飲食店で塩を追加するとキレられ… 「追加調味料は失礼」な風潮(中川淳一郎)

飲食店で塩を追加するとキレられ… 「追加調味料は失礼」な風潮(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 先日、某大手メーカーを早期退職し、セミリタイアしたイケメン(50)の家に行きました。博多の繁華街にあるマンションのオシャレな一室、彼が次々と繰り出す料理がいずれも絶品で、唸るほどのうまさでした。

 サラダ、ブロッコリー、蒸した芋、チーズ、生ハムに始まり、牛筋煮込み、ローストビーフ、そしてリゾット(芯が少し残っていて、コレがいいんだ!)と続いたのですが、なぜこんなにおいしかったかといえば、多分彼が大酒飲みだからだと思います。私も大酒飲みなのですが、出てくる料理がことごとく酒のつまみとしてぴったりの味付けになっているのです。

 以前、老舗のビアホールの取材をした時、味付けについて聞いたところ、店主は「ウチは下町ということもありますが、ビールに合うよう少し塩っ気を多くしています」と言っていました。だからあんなにビールを頼んでしまうのか!

 今や時代は「減塩」です。インスタント味噌汁にも減塩タイプがありますし、とにかく塩っ気は高血圧や動脈硬化の原因になる、とばかりに悪者扱いされている。ただ、私、元々低血圧で、上が90、下が65、みたいな感じなんですよ。

 だから、もう少し血圧を上げてもいいのかな、とばかりにさまざまな料理をしょっぱくするのですが、どうもこれが家の外では評判が悪い。焼鳥屋で「塩」を頼んだところ味が薄いため、追加の塩を小皿に入れて下さい、とお願いしたらいきなり店主はキレる。「オレのつけた味にお前は不満があるのか!」と。

 いや、あなたの焼き技術は素晴らしいけれど、あなたが万人向けに仕立てた塩っ気だと私には弱すぎるのです。バカ舌で申し訳ありません! というだけなのですが、私の「塩要求」は料理人のプライドをズタズタにしたのでした。

 味覚なんて人それぞれなのですが、「追加調味料」というものは失礼だと思われる風潮はありますね。しかし海外では違う。アメリカでレストランに行くと塩・胡椒・タバスコ・唐辛子などが席に設置されており、自由に味付けができる。タイでも唐辛子入りのナンプラーを所望するとすぐに出してくれる。つくづく日本人は「ルール」が好きなんだな、と思いました。

 そして、マクドナルドですよ。私は「朝マック」が大好きで、ソーセージエッグマフィンとハッシュポテトを「持ち帰り」にし、ビールのつまみにします。より「つまみ度合い」を上げるには、「シャカチキ レッドペッパー」の粉末を30円で追加します。

 しかし、店によっては「これは『朝マック』の時間帯が終わった10:30以降でなくては売れない」と言われる。別の店ではバイトの方が困惑しながら店長とおぼしき人に相談したところ、店長は30円で売ってくれ「こんな食べ方があったんですね。新しい発見です」と言ってくれました。

 当然朝と昼夜でメニューが違うので、昼に「ソーセージエッグマフィンをください」とは言わぬものの、朝に粉末は売ってもいいんじゃないかなぁ……。恐らくマニュアルではダメでも売ってくれる店もあるわけで、個々人の判断に委ねている部分はあるのでしょう。でも、あの粉末、朝もぜひ売ってくださーい!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年12月24日号 掲載

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