新型コロナよりはるかに高い致死率の「鳥インフルエンザ」に警戒せよ

新型コロナよりはるかに高い致死率の「鳥インフルエンザ」に警戒せよ

鳥インフルエンザ(※写真はイメージです)

 新型コロナウイルスの世界の累計感染者数は2020年12月27日、8000万人を超えた。感染力が強い変異種が最近世界各地で見つかっていることから、世界の感染者数は今後一層増加することが懸念されている。

 日本でも先月12月下旬から連日のように感染数が過去最高を更新し、医療関係者から「医療崩壊」を危惧する声が上がっている。

 2021年以降も新型コロナウイルスのパンデミックに悩まされることが確実視されるようになった年末の12月27日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「新型コロナウイルスは最後のパンデミックではない。流行時に資金を投じても次のパンデミックには備えない。危険なほど近視眼的な対応を繰り返している」と異例の非難声明を出した。

 WHOはこの2カ月前に「新型コロナウイルスのように動物を宿主とし、人への感染の恐れがあるウイルスは現在、最大85万種存在する。人への感染の恐れがあるウイルスが毎年5つ前後発生し、そのいずれもがパンデミックに発展する可能性がある」との報告を出したにもかかわらず、各国政府の対応が改まらないことに腹を据えかねたのだろう。

 1918年のスペイン風邪以降、世界はさまざまなパンデミックに見舞われてきたが、筆者が最も恐れているのが「鳥インフルエンザ」である。

 欧州から飛来した渡り鳥が「運び手」となって、日本全国の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が相次いでいる。昨年11月に香川県で感染が確認されて以来、今シーズンの殺処分件数は約460万羽(昨年12月27日時点)となり、過去最高を更新し続けている。被害を引き起こしているウイルスはH5N8型だとされている。

 インフルエンザウイルスの種類は、細胞に侵入する際に鍵の役割を果たすヘマグルチニンと呼ばれるタンパク質(略称はHA)と、感染した細胞からウイルスが脱出する際に重要な役割を担うノイラミニダーゼ(略称はNA)によって分類されている。HAは16種類、NAは9種類あるとされている。

 世界で流行している季節性インフルエンザはH1N1型とH3N2型である。季節性インフルエンザは人の上気道(鼻腔から咽頭まで)や気管でしか増殖できないことから、主な症状は呼吸器疾患である。

 鳥インフルエンザウイルスは、基本的には鳥と鳥との間で感染するウイルスだが、ごく稀に人に感染することがある。感染した場合、全身で増殖することから激烈な被害をもたらし、致死率が極めて高いとされている。
 
 H5型の鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の人への感染が最初に報告されたのは1997年5月である。香港に住む3歳の男の子が、激しい咳と高熱で入院し、2週間後になくなった。香港での流行以降、世界中に感染が広がり、累計の死者数は500人を超え、致死率は40%と極めて高かった。

 H5型のインフルエンザウイルスは現在、H5N1、H5N2、H5N6、H5N8などの型が世界各地の鳥の間で流行している。

 H5型の鳥インフルエンザウイルスの人への感染力は現時点では弱く、感染した大半の事例は鳥と濃厚接触したことが原因だとされている。

 しかし専門家の中には「現在のH5型の鳥インフルエンザに数カ所の遺伝子変異が起きれば、強い病原性を持つヒト型ウイルスに変化しうる」と危機感を露わにしている者がいる。

 これまで人から人の間での強い伝染能力を持っていなかったウイルスが変異して、新たに人への感染能力を獲得したらどうなるのだろうか。ほとんどの人が、そのウイルスに対する免疫を持っていないことから、世界全体に流行が広がり、患者は重症化する。新型コロナウイルスの場合をはるかに超える深刻な被害が発生することは確実なのである。

 国立感染症研究所でインフルエンザウイルス研究センター長を務めた田代眞人氏は、「先進国での致死率は7・5%前後、途上国では10%を超えるだろう」と想定する(新型コロナウイルスの日本での致死率は1・5%、世界全体では2・2%である)。


■日本の被害は


 日本での被害はどうなのだろうか。政府は「新型インフルエンザの死者数は64万人に達する」と想定している(致死率は2%と仮定)が、田代氏は「最悪の場合、日本で最大200万人の死者が出る可能性がある」と主張する。

 日本では季節性インフルエンザで亡くなる人は毎年1万人程度いるが、新型インフルエンザでは、その200倍の死者が出るかもしれないというのである。

 感染者について田代氏は、「最悪の場合、4人に1人、約3200万人の日本人が感染する」との予測を立てているが、新型コロナウイルスの感染者数(20万人超)の150倍以上の感染者が発生すれば、医療崩壊間違いなしである。

 昨年12月27日、「謎の感染拡大〜新型ウイルスの起源を追う」というタイトルでNHKスペシャルが放映されたが、その中で専門家が異口同音に「中国における新型コロナウイルスの人への感染は、中国政府の発表より2カ月早かった可能性がある。感染の初期段階の把握に失敗すると新型コロナの二の舞になる」と強調していたことが印象的だった。

 中国湖南省の衛生当局は12月20日、「永州市の女性1人がH5N6型の鳥インフルエンザに感染した」と発表した。

 中国ではH5N6型の感染者が過去に死亡した例があるが、当局によれば「感染者は人工呼吸器が必要な状態だが、容体は安定している」という。その後の経過は明らかになっていないが、新型コロナウイルスのパンデミックの二の舞を踏まないためにも、国際社会は中国に対して、本事案についての情報公開をこれまで以上に強く求めていくべきではないだろうか。

(参考文献)「ウイルス大感染時代(NHKスペシャル取材班、緑慎也著)」(KADOKAWA)

藤和彦
経済産業研究所上席研究員。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、2016年より現職。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月6日 掲載

関連記事(外部サイト)