テキヤの親分が語る「初詣は商売成立せず、花見も花火も絶望的、地方に出かけても望み薄」

■一番の稼ぎ時が…


 新型コロナウイルスの感染拡大によって、国民の日常生活や企業の経済活動などが制限されて1年以上となる。それは、初詣や花見、夏祭りなどの会場に露店を出して商売をしているテキヤも直撃し、彼らは苦境に立たされているという。暴力団の動向に詳しいノンフィクションライターの尾島正洋氏がレポートする。

 定番のお好み焼きや綿菓子などの露店は初詣スポットに賑わいを添えているが、首都圏で幅広くテキヤの商売をしている指定暴力団幹部は、「今回の初詣は全くダメだった。今後の花見なども見通しは暗い」と話している。

「毎年、大晦日から正月にかけて神社仏閣の周辺では、初詣客を相手にした商売で年間でも一番の稼ぎ時。しかし、今回の年末年始はコロナ禍の影響で全くダメだった。売り上げは例年の半分以下、3分の1程度となってしまった。そもそも、『密』を避けるために出店数が大幅に制限された。出す露店の数が少ないうえ、客は来ないで参った」

 この指定暴力団幹部によると、
 
「全国で最も多い初詣客が参拝する東京の明治神宮が大晦日の早い時間に門を閉めてしまって、夜の8時や9時には店に寄ってくれる人がほとんどいなくなった。本来なら客がどんどん来てくれる時間のはず。商売繁盛がいつものことだったのだが…」

 例年であれば、神社仏閣の参道で大晦日は夕方の午後6時ごろから店を開いて夜通し営業をしてきた。

「大晦日は一晩中、お客さんが来てくれる。元日を迎えてさらに参拝客が増えて、途絶えずにカネを落としてくれる。元日は夜の9時ごろまで寝ずに商売。正月の3日ぐらいまではかなりな稼ぎになる」

 ベビーカステラ、お好み焼きなどの粉ものは、材料のメーンが小麦粉と水のために儲けが大きいという。

■地方に出かけても


 さらに、前出の幹部は、「最も儲かるのは綿菓子だ。製造機さえあれば、材料は砂糖だけ。利益率は非常に高い。ベビーカステラも砂糖の配分をうまく調合できれば、お客さんがついてくれて非常に儲かる」と説明する。

 多くの参拝客が集まる神社仏閣では、各店舗の場所を調整する地域の暴力団に「ショバ代」と呼ばれる出店料をテキヤが払うことになる。

 大晦日から正月3日までの初詣では3〜4軒を出すこともあり、売れ行き好調であれば1軒で1日に100万円ほどの売り上げがあるという。

 しかし、「今年は全くダメ。この状態が続けば、やって行けないところもあるのでは」とも明かした。

 今年2月に入って新規感染者の数が減少傾向となり、17日からは先行して医療従事者へのワクチン接種が始まっている。コロナ禍収束の切り札とされているわけだが、この幹部は、「今年は花見も期待できない。恐らく各地で中止だろう。ワクチン接種が始まったといえども、国民全体に行きわたるのはまだまだ先のこと。花見シーズンも稼ぎ時だが、昨年に続き今年も話にならないのではないか」と肩を落とす。

 幹部が述べるように花見についても見通しは明るくなく、東京都千代田区と観光協会は1月下旬、皇居近くの千鳥ヶ淵で毎年開催している「千代田のさくらまつり」の中止を早々に決めた。

 このほか、各地の花見の名所でもイベントの中止が検討されている。

「昨年は上野公園など、花見がほぼすべて中止となった。今年、緊急事態宣言が出されていない地方に出かけても、都内と同様に密を避けるために出店数は制限されるはず。露店を出すには準備がいる。花見で店を出せるかどうか分からずに準備するのであれば、何もしないほうが得策。昨年は夏の隅田川花火大会も中止だった。今年は花火も期待できないのではないか」

 博徒を名乗る指定暴力団幹部も「うちのシマ(縄張り)の神社仏閣では、大晦日の参拝は例年通りにあったが、参拝客が少なく商売としては全く成り立たなかったと知り合いのテキヤが嘆いていた。今後もコロナの状態が改善されなければ廃業するところが次々と出てくるかもしれない」と話す。

■異例のこと


 新型コロナウイルスの感染について、高齢者や基礎疾患を抱える人は特に症状悪化が危惧される。

 昨年から密を避けることが求められてきたことは、暴力団業界でも同様だ。

 前出の博徒系の幹部が状況を説明する。

「最近はヤクザになりたいという若い者が少ない。一般社会同様に自然とヤクザの業界も少子高齢化となっている。高齢者が多く集まって密の状態になると非常に危険。多くの組織では定例の会合なども延期や中止が続いている」

 昨年末には指定暴力団稲川会では以下のような、「総本部御通知」が出された。

《『新型コロナウイルス』感染者、再急増により年末年始行事の十二月二十七・二十八日『稲川会納会』 新年一月七日『稲川会年頭挨拶』を感染拡大防止対策として『中止』と致します(中略) 令和二年十二月二十二日 稲川会総本部発》

 毎年の恒例行事を重んじる暴力団組織としては異例のことと言えそうだ。

 首都圏に拠点を置く別の指定暴力団の幹部が、コロナ禍への政府の対応を批判する。

「昨年来、政府の対応がその場しのぎで右往左往だ。安倍政権の時に、初期の対応で腰が引けていた。オリンピックの延期が決まったあたりから自粛要請などに本格的に動き出したが遅い。全国一律での学校閉鎖などは本当に必要だったのか疑問だ」

 さらに、

「コロナ感染拡大が止められなくなったあたりからは有事の段階といっても過言ではなかった。平時ではないのだから強い姿勢が必要だったが、有事としての認識がなく対応が後手に回っていた。引き締めが中途半端だから、再度の感染拡大を招くことになった。菅政権になってもGOTOキャンペーンなどで混乱続きだ」

 社会の様々な方面にまで影響が及んでいる、コロナ禍の収束のめどはまだ先のようだ。

尾島正洋
1966年生まれ。埼玉県出身。早稲田大学政経学部卒。1992年、産経新聞社入社。警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、主に社会部で事件の取材を続けてきた。2019年3月末に退社し、フリーに。著書に『総会屋とバブル』(文春新書)。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月23日 掲載

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