事件現場清掃人は見た 母娘無理心中で今も忘れられないブランド品“1000万円の山”

 孤独死や自殺などで、遺体が何日も放置された部屋は悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが特殊清掃人の役目である。『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)の著者の高江洲敦氏は、2002年からこの仕事を始め、これまで3000件以上の現場を手がけた。今回は、3年前に起きた母娘の無理心中事件について聞いた。

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 80代の親が50代のひきこもりの子どもを養う「8050問題」。2019年3月に発表された内閣府の調査によると、40歳から64歳までの中高年ひきこもりの数は、推計で61万3000人にも達するという。今回紹介するのは、40代のひきこもりの娘を刺殺して、自らも命を絶った70代の母親のケースである。

「東京近郊の一軒家で、事件は起きました。母親が2階の部屋で眠っていた娘の胸を包丁で刺し、その後、1階の居間で自身の首を包丁で切り裂いたのです」

 と語るのは、高江洲氏。

 もちろん、高江洲氏が遺族の依頼で現場へ駆けつけた時には、遺体はすでに運び出されていたが、事件の凄惨さを目の当たりにしたという。

「現場には遺体の腐敗臭はありませんでした。ただ、血痕の量がすさまじかったですね。娘が寝ていたベッドは血で真っ赤に染まり、1階の居間の壁にも、沢山の血痕が飛び散っていました」

■“買い物依存症”


 8050問題は、いまや大きな社会問題ではあるが、親が病気などで子どもより先に亡くなるケースが多く、中には遺体が発見されるまで、親の死体と暮らす子どももいる。無理心中するケースは極めて少ない。

「娘は大学卒業後、数年間会社勤めをしていましたが、仕事がうまく行かず、退職して実家でひきこもるようになったそうです。父親はかなり前に亡くなり、母親と2人で暮らしていました。妹もいますが、結婚して家を出ていました」

 娘は20年以上、ひきこもっていたそうだが、母親はなぜ、無理心中を選んだのか。

「亡くなる10年前から娘は“買い物依存症”になっていたのです。彼女は自尊心が高くおしゃれだったそうです。身の回りを高級ブランドでかためることで、自尊心が満たされたのかもしれません。結婚せず引きこもってしまったことにコンプレックスを感じ、買い物で心の隙間を埋めていたのでしょう」

 実際、彼女の部屋にはグッチやヴィトン、エルメスなど、ハイブランドの洋服やクツ、バッグが山のようにあったという。

「ブランド品は、全部で300点以上ありました。金額にして1000万円は優に超えていると思います」


■ケンカが絶えなかった


 娘の両親は、元々農業を営んでいたという。

「畑など、土地を所有していたようですが、娘がブランド品を買い漁るので、土地を手放した可能性がありますね。普段からケンカも絶えなかったそうです」

 ブランドを買い漁る娘のせいで家計も苦しくなり、母娘は無理心中を図ったようだ。

 残ったブランド品はどうなったのか。

「妹さんが処分したいと言うので、私がすべて買い取りました。実を言うと、遺族が引き取らないブランド品を買い取ることはたまにあります。事故現場の家を買い取って、転売したこともあります」

 内閣府によると、15歳から64歳までのひきこもりの数は115万人にものぼる。うち、半数以上が40歳以上という。長期間のひきこもりで、今回のような凄惨な事件が起こる可能性もあるのだ。

週刊新潮WEB取材班

2021年1月12日 掲載

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