新型コロナ、来年には50〜60%が抗体保有か、ハーバード大研究 「通常の風邪へ」

■「既存のコロナウイルスとは52年間付き合い続けている」


 スペイン風邪など、人類がこれまで経験してきた感染症は、流行の波を繰り返しながらも、数年で収束している。ハーバード大の研究では来年には半分以上の人が抗体を保有するようになるという。また、インドではロックダウン解除後、収束への動きが見られるのだ。

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「新型コロナウイルスとの付き合いは、今後何十年も続くと思います」

 と言うのは、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授である。

「感染者が多い欧米では早く落ち着くかもしれないし、集団免疫を獲得するかもしれません。しかし、そもそもコロナに対して集団免疫を獲得できるかどうかわかりません。4種類ある風邪のコロナウイルスとは、1968年に発見後、52年間も付き合い続けているんです。うまく付き合っていくしかありません」

 だからといって、気張る必要もないという。

「緊急事態宣言も、延長する意味があるのか検証してほしい。感染の原因はどんちゃん騒ぎで、人の流れを止めても収束スピードに影響はありません。重症者や死者が増えているから延長というのもおかしな話で、感染して発症するのに5日、重症化に10日。必ず遅れて増えるので、新規感染者が減っている以上、必ず下がっていき、心配ありません。今後どんどん暖かくなるので、いますぐ宣言を解除しても、感染者が増えたりはしないでしょう」


■2022年ごろには50〜60%の人が抗体をもつ


 ことさらゼロをめざす必要がない理由は、ほかにもある。東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「スペイン風邪や香港風邪など、人類がこれまで経験してきた感染症は、流行の波を繰り返しながらも、波が徐々に低くなり、数年で収束しています。新型コロナウイルスも同様に、数年で通常の風邪やインフルエンザと同様の感染症になっていくと思われます」

 と言い、根拠を示す。

「昨年4月、ハーバード大が新型コロナ収束までをシミュレーションし、『サイエンス』誌に論文が掲載されました。新型コロナは1年に3〜4回流行の波を繰り返し、2022年ごろには50〜60%の人が抗体をもち、流行の波もごく小さくなる、という内容です。医療体制が逼迫してきたらロックダウン等の措置をとり、解除後に波が少し高くなり、それを繰り返すという想定で、日本の感染状況もこの1年、このシミュレーションと似た動きを辿っています。私自身、これに近い現実を迎えるのではないかと考えていて、ワクチンの接種が進めば、収束はもっと速まるかもしれません」

 ワクチンの話が出たついでに、ワクチンへの心配事も解消しておきたい。

「ウイルスの変異を分析し、マイナーチェンジを加えていく、といったことが考えられます。インフルエンザのワクチンも、毎年流行りそうなウイルスを予測して、A型、B型それぞれに2種類ほど用意しているんです。また、新型コロナのmRNAワクチンでアナフィラキシーショックやアレルギー反応を引き起こすのは、ポリエチレングリコールといって、mRNAを包む糖質でできたカプセルだといいます。mRNA自体を変化させても、副反応を起こす可能性が高まることは考えにくいでしょう」(同)

■インドはロックダウン解除で収束へ


 波を繰り返す前に、収束に近づいた国もある。インドである。国内有数の大都市、バンガロールに住む日本人が言う。

「昨年3月下旬、厳重なロックダウンが始まりましたが、失業者が激増して暴動も起き、7月に解除。新規感染者は1日9万人台になりましたが、経済は止めなかった。しかし次第に感染者が減ってきたんです。飲食店の時間制限も昨年末にはなくなり、今年に入ると国産もふくめてワクチン接種も急速に進み、政府は1月28日、感染拡大に歯止めがかかったという見解を示し、各地で勝利宣言が出されています。みんなマスクを外してどんちゃん騒ぎ、病院のコロナ対応ブースも消えました。コロナ前と同じ暮らしが戻りました。感染者は若者が多く、重症化せずに感染し続けて免疫を獲得した、と報道されています。実際、インドは人口の50%以上が25歳以下で、高齢者が少ないんです」

 ただし、人口13・5億人、3密だらけの国の事例である。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏は、

「集団免疫に近づいているといっても、大都市圏だけでなくインド全土でそう言えるのか、まだわかっていません。また、感染拡大が収まっているといいますが、どれだけ感染者をとらえられているのか、という疑問も残ります」

 と懐疑的だ。現に日々の新規感染者は、いまも1万人前後はいる。ただ、一時の1割に近い。もし高齢者が少なければ集団免疫ができやすいなら、日本も高齢者らにワクチンを打ってしまえば、新規感染者や死者が激減する可能性も、なくはなさそうだ。


■「市民生活を全部犠牲にしていいのか」


 最後に、「ゼロコロナ」の虚しさを示す数字を紹介したい。高齢者が新型コロナに感染すると、肺炎を引き起こして命が危険にさらされる、という話自体はウソとはいえないが、掲載の表で明らかなように、昨年、肺炎で亡くなった人は、それまでの3年間にくらべて激減しているのである。

 厚労省によれば、昨年の肺炎死には、コロナ由来のものはふくまれないそうだが、そもそもコロナでの死亡者数は9月までに1600人程度。それをみな足しても、例年より1万人は少ない。これまで400人を超えるコロナ患者を診てきた浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「コロナ以外の肺炎でも、誤嚥性肺炎は関係ありませんが、人から人へ感染するマイコプラズマ肺炎などの患者さんは、減っている感覚があります。インフルエンザをはじめヘルパンギーナなどほかの感染症も同様で、マスク、手洗いを徹底している効果ではないでしょうか」

 と話す。ある意味、命は例年以上に守られているのである。次の医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授の意見に耳を傾けたい。

「コロナ以外の死因で亡くなる方が、日本の死者のかなりの割合を占めるのは事実。肺炎死者数などの数字と新型コロナ関連のデータを比較し、どこまでコロナ対策をするか検証する必要はあるでしょう」

 老年精神医学が専門の精神科医、和田秀樹氏が言う。

「毎年肺炎で10万人、インフルエンザは関連死をふくめ1万人が亡くなりますが、コロナでは6千人ほど。では、肺炎やインフルで死なないために会食を禁止にしたりしたか、という話です。交通事故死を減らすために、車を禁止にしたりしませんね。なにかを制限するときは、人間らしい生活と心の豊かさとのバランスを考えなければいけません。そう話すと“先生はコロナが怖くないのか”と言われますが、私だってインフルが怖いからワクチンを打つし、交通事故が怖いから左右を見て気をつけます。怖がらなくていいのではなく、正しく怖がりましょうという話。そのとき市民生活を全部犠牲にしていいか、ということです。現実には怖がりすぎた結果、私が診ている高齢の患者さんも、歩けなくなったりし、それが1年も続くと認知機能に衰えが出てきます」

「週刊新潮」2021年2月18日号 掲載

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