小池都知事、「豊洲市場」のクラスター感染にはお咎めナシ 「夜の街」に全責任を押しつけ

小池都知事、「豊洲市場」のクラスター感染にはお咎めナシ 「夜の街」に全責任を押しつけ

肝煎りは守り、叩きやすきを叩く

■飲食店経営者「小池都知事は許せない」


 東京都の小池百合子都知事は、都内の飲食店に夜10時までの営業時間短縮を要請している。一方で豊洲市場で起こったクラスター感染については他人事。メディアに責任を追及されかねない豊洲のクラスター発生には目をつぶり、叩きやすい飲食店に圧力をかけることで世間のガス抜きをしているのだ。

 ***

「師走は去年までは、忘年会の二次会などでたくさんのお客さまに来ていただいていましたが、ご覧のように今年はサッパリです」

 と、東京は青山のバーで従業員が肩を落とす。事実、金曜日の晩なのに、記者のほかに客はいない。

「僕らは生活がかかっているので、店内は備品からなにから消毒を徹底しています。家族も、帰宅したらまずシャワーを浴びるとかして、万が一にも僕が感染しないように気をつけてくれています。だから、この店からは1人の感染者も出していません。それでも“夜の街”としてひとくくりにされ、困難な状況に追い込まれている。売り上げは例年の12月の1割か2割。このままでは店がもちません。僕が知るだけでも、夜の街の従業員が2人自殺しました。そういうことに、もっと目を向けてほしい」

 1店40万円の協力金と引き換えに、12月17日までの20日間、飲食店に夜10時までの営業時間短縮を要請していた東京都の小池百合子知事は、その期間を来月11日まで延長した。新宿区でショットバーを営む男性は怒りを隠さない。

「飲食店は2月と8月が暇で、12月は逆に忘年会とかも重なって、売り上げも暇な月の倍にはなる。12月に稼げないと経営も生活も成り立ちません。でも今年の12月は、40万円の協力金を足して、やっと2月や8月の売り上げに届くかどうか。こうして、僕らに負担を押しつけながら、豊洲市場では160人も感染者が出ても、クラスターと認めないんですね。叩きやすいところは徹底的に叩いて、自分の息がかかったところには甘いのは、許せません」


■豊洲のクラスター感染は無視


 たしかに新型コロナウイルスの新規感染者数は、都内で直近1週間の平均が500人を超えるなど、増えてはいる。だが、そうはいっても、感染者数も死者数も欧米の数十分の一程度だ。それでも医療が崩壊しうるなら、それを防ぐ対策は必要だが、有効なのは本当に飲食店への時短要請だろうか。その前に小池知事の二枚舌も問われるべきだろう。

 というのも、豊洲市場で働く3500人にPCR検査が行われ、バーの経営者が指摘したように、161人の感染が判明した。ところが小池知事は「自主的に検査を受けられた結果だと思います」などと他人事のように語るのみで、クラスターと認めないのである。

 上田令子都議が言う。

「都は豊洲市場での感染は“散発的”“感染者が所属する会社が違う”などと言います。しかし、搬入から出荷まで一定の温度管理下で行える豊洲市場は、密閉性が高い。仲卸業者が並ぶエリアでは各人が至近距離になり、現に隣同士の業者で複数名が感染した例もある。マスク着用も徹底しているとは言いがたく、競りでは大声を出すし、買いにくる人は小池知事がターゲットにする飲食店の人たちが多い。感染が広がる条件はそろっていました。ところが小池知事は、夜の街にはすぐに“クラスターが出た”と警報を出してきたのに、豊洲にはクラスターを認めません。夜の街でだけ犯人捜しをするのは、非常に問題。ご都合主義で都民を愚弄しています」

 小池知事は「自主的に検査を受けられた結果」と強調するばかりだが、東京都の関係者が指摘する。

「今回の大量検査には都の補助金が出ています。中央卸売市場活性化支援事業といい、仲卸が販路を多角化するなど事業を拡張したい場合、都から補助金が出る仕組みが豊洲にはある。3千人ものPCR検査は、市場の予算では賄えないので、この支援事業を活用していて、都が総額の5分の4を負担します」

 むろん、豊洲の流通を止めてはいけない。だが、クラスターの発生を認めれば、メディアが知事の責任を問う。彼女はそこで、豊洲市場を止めてはいけない理由を毅然として説明し、クラスターの防止策を打ち出すべきなのだ。ところが責任を問われたくない余り、豊洲の感染拡大には目をつぶり、叩きやすきを叩いて世論のガス抜きをしているとしたら、罪が重すぎる。

「週刊新潮」2020年12月24日号 掲載

関連記事(外部サイト)