加藤官房長官vs日本医師会長、「移動自粛」論争は「会長選」の延長戦

■「秋の我慢の3連休」で政権に喧嘩を


 日本医師会の中川俊男会長は、11月21日からの3連休を「秋の我慢の3連休」とし、外出自粛を呼びかけた。これについて、加藤勝信官房長官は、「現時点の感染状況を踏まえ、県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べ、応戦。実はこの論争、先の日本医師会会長選の延長戦だと指摘する向きが少なくない。

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 口火を切ったのは中川氏だった。

 18日の会見で感染拡大とトラベル事業との関連性を問われ、「『Go To トラベル』自体から感染者が急増したというエビデンスはなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いないと私は思っている。感染者が増えたタイミングを考えると関与は十分しているだろう」と述べた。

 続いて、こんな訴えも。

「コロナ慣れしないでください。甘く見ないでください」

「(今週末の3連休は)秋の我慢の3連休としてください」

 その一方、加藤官房長官は同じ日の会見で、「県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と一蹴。

 真っ向から言い分が対立しているのだ。

「『Go To』は菅さん(義偉首相)肝煎りの政策ですからね。中川さんは政権に喧嘩を売っているのと同じですよね」

 と、官邸関係者。

「確かに感染者数は増えていて、第3波だという指摘はあるにせよ、いたずらに不安を煽るのも良くないし、『Go To』は経済の立て直しという日本の命運を握っているわけで、中川さんの捉え方はいささか単純な感じがしますね」

 永田町関係者によると、

「中川さんは日医会会長選の延長戦をやってるつもりなんじゃないですか?」

■官邸と距離があるのは間違いない


 この6月にあった会長選で、中川さんは4期8年務めてきた横倉義武会長(=当時)を破って当選した。

 一度は「引退」を表明した横倉氏は周囲に翻意される形で出馬したものの、すでに中川氏に票を固められていたため、万事休すとなったという経緯がある。

「横倉さんは当時の安倍首相以下、官邸や閣僚、政治家や官僚まで太いパイプを誇っていましたから、“会長選に出ない”ってなった時には、結構衝撃が走りました」

「同じ福岡出身の麻生さん(太郎財務相)がすぐに“説得”に乗り出したし、厚労相だった加藤さんも、『横倉再選』を望んでいた1人です」

「厳しい国家財政のなかで、診療報酬改定では本体部分のプラス改定を死守できたのは横倉さんだからでしょうし、コロナ禍では政府を立てつつ、経営難に陥る医療機関へのサポートなんかを政府与党に対して積極的に働きかけていました」

「当たり前のように映るかもしれませんが、交渉ごとはボタンのかけ違いがしばしば起こりますよね。そのあたりはみんな、阿吽の呼吸でやってきたところがあるんですね」

 その一方で、

「中川さんは評判が芳しくなかったから、“横倉さんが良いよね”みたいな空気がいろんなところから漂っていたのは事実です」

「そういう流れがあったので、中川さんと官邸に距離があるのは間違いない。それが露骨に出たのが、今回の『移動自粛』論争じゃないですかね」

■敵は極力少ない方が良い


 少なくとも中川氏は、「官邸や政府を立てる」姿勢は見せていないようだ。

 先に触れた会見では東京について、「第1、2波と違い、若年者が主体ではなく中高年者の感染者の割合が増えていることが一番の心配だ。危機感をもっている」と語っている。

 ある自民党の閣僚経験者は、こんな見方をする。

「目立つのが好きなタイプですよね。日医のトップというのは、水面下で押したり引いたりをしながら着地点を見つけていくものですが、結構ガチンコな点に驚きました」

「中高年は何らかの疾患を抱えて生活している人の方が多いから、中川さんの言葉は響くとは思いますけれど、これだけアピールしちゃうと敵も増えますよね」

「各方面に頭を下げたりお願いしたりすることが少なくないポストですから、敵は極力少ない方が良いと思いますけれど」

週刊新潮WEB取材班

2020年11月19日 掲載

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