日本人の5割はコロナに「暴露済み」か 集団免疫獲得へ、致死率も低下

■「集団免疫」も遠くない


 新型コロナ第3波が到来し、再び「集団免疫」の問題が議論されているが、専門家はすでに新型コロナの暴露経験をもつ日本人は5割を超えていると指摘する。

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 国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授(医療政策)は、新型コロナの暴露(体内に入ること)の度合いを規定する「7段階モデル」という仮説を打ち立てている。

 新型コロナは毒性が弱く、多くの場合、“軍隊”たる抗体の出動なしに、自然免疫という“巡査”で対処できる。すると無症状か軽い風邪ほどの症状にとどまる。こうしてすでに日本人の3人に1人は、新型コロナに暴露したと考えられる。暴露の段階は七つに分けられ、自然免疫で対処できた0〜2段階が98%。残り2%を4段階に分け、全部で7段階――。そんな内容であった。

「7段階モデルを発表して4カ月、ヴァージョン2を作りました。修正したのは、後遺症の項目を入れたりしたのに加え、GoToキャンペーンで暴露した人が増えたので、5割はすでに暴露経験がある、と変更しました。またGoToを通じて、新型コロナは風邪と同様、一気に広がって感染力は高いけれど、大都市以外は短期間で収束することが明確化してきたので、それも強調しています」

 高橋教授は「集団免疫」も遠くない旨を語る。

「暴露経験をもつ人が5割を大きく超え、集団免疫ができる値になっている可能性も低くはありません。ただ、インフルエンザのように抗体をもっている人が多くなるのとは違う。風邪に集団免疫があるのか、ということと関係していて、今回は“自然免疫が強化される”という言い方のほうが正しい。ただ、そうなれば感染しても自然免疫で抑え込める可能性が高まり、重症化比率も下がります」


■致死率が減少


 高橋教授はもう一つ、重要な指摘をする。

「9月16日〜10月14日、10月14日〜11月18日という二つの期間を比較すると、PCR陽性者数を分母、死亡者数を分子にした致死率が減少しています。70〜79歳は8・54%が2・79%に、80歳以上は15・92%が7・19%になった。要因は、治療法が確立されて分子の死亡者数が減ったこと、もう一つは、検査数が増えて無症状者も捕捉され、分母が大きくなったことでしょう」

 テレビのワイドショーからは悲観的な情報しか得られないが、現実には致死率の改善をはじめ明るい兆しも多いのである。

■面会自粛で認知症が進行


 浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「いまと半年前とでは医療の状況が違う。感染する場合は、マスクをずらしていたなど理由があり、きちんと予防していれば恐れる必要はありません。GoToも縮小しようとしていますが、感染対策をして旅行するのと、対策せずに地元にとどまるのでは、後者のほうが感染リスクは高い。正しい恐れ方をすべきです」

 と訴えるが、正しく恐れないとどうなるか。一例が、認知症の急激な進行である。心療内科、循環器科医で大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏は、

「ステイホームで面会自粛を徹底していれば、認知症は進行します」

 と話し、続ける。

「私のところでも、患者さんが来ないと思っていたら、入院していたり、死亡していたりと、大変なことになっている。元気で普通に生活していた人がそうなっています。薬の説明が理解できなくなった方や、こちらの言うことの意味がわからなくなった方もいます。70代で普通に暮らしていた健康な人に多い。コンサートや講演に出かける楽しみがなくなり、怖くなって閉じこもった結果、健康状態が悪化してしまうのです」

 そもそも日本では、新型コロナによる死者が2千人にとどまっている以上、命か経済か、という問い自体がナンセンスである。


■「インフルと同じ5類に変更すべき」


「欧米の専門家たちは、日本の感染者数が欧米の数十分の1から100分の1であることを、“ジャパンミラクル”と呼んでいる。ところが、日本だけがそれをわかっていないのです」

 と、東京大学名誉教授で、食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏が言う。

「欧米は第1波で医療崩壊しかけましたが、治療法がわかってくるなどして、医療は崩壊していません。いま日本も1日の感染者数が2千人を超え、重症者も増えはじめましたが、穏やかな増加傾向にあり、致死率は下がっています」

 では、なぜ医療崩壊が懸念されるのか。

「インフルエンザは日本で年間1千万人程度が感染し、関連死を含めれば1万人ほど死者が出ます。それでも医療崩壊しないのは、指定病院だけでなく全国のクリニックで治療に当たれば、それだけの患者を治療できるキャパシティがあるからです。新型コロナがインフルエンザの何十分の一の感染者で、医療崩壊だとパニックになるのは、ひとえに指定感染症2類相当とされているため。感染者を全数報告し、医療従事者も防御を徹底し、ということになるからです。インフルも新型コロナも、亡くなるのは高齢者、基礎疾患のある人、という点で大差がない。ところが新型コロナは2類相当であるため、罹ったら大変な病気という認識が形成され、病院での集団感染はインフルでもままあるのに、新型コロナはクラスターが発生すると大騒ぎになる。店舗に感染者が出れば休業する。これはすでに人的被害です。保健所のパンクも懸念されていますが、それも2類相当で全数報告しなければならないから。検査や感染者の行動追跡に、人手と労力を奪われているのです」

 そして、訴える。

「菅総理は“新型コロナウイルス対策に全力で取り組む”と言いましたが、政府がいま一番にやるべきことは、この感染症の法的扱いを、インフルと同じ5類相当に変えることです」

 掲載のグラフを見てほしい。インフルエンザの感染者が多かった2018〜19年、多い週は28万人を超える感染者が報告された。1日平均4万人超である。しかも、それはあくまでも報告数で、このシーズンの推計受診者数は1200万人を超えた。その前年は2249万人である。それでもだれも騒がず、当たり前のように生活し、旅行をし、医療は当たり前に提供されていた。

 いまの状況を受けてGoToトラベルさえやめるなら、インフルエンザが流行するクリスマスや正月の時期は、一切の移動を禁じたらどうなのか。そうしなければ辻褄が合わないことに、早く気づくべきである。

「週刊新潮」2020年12月3日号 掲載

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