第二次お一人様ブーム到来 コロナ禍で始まる新しい家族のカタチとは?

第二次お一人様ブーム到来 コロナ禍で始まる新しい家族のカタチとは?

増える「お一人様」(※写真はイメージ)

「前向きに孤独『プロぼっち』 第2次お一人様ブーム到来」

 2月18日付日本経済新聞(電子版)はこのような題名の記事を配信し、「お一人様」が企業のマーケティングの対象として定着したことを報じている。

 たしかに街を歩いたり、メデイアの記事を見ていたりすると、圧倒的に増えたのが「お一人様情報」である。食事を始め、旅情報、ソロキャンプ用テントなど話題は尽きない。

 2010年代半ばに「お一人様ブーム」が始まったとされるが、新型コロナウイルスのパンデミックで多くの人々が「一人の時間をいかに楽しむか」を考えるようになったことで第2次ブームが到来したという。「お一人様」の増加は、少子化という難題につながるが、そのブームはサービス業界にとどまらない。家電業界にも波及している。

 パナソニックは2月16日、「同居人のような雰囲気で、利用者の心を癒やしてくれるロボットを開発し、クラウドファンディングで320台を限定販売する」ことを明らかにした。販売価格は3万9800円、40分間のオンライン説明会の間に80件の申し込みがあったという。ロボットの名前は「NICOBO(ニコボ)」。全長20センチメートルほどの球に近い形で、布に覆われたふわふわの素材、小さな目と鼻、しっぽがついている。重量は1.3キログラム程度、バッテリーで駆動する。話しかけると言葉を真似したり、寝言を言ったり、おならをすることもある。

 これまで機能性が重視されてきたロボット開発だが、このユニークなロボットは、人の優しさや思いやりを引き出す「弱いロボット」を提唱してきた豊橋技術科学大学の岡田美智男研究室との共同研究から生まれた。想定しているターゲットは「お一人様」である。

「日本は高齢者よりも独身者が多い『独身国家』になる」

 このように指摘するのは、独身研究家の荒川和久氏である。

 日本は既に超高齢社会となっており、2040年の高齢者の人口は3900万人に達する。そして、荒川氏の試算によれば、2040年の独身者の人口は4600万人となり、総人口の約5割が独身になるという。

 独身者の人口が急増する主な要因の一つは、生涯未婚率の上昇である。1950年の生涯未婚率は男女ともに1%台だったが、2015年に男性が23%、女性が14%となり、2040年には男性が30%、女性は19%に達すると言われている。

 生涯未婚率の急上昇は、経済の問題よりも、生活のあり方が昔とは大きく変わったことのほうが影響が大きいだろう。現在の日本のように平和で安心して生活できる社会では、結婚しなくても、充実した幸福な人生を送ることはできるからである。生存の恐怖がなくなれば、人々が「お一人様」を志向し始めるというのは自然なことではないかとの指摘もある。


■「生産性がない」に対する「スーパー・アンクル」の研究結果


 足元の状況を見てみると、徐々にマイノリティーになりつつある既婚者から「子供をつくらない独身者が、将来自分の子供の払った年金でのうのうと生きるのは許せない」との批判が高まっている。現状を受け入れることができない既婚者側の「結婚して子供を産め」という主張に対し、「ソロで生きて何が悪いの?」と独身者側が反発、双方のいがみ合いが激化しているが、不毛な対立と言わざるを得ない。

「結婚しない人は生産性がない」という趣旨の国会議員の発言があったが、「結婚していない叔父や叔母が存在するコミュ二ティーのほうが次世代がよく育っている」というカナダの研究結果がある。同性愛者が、甥や姪の子守をしたり、近親者に対して医療や教育などの金銭的な援助をしたりして「スーパー・アンクル」として機能しているという内容である。

「お一人様」の増大傾向が続いても、結婚し子供を産む人たちが一定割合存在することが予想されることから、「お一人様」がこの人たちの子育てをサポートすれば、持続可能な社会が維持できるのではないだろうか。

 お気軽に見える「お一人様」だが、悩みもある。コロナ禍の収束が見通せず、出会いの機会が減った50代の「お一人様」が見合いをしたり、同性の友人とコロナ対策を講じた家に一緒に住もうとしたりしている(1月14日付日本経済新聞)。還暦や定年後が気になり出したシニアが、より良い老後のあり方を模索しようとしているのである。

 新型コロナウイルスの感染者数が多い首都圏を中心に、墓参りが増加するなど寺離れなどの流れの中での「揺り戻し」の動きも起きている(1月22日付日本経済新聞)。新型コロナウイルス感染の不安に苛まれる人々の間で死生観に変化が起きており、「誰もが満足して死んでいける」社会が求められる時代になったのかもしれない。

 戦後日本の家族は「育児」を中心に機能してきたが、育児ではなくお互いの老後をケアするための新しい家族のカタチが求められているのである。

 日本では依然としてサザエさん的な家族(三世代同居)が推奨されているが、現実との乖離が激しく、「ないものねだり」である。血縁に頼らない新たな家族が求められているのだが、生産手段という基盤がなければ、かつての家族のように強固なものにならない。

 昨年12月、議員立法による「労働者協同組合法」が可決・成立した。公布から2年以内に施行されるが、組合員が出資・運営し、自ら働く「労働者協同組合」に法人格を与えるのがこの法律の柱である。3人以上の届け出だけで協同組合が始められることから、介護や福祉、子育て支援など地域の課題に応じた仕事を容易に事業化できるようになる。雇用創出や地域活性化に加え、生産手段を基盤とした新たな家族のカタチとしても今後期待できるのではないだろうか。

(参考文献)
「一人で生きる」が当たり前になる社会(荒川和久他著)」

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月1日 掲載

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