3年間の不倫が妻にバレた46歳 「残りの人生、ずっと針のムシロなのか」の苦悩

3年間の不倫が妻にバレた46歳 「残りの人生、ずっと針のムシロなのか」の苦悩

妻のまじめさと頑固さに息苦しさを感じるようになったと話すヒサノリさん(写真はイメージ)

■針のムシロと化した家庭で、これからどうすればいいのか


 不倫は他人がとやかく言うものではない。責めていいのは配偶者だけだろう。バレたときには何が起こるかわからない。残りの人生、ずっと針のムシロに座らされている気持ちで過ごすしかないのかと嘆いている男性がいる。

「一緒にいてつらいのなら別居しても離婚してもいい。僕はそう言うしかない立場なんですが、妻は別居も離婚もいやだという。それなら関係を修復するしかないのに、妻は僕の顔を見るとイライラする、と。じゃあ、どうすればいいんだという話ですよね」

 いや、もちろん自分が悪いのはわかっているんですが、とヒサノリさん(仮名=以下同・46歳)は苦笑した。

 31歳のとき、2年つきあっていた、2歳年下のマサコさんと結婚した。ひとり息子も生まれ、妻は息子べったりの生活になった。

「あまりに過保護なので、息子が小学校に入ってからは、よくふたりで公園に行ったりキャンプをしたりしました。ふたりだけで汽車の旅をしたこともあったなあ。それでも妻の過保護ぶりはおさまらなかった」

 中学受験をさせると言う妻とバトルになったこともある。息子の成績は中の上といったところ。無理に私立に入れる必要もないとヒサノリさんは考えていた。

「でも妻は、『甥も姪もみんな私立なの。私も私立だった』とわけのわからないことを並べ立てました。息子にこっそりどうしたいのか聞いたら、『友だちが行く地元の中学に行きたいけど、ママの気持ちも考えてあげないといけないよね』と言ったことがある。やさしい子だなと思いつつ、『学校選びはおまえの問題。おまえの人生なんだから、親に忖度しなくていい』と説得しました。僕もいる前で、息子が『地元の中学に行きたい』と言ったとき、妻は泣きわめいていましたね。息子も傷ついたんじゃないかな」

 ヒサノリさんは、そういう妻とどうしても相性が合わなかった。結婚前はまじめで潔癖で、一生、浮気などしそうにないところに惹かれていたのだが、結婚生活が長くなるにつれ、妻のまじめさと頑固さに息苦しさを感じるようになったのだ。

 彼が4年前から3年間にわたって不倫をしてきたのも、妻への幻滅が無関係とは言えない。相手はユキさんという8歳年下の独身女性。5年前、ヒサノリさんが異動した部署にいたのが彼女だ。

「彼女は当時、33歳。仕事のできる女性で、上からも下からも信頼が厚かった。異動したばかりの僕にも親切にしてくれ、いろいろ仕事を教わりました。そのまま1年間、先輩と後輩という関係を保っていたんですが、あるとき、彼女から相談があると言われて。純粋に仕事の相談だったんですが、そのときに彼女のプライベートな話もいろいろ聞きました。彼女は母ひとり子ひとりの家庭で苦労しながら育っているんですよね。同情したわけではないけど、彼女を見る目が少し変わったのかもしれません」

 しっかりしたキャリア女性だと思っていたユキさんが、ふと見せた「お父さんへの憧憬」に彼はグッと心を惹きつけられたという。


■彼女との秘めた関係と、妻への不満


 何度か会っているうちに、ふたりの間に恋愛感情が育っていく。だが、ヒサノリさんは自分の気持ちを無視し続けた。家庭のある40男が、彼女の将来を奪ってはならないと思っていたのだ。妻への不満はあるとしても、自分が選んだ家庭への責任も持ち合わせているつもりだった。

「これは言い訳になるかもしれませんが、あるとき食事の帰りに彼女が具合が悪いと言い出した。タクシーを拾って家まで送りました。彼女は歩くのもつらそうだったし、ひとり暮らしだから部屋に入ってから容態が急変することもあり得る。だからちゃんと部屋に送って、ベッドに寝かしつけたんです。そうしたらいきなり彼女が号泣しながら抱きついてきたんです」

 ユキさんは小さな声で「好き、好きなの」とつぶやき続けた。そんな女性を放って帰るほど、ヒサノリさんは冷たくなれなかった。しかも、男として彼女を好きだったのだから抑制は効かない。

「彼女は、家庭には迷惑をかけない、あなたの余った時間を少しだけ私と一緒にいてって。かわいいことを言うわけですよ。それにほだされてしまいました」

 秘めた関係は続いた。彼女は会社では一度も、そんなそぶりを見せたことがない。公私の別はきっちりつけている女性だった。むしろヒサノリさんのほうが会社でたまたま目が合ってドキッとしたり、うっかり彼女の姿を目で追ったりしていた。

「そういうことをしたらダメです、と彼女に叱られました。彼女といると気持ちが若返るんですよね。彼女にふさわしい男になろうと、仕事も今まで以上にがんばるようになりました。かっこいい男になりたい。遅まきながらそう思って」

