高齢男性こそ「極上の孤独」を実践する存在 昼間のスーパーで考えたこと(中川淳一郎)

高齢男性こそ「極上の孤独」を実践する存在 昼間のスーパーで考えたこと(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 自分の将来が少し不安になる光景を日々見続けております。オレは将来暇な孤独老人になってしまうのか! と。長らく住んでいた渋谷ですれ違う人の多くは若者でした。遊びに来た人、仕事する人、ジョギングする人(20〜40代がほとんど)もよく見かけていました。

 しかし、現在住んでいる佐賀県唐津市で日中に外ですれ違うのは高齢者がかなり多いんですよね。私のようなフリーランスは日中からスーパーで買い物できる状況にありますが、午前11時、ザッとしたイメージはこんな割合です。

 若い女性(ないしは小さな子連れ)=15%/中年女性=20%/高齢女性=50%/若い男性=皆無/中年男性=私一人/高齢男性=15%

 12時台になると、弁当を買いに、近くの市役所の職員や作業服を着た若い男性などがやってくるため、若者・中年は増えますが、10時〜11時、14時〜17時ぐらいだと上記のような割合になりがちです。どう見ても中年の男など私一人のため、不審者扱いされていないか心配になってしまいます。しかもビールを買っているのだから余計。

 よく行くスーパーは洋菓子店、衣料品店、靴屋、クリーニング店、美容室、定食屋、ベーカリーも揃っており「小さなイオン」みたいな感じ。となれば、多くの人が集まるのですが、ところどころに椅子があるんですよ。また、小さなフードコートもあり、ここでは焼きそば、たこ焼き、ハンバーガー、ソフトクリーム、今川焼(こちらでは「大判焼き」)を売っている。

 ここを11時台後半に通る度に高齢女性4〜5人が井戸端会議をしているんですよ。全員マスクをし、紙コップに入ったお茶を飲みながら。そして私がスーパーでの買い物を終え、12時5分ぐらいに通ると皆さん焼きそばを食べている。近くの席ではこれまた高齢女性2人がクリームソーダなんかを飲んでいる。

 一方、高齢男性はフードコートには入れず、通路に設置された椅子にポツンと座っている。スーパーの中でも焼きサバ弁当と焼酎を買っていたりしている。

 これに私は将来の自分の姿を重ね合わせ、恐怖感を覚えたのです。しかし、元NHKアナウンサーでベストセラー作家・下重暁子さんも『極上の孤独』という本で孤独の貴重さを説いたじゃありませんか! 恐れる必要はない!

 この本は発売後すぐに読んだのですが、「モーニングショー」(テレビ朝日系)で取り上げられた時、コメンテーターの玉川徹さんの一言にハッとしました。

「この人、全然孤独じゃないですから!」

 そうなのです、下重さんってエッセイの連載もあれば、本もバンバン出しているし、「徹子の部屋」(同)にも出るし、「とくダネ!」(フジテレビ系)のコメンテーターまで務めている。常に「求められている」人なわけで、84歳にしては出会いは多いでしょう。同書の中でも軽井沢の別荘で孤独に過ごした話が出たりしますが、庶民は軽井沢に別荘は持てません!

 となると、玉川さんの発言が重みを増すとともに、一人ぼっちの高齢男性こそ「極上の孤独」を日々実践しているのかも、なんて思うのでした。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2020年12月31日・2021年1月7日号 掲載

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