「副反応は出たが、命に関わるものではない」 コロナワクチンを接種した医師の証言、アレルギー反応の心配は?

 いよいよ接種が始まったワクチン。副反応を心配する声も上がるが、実際にワクチンを接種した医師は「命に関わるものではなく、打った方がよい」と断言する。本誌(「週刊新潮」)はファイザー社とモデルナ社のワクチンの副反応リストを入手。さて、あなたはアレルギー反応を起こさずにすむか?

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 東京の1日当たりの新規感染者数は、2月22日までの1週間の平均が317人。新型コロナウイルスの感染者は、着実に減っている。ところが、近畿圏などでは緊急事態宣言解除の方向に進む一方で、首都圏に対しては再延長という声さえ上がっている。

 西村康稔経済再生担当相は当初、解除の基準を「500人」としており、それはとうにクリアされたのに、解除が検討されない現状に、都内のさる和食店店主は、

「示された目標に向けて頑張ったのに、クリアしても無視され、もっと我慢を続けろという。これでは気持ちが折れてしまいます」

 と、怒りの声も上がらぬ落胆ぶりだが、こうなる原因はワクチンにある。菅義偉総理は衆議院予算委員会でワクチンについて、「感染防止の決め手になるもので、なんとしても収束に向かわせたい」と強い意気込みを語ったが、ワクチンに期待するあまり、視野狭窄に陥ってはいないか。

 日本医師会や専門家から、ワクチン接種の前に感染者数を極力減らせ、と意見されると、唯々諾々と従ってしまう総理。だが、ワクチンの接種体制を整えながら、ワクチンが行き届くまでも、ダメージを最小限に抑えるのが筋だろう。ファイザー社製ワクチンの接種が、医療従事者を皮切りに始まったが、高齢者への接種は4月以降になるという。仮に、それまで我慢を強いられた日には、新型コロナ以外による被害が、目も当てられなくなりかねない。

 それについては追って詳述するが、肝心のワクチンに関しても副反応への心配が高まっている。我慢を強いられた末、ワクチンも危険では、希望が失われてしまう。だが、安心してもらうために結論を先に述べれば、ほぼ心配は要らないという。以下にその根拠を示していきたい。まずは、

「私は1月下旬、モデルナ社製のmRNAワクチンの1回目の接種をし、4週空けて2回目を打ちます」

 と話す米国国立研究機関の博士研究員で病理医、峰宗太郎氏が説明する。

「利き腕と逆の左腕に打ち、1日半から2日で接種部に、つったような筋肉痛が出はじめました。腕をあげると痛く、利き腕だったら日常作業がつらかったかもしれませんが、入浴時や就寝中にも気になるというレベルではなく、接種4日目にはまったく気にならなくなりました。同僚にも重い副反応が現れた人は皆無で、1人だけ2回目の接種後、38度の熱が出た職員がいましたが、1日で平熱に戻っています。本人は“コロナにかかったかも”と驚いていましたが、コロナに感染した場合、症状が3〜4日続くことが多い一方、ワクチンの副反応での発熱、頭痛、倦怠感などは、通常1〜2日で戻ります。もし3日以上続くようならPCR検査を受ける、という対応をしていけばいいでしょう」

 現在、日本では、副反応をメディアが逐一報じているが、気にしだせばキリがないということだろう。

「副反応がかなりの割合で出るのは事実で、7〜8割の人が私のように接種部位に痛みを感じ、15〜30%の人が頭痛や倦怠感を覚えています。しかし命に関わるものではなく、1〜2日で収まります。一方、コロナに感染した際の重症化リスクは、全体にならせば10%ほどで、人工呼吸器につながれて死に至ることもあり、味覚や嗅覚障害、髪が抜けるなどの後遺症が出る場合もあります。コロナワクチンはすでに1億回以上接種され、それによって死に至ったケースはまだ報告されていないので、明らかに打ったほうがいいです」

■なぜか多い女性の割合


 軽微な副反応はいいとして、急性のアレルギー反応であるアナフィラキシーショックは大丈夫だろうか。東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授が言う。

「ファイザー製は初回接種を受けた189万人のうち21人、モデルナ製は同じく404万人中10人が、アナフィラキシーを起こしています。ファイザー製では21人中17人、モデルナ製は10人中9人が、過去に食品や薬、ほかのワクチンなどにアレルギーを起こしたことがあり、そのうちファイザーで7人、モデルナで5人が、過去にアナフィラキシーを起こしていました。両社のワクチンでは広範囲に赤い発疹(紅斑(こうはん))や蕁麻疹(じんましん)が出るほか、呼吸がぜいぜいする喘鳴(ぜいめい)、唇や瞼(まぶた)、舌が腫れるなどの症状が出ています。万一、呼吸困難や急激な血圧低下など、命に関わる症状が出た場合は、アドレナリン注射で血管を収縮させるなどの治療が可能です。実際、ファイザー製では19人、モデルナ製では10人全員が、入院治療または救急外来でアドレナリン注射を打っており、死亡報告はありません」

 掲載した二つの表から、2社のワクチンを接種して起きたアナフィラキシーの詳細がわかる。年齢はまちまちだが女性の割合が非常に多く、モルデナは全員が女性だ。両社とも接種した人の6割超が女性だったそうだが、寺嶋教授は、