 一方、家庭内では、成長した息子は自分の世界をもつようになり、妻はいつも不満そうだった。パートに出れば職場の女性に意地悪されたと愚痴るし、趣味の習いごとに行っても周りとうまくいかないと口をとがらせた。

「いつからそんな不平不満ばかり言うようになったのかわからないんですが、帰宅してグチグチ言われると、ついこっちも『いいかげんにしてよ』と言ってしまうんですよね。うち、子どもがふたり生まれる想定で3LDKのマンションを買っていたので、息子が小学校に入るころから寝室も別で。僕は帰宅して夕食が終わるとすぐ自室に入るようになっていきました」

 ユキさんとつきあうようになってから、妻との心の距離はますます離れた。週に3回はユキさんのマンションに寄る。彼女の部屋で食事をとることも増えた。スマホでは毎日、メッセージの交換をし続けた。


■SNSで妻にバレ…「今すぐ電話をかけて別れて」


 だが1年前、ヒサノリさんは突然、妻からスマホを突きつけられた。

「なにこれって。それはユキのSNSのページでした。愛する人と一緒というタイトルで、ユキが作った料理と一緒に僕の腕がぼんやり映り込んでいるんです。場所はユキの部屋でした。たぶん、誰にもわからないと思ったんでしょう。だけど僕の肘の裏側にある、しみのようなほくろがしっかり写っていた。妙な特徴があるので妻にはわかったんでしょう」

 妻は夫のスマホもしっかりチェックしていた。彼が寝てから指紋認証でスマホのロックを解除していたらしい。ユキさんの名前も住所も把握していた。

「人のスマホを勝手に見るなんて最低だなと言ったものの、これだけ証拠があると言い訳もできません。ユキの“匂わせ”にも腹が立った。だけどすべて自分が蒔いた種ですからね……」

 妻は静かに「離婚しますか」と言った。まさかそんなことは考えていないと答えたものの、そうか、離婚するという手もあるのかとヒサノリさんはぼんやり思ったという。

「とにかく、ことを荒立てないためには謝るしかない。妻の顔を見たら、目の下にクマを作っていて。うまくいっているとは言えないけど、それでも憔悴した妻を目の前にして、真剣に謝りました。すると妻は、『今すぐここで電話をかけて彼女と別れて』と。午前1時くらいですよ。息子は爆睡しているから起きないだろうけど、相手にだって迷惑だよと言いかけて、妻の形相が普通でないことに気づきました」

 ヒサノリさんは彼女に電話をかけ、「もう会えない。ごめん」と言った。小声で「詳細はまた」と電話を切ると、妻は黙って彼を見つめ、自室に入っていった。

「翌日、仕事帰りに彼女に会って、すべて正直に話しました。匂わせのことも。彼女を責めるつもりはなかった。ただ、もうどうにもならないことをわかってほしくて。彼女は黙って席を立つと、目の前のコップの水を僕の頭からかけて去っていきました」

 ドラマのようである。ハンカチで水を拭っていると店の人が温かいおしぼりをもってきてくれた。泣きそうになりましたよと彼は自嘲的につぶやいた。


■今も針のムシロは続く


 あれから1年。このコロナ禍においても、彼は仕事柄、毎日出勤していたので、妻と息詰まるような空間を共有しなくてすんだ、それだけは助かったという。

「ただ、ずっと針のムシロは続いています。妻とはほとんど会話がない。僕の食事も作らないし洗濯もしない。そう決めたそうです。息子とはふたりだけで話しました。お父さんは過ちを犯した、と。コロナで家にいた息子は、いろいろ考えたみたいですね。離婚するのかと聞かれたので、離婚はしないと答えました。意外と冷静に受け止めてくれて、『まあ、このコロナ禍で大決断はしないほうがいいよ』と慰めてもらいました(笑)。今年から高校生になったけど、なかなか登校できなかった息子はすごく読書をしていたようです。人生いろいろだよね、と言うのでつい笑っちゃいましたけど」

 妻にも離婚するつもりはないと告げたのだが、妻はときおり「もう、ホントにいや!」と急に叫び出したりする。コロナ禍で妻にもストレスがたまっていたのだろう。9月からパートに復帰、今回はあまり愚痴も言わずに勤めているが、言わなくなったのは夫に聞いてもらいたいと思わなくなったからかもしれない。

「息子は学校生活を楽しんでいるようです。ユキはコロナ禍で在宅勤務になり、どうやら同じ部署の同世代の男性とつきあっているみたい。社内で噂が流れていました」

 家庭内別居状態がいつまで続くのかわからない。だが最近、ヒサノリさんは時間があると料理をするようになった。先日、妻に勧めると一口食べた。だが、夫の顔を見てため息をつく癖は相変わらず続いている。

 息子は父の料理を作る姿をおもしろがっている。子は鎹(かすがい)、息子に力を借りて妻との関係を再構築できないかと、ヒサノリさんはチャンスを待っている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月22日 掲載

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