「高齢者向け介護サービス」が経営難で「夜逃げ同然」に、会員は食い物にされ泣き寝入り

■地面師関係者に身売り→更に業績悪化で


「『育児』『介護』『福祉』の“共済団体”を食い物にするワル」――。週刊新潮「MONEY」欄がこんな見出しと共に、東京都新宿区の一般社団法人「全国育児介護福祉協議会」(通称・全祉協)を取り上げたのは今年5月のことだ。記事では、全国の会員から掛け金を集め、高齢者向けに介護サービスを展開するこの一般社団法人が、「地面師ともつながりのある人物」に身売りした挙げ句、存続の危機に晒されていると報じている。12月3日に発売された週刊新潮では、続報が掲載されているが、どうやら危機は更に深刻さを増しているようだ。

 全祉協は、公的介護保険で賄えない介護サービスの提供を看板に掲げてきた団体だ。

 会員が要介護者となった際には、全祉協が介護サービス業者への費用を負担し、法定以上に長時間のサービスを受けられたり、一時金を受け取れたりすることができていた。

 最盛期には3万人もの会員を擁したというこの団体だが、経営危機に瀕して2年前に身売り。

 ところが、再興を期待した会員たちの思いもむなしく業績はさらに悪化し、ついには、夜逃げ同然の状態に陥ってしまったというのだ。

 現状を知ってもらうために、まずは関係者から入手した写真を見ていただきたい。

 1枚目では、段ボールやゴミ袋が雑然と放置され、床にはシュレッダーで裁断されたような紙くずが散らばっている様子が確認できる。

 これは全祉協が本部事務所を置くビルの一室の内部を10月20日に撮影したものだというのだが、全祉協関係者は以下のように解説する。

「本部事務所の契約は9月末で終了したのですが、更新する資金にも事欠いていたようなんです。ビルの管理会社は10月20日に鍵を付け替えると事前に通告していたのですが、結局、引っ越しの準備も間に合わないため『夜逃げ同然』で退居したと聞いています」

■名簿が特殊詐欺グループなどの手に渡ったら


 実際、同日に撮影された別の写真からは、机やソファ、冷蔵庫、パソコンといった家具や事務用品が大量に放置されている様子が窺える。

 その中には、取り扱いに注意が必要な物も含まれているという。

 前述の関係者によると、

「会員の名簿を綴ったファイルです。これを見れば、氏名や住所といった個人情報から、掛け金の支払い状況や引き落とし用の口座など資産状況に関する情報が分かってしまいます」

「会員の多くは高齢者が占めているだけに、万が一、特殊詐欺グループなど悪人の手に渡ったらと考えるとぞっとします」

「原状回復の求めにも応じておらず、ビル管理会社の担当者も頭を抱えているようです」

 もはや「育児」・「介護」・「福祉」の名を冠する一般社団法人としての資格を問わざるを得ないが、事態はなぜここまで深刻化したのか。

「今年6月にあった消費者庁の注意喚起が決定打になりました」

 と、元職員が経緯を振り返る。

 いわゆる「無認可共済」として出発した全祉協のメイン事業は、会員から約60万〜約250万円の掛け金を集め、要介護になった際に会員が利用した介護事業者の代金を支払うというサービス。

 ただ、この元職員は、

「そもそも会員がどんどん高齢化しているのに、平均して100万円ほどの掛け金で、老後の介護費用を面倒見ますという事業自体に無理があったんです」

 と証言し、こう続ける。

「建前では、公的介護保険でまかなえない分を補うという契約だったんですが、勧誘時に良いことばかり言っているので、人によっては月に10万円以上の特別養護老人ホームの利用費用をまるまる負担したり、『何でもあり』の状態だったりしたんですよ。自転車操業に陥って当然ですよね」

 さらに17年6月、この事業手法が保険業法に抵触する恐れがあるとして、金融庁から業務の是正を求められ、新規の会員募集を停止せざるを得なくなり、資金繰りは更に悪化していく。

■滞納、差し押さえ、提訴、トラブル


 19年3月には、職員の社会保険料約1億円超を滞納したとして、一時資産を差し押さえられた。

 結局、会員に約束したサービスを提供できなくなり、これを問題視した消費者庁が今年6月、消費者安全法に基づき、実名で注意喚起したのだ。

 この注意喚起を受け、7月には会員の掛け金の回収を代行していた大手金融業者が契約を解除したため、以降、注意喚起前には1万人超から毎月5000万円ほどあったという会費収入が途絶えることになった。

 一方、未払いだった社会保険料の滞納も続いているようだ。

 全祉協は現在、山梨県甲州市に有料老人ホーム、長崎市雲仙市に保養施設を所有しているが、いずれの土地と建物も昨年6月に日本年金機構が差し押さえている。

 さらに、今年に入ってからは元職員らが東京地裁に未払い賃金約2500万円の返還を求めて提訴した。

 運営していた有料老人ホームなどの施設の入居者との間でも、入居頭金や前払いした家賃の返還を巡り複数のトラブルが起き、いくつかは訴訟に発展しそうだといい、まさに四面楚歌といっても過言ではない状況なのだ。

 冒頭紹介した週刊新潮「MONEY」欄で、「地面師ともつながりがある」と指摘された現副理事長の男性と、その妻である現理事長(同記事では「元小沢ガールズ」とされている)はこの状況をどう乗り切る公算だろうか。

 前述の関係者は、
 
「どうやら理事長夫婦は全祉協が運営している甲州市の有料老人ホームの一室に『巣ごもり』しているようです」

「おそらく残った不動産などを売却するまでは居座り続けるつもりでしょうが、差し押えをどうやって解くつもりなんでしょうか」

 と首をかしげる。

 何ともたくましいばかりだが、結局食い物にされるのは、掛け金を払っても約束されたサービスを受けられない会員たちである。

「育児」・「介護」・「福祉」の名に恥じぬ始末をつけねばなるまい。

週刊新潮WEB取材班

2020年12月5日 掲載

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