このご時世に「イートイン飲酒OK」のコンビニを発見 改めて感じる“運用”の難しさ

 2019年の軽減税率導入を機に、コンビニに増えた「イートインスペース」。購入した食料品を店内で食べるために設けられた場所だが、周囲の客への配慮か、「飲酒」を禁じているところは多い。コロナ禍の現在では、イートインそのものを閉鎖しているところも多いが、この店はちょっと違うようだ。流通アナリストの渡辺広明氏が、“イートイン飲酒歓迎”の店を取材した。

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 今回視察に訪れたのは、東京都内の某オフィス街にあるコンビニ。

 店内に『〇〇で働く皆さんを応援します!』『帰宅前に1杯飲みたい!当店ではそんなご要望にお答えしてイートイン席での飲酒を可能にしました』と掲げる、なかなか珍しい取り組みを行っている店です。もっともコロナ禍のご時世ですから、このサービスに批判の意見もあるでしょう。お店に迷惑をかけるつもりはないので、詳しい店名は伏せさせてください。3大コンビニチェーンのひとつです。

 訪れたのは金曜日の17時すぎ。

 イートインスペースとして用意されている席はおよそ20席ありました。「飲酒可能時間」として設定されているのは18時から。17時台ではまだ、スペースで勉強をしている学生さんたちや、食事をしている人が多かったのですが、よくよく見ると、ストロング系チューハイを片手に“フライング”で晩酌を始めている私服のお父さんを発見。文庫本を読んでいました。

 解禁時間の18時となると、客層は一気に入れ替わります。

 おそらく近隣で働く人たちの間では、この店舗が飲酒OKであるのは知られているのでしょう。どこからともなくスーツ姿の人たちがやってきて、席はほとんど埋まりました。2、3人はソフトドリンクやお茶を飲みながらPCを開いたり、資料を読んでいる様子ですが、他は主に2人連れの、ビールやチューハイ片手の酔客です。乾きもののつまみも一緒に購入しているのが多いですね。中には売り場のカゴをそのまま持ってきて、席に置いて飲んでいるツワモノもいました。

『当店でご飲酒されるお客様へ』の注意書きには、利用者は1組4名までとなっています。

 私も担当の編集者とともに、ビールとチューハイの缶を開けてみました。たまに「飲酒禁止」のイートインスペースでこっそり飲んでいる方を見かけますが、どことなく、居心地の悪そうなそぶりを見せています(完全に開き直っている方も稀にいますが)。その点、この店ではそんな気を使う必要はなく、堂々と飲めます。居酒屋ではないですからお通し代もとられません。イートインコーナーは軽減税率対象外なので、家に持ち帰って楽しんだ方が安いことは安いのですが、サクッと飲んでいくには良いスペースのように感じました。

■店舗ごとに運用ルールが異なるイートイン


 ご存じのように、緊急事態宣言の対象地域では、飲食店の営業は20時までになっています。その影響で、いま“外飲み”が増えています。たとえば毎日新聞は2月22日付の誌面で「息潜めるサラリーマンの聖地・新橋 飲める場所探して 寒空の公園、昼の居酒屋 /東京」という記事を掲載しました。20時以降にも飲みたい人びとが「公園飲み」をしているという内容です。同様に、2月13日付の京都新聞でも、「20時以降に鴨川の河原で人びとが集まって酒を飲んでいる」と報じられています。

 “コロナ禍なんだから自粛しろ”という意見もごもっとも。ですが、公共のスペースで飲酒することに比べれば、飲酒が許されているコンビニを利用することは、咎められることではないはずです。酒飲みの方たちのニーズにこたえる、あながち悪いサービスではないと思います。

 ただしこちらのお店、もともとは22時まで飲酒OKだったのですが、最近20時までになったそうです。店員さん曰く「本部から注意されまして…」。20時以降は店員さんが声をかけて退店を促し、イートインそのものを閉じていました。

 飲酒オーケーのイートインを訪れ、改めて店舗ごとに運用が異なるコンビニイートインの面白さを考えさせられました。飲酒をOKとしている店はさすがに珍しいですが、ほかにも“緊急事態宣言中でもスペースを開放するのか”“コンセントの使用を許すか”などのルールは、店舗の判断に委ねられています。開放時間もマチマチです。イートインスペースは、19年の軽減税率導入のだいたい5年ほど前からコンビニ店内に作られるようになりました。売上が落ちつつあった雑誌売り場のスペースに取って代わる形です。軽減税率導入から現在の形での運用が始まったと考えると、その存在が世間に浸透して1年半が経ちます。

 利用者側からすれば、チェーンごとに対応を統一してもらったほうが、使い勝手がいい気もします。ただし、イートイン運用の統一の難しさも感じます。たとえば掃除。テーブルを拭くだけと言ってしまえばそれまでですが、人手が足りていない店舗ではその手間をかけるのも難しい。

 店舗のある地域の治安の問題もあります。もう20年以上前になりますが、私はいわゆる“ドヤ街”近くのコンビニで店長をしていました。周辺エリアの店舗では、当時はイートインなんてなかったわけですが、店の前が地域のお客さんたちの“イートスペース”と化し、冬場はたき火も焚かれていたのを憶えています(今となってはいい思い出です)。

 今回視察した“イートイン飲酒OK”の店舗も、比較的客層の良い、ビジネス街にあるからこそ成り立つサービスでしょう。誰も空き缶や袋を席に置きっぱなしにしたりせず、店内のゴミ箱に捨てていました。


■コンビニと「お酒」の在り方の参考に?


 途中、外国人カップルもイートインを利用していました。缶チューハイを手に、つまみ代わりのおにぎりを物珍しそうに観察していることから、まだ日本に来て日の浅い方たちだと思われます。バーやレストランほど敷居が高くなく、軽くお酒を楽しめるという点で、彼らからするとちょっとした「パブ」感覚なのかもしれません。

 私より先に“フライング”で飲み始めていたお父さんは、寝落ちを挟み、2時間ほどで帰っていきました。イートインで飲酒を禁じるのには、こうした“長居”をされたくないお店側の事情もあると思われますが、この店舗では(睡眠OKというわけではないものの)店員さんが注意することもありませんでした。ちょっと不思議なコンビニ体験でした。

 いま、コロナ禍の巣ごもり需要で、コンビニ各社は酒類に力を入れています。例えばセブン-イレブンでは、酒の売り場面積を拡大し、おつまみを手に取りやすくする新レイアウト店を増やしています(「激流」21年3月号掲載 連載「バイヤーズ・アイ」より)。

 アフターコロナの際には、拡充した酒商品を店内で楽しめる、そんな店舗が増えると面白いかもしれませんね。もちろん、お酒はほどほどに楽しく飲みましょう。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月4日 掲載

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