスタンプを連投していたんです」

 利便性の陰で深刻なトラブルやリスクに直面する子どもたち。健康を損ねたり、日常生活に支障が出たりする恐れがある以上、親として看過できるものではないはずだ。

 次回は、我が子をスマホ漬けから守り、犯罪に巻き込まれないための実践例を報告。子どものスマホトラブルを防止する具体的な対応策を紹介しよう。

ジャーナリスト 石川結貴

石川結貴(いしかわゆうき)
ジャーナリスト。家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに豊富な取材実績を持つ。主な著書に『子どもとスマホ〜おとなの知らない子どもの現実』、『スマホ廃人』、『毒親介護』など。

「週刊新潮」2020年11月5日号 掲載

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