「医師会」をありがたがる風潮に違和感 ただの業界団体の一つなのでは(中川淳一郎)

「医師会」をありがたがる風潮に違和感 ただの業界団体の一つなのでは(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 11月下旬の3連休を前に、日本医師会の会長が「外出を控えて我慢の3連休に」と言い、東京都医師会の会長も「身近な人以外との面会を控えて」と、GoToトラベルの中断を訴えました。政府の対策分科会の提言もあったことから、菅総理も、範囲は明言しなかったものの同キャンペーンの一部見直しについて言及しました。

 コロナ禍をめぐっては、日本医師会をはじめ、各都道府県の医師会が会見を開いて政府や首長を批判し、遊び呆ける「愚民」に自制を求めてきました。これをメディアは「専門家様からの有難いお言葉です!」とばかりに報じる。

 しかし医師会って、言うなれば「医師・病院の業界団体」でしょ? 大企業の業界団体である経団連みたいなものでは? だから、医療専門家としての意見には耳を傾けるべきではあるものの、医師会としての発言は「業界団体からの陳情」であると見ることもできる。コロナのせいで、ほかの病気の受診者が減少して病院業界が大変なのは分かる。だからこそ、「外に出ないでくれ! 感染しないでくれ! 普通の患者を受け入れたいのだ」と切実に訴えた、とも見えます。

 一方、7月には、「一般社団法人日本水商売協会」の代表が、国や都の対応について「夜の街」を悪者にして分断を煽ったと、外国特派員協会での会見で批判。全国100万人以上とされる従事者の一定数が失業する危機について言及しました。

 どちらも業界団体のトップが自らの立場を述べているわけで、医師会には「ありがたや〜」的対応で、水商売協会に対しても理解を示すメディアは多かったものの、ネットでは「お前らなんて潰れてしまえ。このクラスター発生装置め!」という厳しい声が多かった。

 医師会とは「業界団体」である、と捉えやすい例がありました。2019年11月に開かれた政府の「全世代型社会保障検討会議」の会合についての記事です。医師会は患者の医療費負担増に反対し、経団連は容認したと、産経新聞の電子版が「医師会『受診抑制』vs経団連『公平性を』 医療費の攻防激化」の見出しで報じました。

 医師会は、医療費の自己負担が安い方が患者が多く来ると見込み、経団連はこれ以上若者を苦しめないでくれ、健保の保険料が上がったら従業員の給料を増やさざるを得ないし、場合によっては会社の負担割合が増えるではないか──こういう構図ではないでしょうか。両団体が自身の利害に関する主張をしあった形なのです。

 なお、グーグルで「経団連」と検索すると予測変換候補に「いらない」と出てくることにも注目です。多くのメディアは、経団連が就職活動の前倒しを要求したりすると批判的論調で報じます。学生の「困りますよね」「勉強に身が入らない」といった声を報じる。経団連の会長には大企業の社長を経験したような人が毎度なるわけで、どうしても経団連自体が「悪の既得権益富裕層集団」といった扱いになってしまう。

 一方の医師会は「医療については素人の我々に、素晴らしい提言をしてくださる」という扱いに。医師会をありがたがる風潮はただの理系コンプレックスです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年12月10日号 掲載

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