橋本聖子新会長「セクハラ問題」 高橋選手に被害意識がなくてもセクハラ成立の可能性あり 弁護士の見解は

■「パワハラ」という解釈も成り立つ立場


 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子参議院議員が選出された。前任、森喜朗氏の問題視された発言の性質から、「次は女性がいい」という声は当初から強く、早くから名前もあがっていたので、その点では意外性はないだろう。

 ただし、選出前から、そして選出後も消えないのが「セクハラ」問題である。

 2014年開催のソチ五輪閉会式後のパーティーで橋本氏が男子フィギュアスケートのスター、高橋大輔選手に無理やりキスをした、セクハラだ――「週刊文春」が報じたこの一件は、生々しい現場写真が添えられていたこともあり、大きな話題となった。女性側からのセクハラというのも有名人では珍しいという事情も反響を大きくした要因だろう。また、当時彼女は日本スケート連盟会長という、いわば高橋選手の上位の立場でもあるので、パワハラという解釈も成り立つ。

 もっとも、この件は当時日本オリンピック委員会では特に問題にはしなかった。というのも、橋本氏も高橋選手も、酒の席のことであって「セクハラ」ではないと主張したからである。「被害者」とされる側が「強制ではない」という以上は、セクハラ認定はされない、ということだろう。

 今回の、「セクハラを報じられた人物が、女性蔑視発言のあとに登場していいのか」という批判を承知で選出した背景にも、「被害者はいないから」という考えがあるのかもしれない。会長就任会見では、この件は質問され、橋本氏は反省の弁を改めて述べていた。


■被害者側が“不快”に思ったかどうかが重要なポイント


 それにしても、法律的に見た場合、本当にこの一件はハラスメント認定されないのだろうか。数多くのハラスメント相談に乗ってきて、『パワハラ問題―アウトの基準から対策まで―』等の著書もある弁護士の井口博さんに法律家としての見解を聞いてみた。

「セクハラが成立するには、被害者側が不快に思ったかどうか、『不快性』が重要なポイントになります。当時、高橋選手が被害感情はないと言っているとすると、それがないということになりますから、一見、セクハラにならないように思えます。が、必ずしもそうではありません。

 まず、実際は不快であっても、あとのことを恐れ不快と言えない場合は、実際には『不快性』があるのでもちろんセクハラは成立します」

 ただ、この点はまさかいまさら高橋選手が「あの時、本当は嫌だったんです」などと告白するはずもない。その意味では橋本氏はセーフとなるのだ……。

「必ずしも当事者の発言のみで判断するわけではありません。『不快性』は平均的な男性あるいは女性を基準にします。そのときの状況からして平均的男性(女性)であれば不快感を持つような行為であればセクハラが成立しています。重大なセクハラなのに本人が何ともないです、と言っていてもセクハラになる場合もあります。報道で知る限りでは、橋本さんの行為は、平均的な男性が不快に思う可能性は排除できないようにも思えます」

 このあたりも両者の関係性や感覚は外部にはわからないところがある。だからこそ選手側の「セクハラではない」という主張に当時、JOCもこれ幸いと乗ったのだろう。

■「キス魔」の“実績”


 しかし、それ以外のセクハラ成立の可能性を井口弁護士は指摘する。

「周囲の者に対するセクハラが成立している可能性が十分あります。パーティーの場であれば、見ていた人がいたことでしょう。セクハラの要件は相手に不快感を与える性的言動ですが、この『相手』とは定義上、性的言動が直接向けられている者に限定されていません。

 したがって橋本氏の性的言動を目撃した人が不快感を持てば、その人に対するセクハラになります。その人が自分へのセクハラと主張できるのです」

 酔うとやたらとキスをする、なんて逸話を持つ女性は芸能界などにもいるようだ。

 橋本氏に関しても、周囲のすべての人が、「あの人はキス魔だから」という認識を共有して、しかも寛容に受け止めていればセクハラとはならないのだろう。が、「キス魔」と誰もが受け止めるような“実績”があったとすればそれはそれで問題なのかもしれない。

デイリー新潮編集部

2021年2月23日 掲載

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