「現状、個々のアレルギーやアナフィラキシーの経験と、ワクチンによるアナフィラキシーとの因果関係は、確認されていません」

 と語る。だが、たとえばファイザー製の場合、トロピカルフルーツや卵、牛乳、クルミなど、食物にアレルギーを起こしたことがある人が5人、イヌやネコへのアレルギーがある人が1人、アナフィラキシーを起こしたものの、分母は189万人。女性にせよ、かなりの低率であるのは間違いない。峰氏が補って説明する。

「呼吸困難など激しいアナフィラキシーを起こしたことがある人、エピペン(アドレナリン自己注射薬)を携行している人は事前に医師に申告し、接種後30分は医療従事者の目の届くところで待機するなど注意が必要でしょう。ただ、米CDC(疾病予防管理センター)は、花粉症、喘息(ぜんそく)の患者や、食物、薬にアレルギーがある人は、基本的に問題ないと発表しています。注意すべきは、ほかのワクチンでアナフィラキシーを起こした人だとされていますが、ファイザー社製では、そういう人も、ごく一部しかアナフィラキシーを起こしていないので、基本的には接種しても大丈夫です」

 それより問題なのは、

「1回目の接種でアナフィラキシーを起こした場合で、そうなったら、以後は同種のワクチンは絶対に接種してはいけません。そばやナッツのアレルギーと同様に、再びアナフィラキシーを起こしてしまうからです。しかし、ファイザーのワクチンは1度の接種でも90%以上の有効性が確認されており、家族など周囲が2回接種し、本人もマスクや手洗いを徹底していれば、十分な予防になります」

 では、長期的な影響はどうか。峰氏もたびたびそう問われるというが、

「mRNAワクチンは、その可能性はゼロに近い。ウイルスの表面にあるSタンパクの設計図の役割を果たすメッセンジャーRNAは、細胞に取り込まれて20秒から20分で分解され、それをもとに形成されたタンパク抗原も、10日ほどで体内から消えます。体内から消えたのちに長期的な影響を及ぼすとは考えにくく、有効性も安全性も抜群のワクチンといえます」

 一方、日本でも3月にも接種が始まるアストラゼネカ製については、

「人体に無害なアデノウイルスを、Sタンパクの設計図となるDNAのベクター、つまり運び屋としたワクチンです。DNA自体は体内に長く残りませんが、ワクチンを接種すれば、体内にアデノベクターに対する抗体が生成されます。すると、将来、それに似たアデノウイルスに感染した場合、強い免疫反応が起こり、症状がひどくなるかもしれない。また、アデノベクターを使った遺伝子治療が開発されたとき、使ってもいいのかという話になります。とはいえ、そうした可能性は0・1%あるかないか。70〜90%という素晴らしい有効性が確認されており、ハイリスクの方には大きな救いになる。私のスタンスとしては接種推奨です」

 寺嶋教授も同様の懸念を示しながら、こう述べる。

「1回目と2回目で違うワクチンを接種する臨床試験も計画されている。次に接種が必要になるときは、他種のワクチン供給にゆとりができている可能性もあり、アストラゼネカ製を打った人が先々まで不利益を被ることはないと思います」


■9割接種で「ただの風邪」


 多くの新型コロナ患者を診てきた浜松医療センターの矢野邦夫院長補佐は、

「国民の9割にワクチン接種が完了すれば、この感染症はただの風邪も同然になる。システマティックに接種を進められれば、年内にはマスクもせず、普通に宴会ができる日常を取り戻せると期待しています」

 と言って、続ける。

「新型コロナのような新興感染症は、一定数の人が感染して自然免疫を獲得するか、ワクチンを接種して集団免疫を獲得するかしないと収束しません。ワクチン接種を控えたいま、接種が始まるまで感染拡大を抑えることは重要です。しかし、西村大臣は当初、東京の感染者が1日500人を切ることが宣言解除の目安、と言っていた。感染者がもっと減るまで宣言を延長するなら、その根拠をていねいに説明し、手厚い経済支援で苦しい人たちの生活を守るべきだと思います。そう考えると、ワクチン接種が他国より遅れたことは、政府に反省してもらう必要があります。海外の治験データで、効果や副反応に人種差がないことは十分に示されていたので、12月か1月に承認し、接種を始めることもできたはずです」

 峰氏も、「日本でも治験をやり直した昨年12月ごろ承認し、接種を開始することもできたはず」として、

「日本は安全性や確実性を重視するあまり、対応が遅れることによるリスクを過小評価してしまっている印象を受けます」

 と述べる。医療体制を整えずに緊急事態宣言を出すしかなくなり、それでも整えず、いつまでも病床の逼迫状態が続くのは、あきらかに失政である。せめてワクチンでは素早い対応が見られたならいいが、こちらも他国が呆れるほど遅れている。厚生労働省は、ファイザー社からの6千万人分のワクチン供与を仮契約のまま放置し、一時は日本に回るはずの分がアメリカに供されることになっていたほどである。日本総合研究所のチーフエコノミスト、枩村(まつ むら)秀樹氏は、

「感染を抑えるまで対策をやり抜いたほうが経済へのダメージは小さい、と訴える方もいますが、違うと思う。時短などが長引けば失業や倒産は確実に増えるでしょう。緊急事態宣言は短ければ短いほどいい。実際、1月後半のJCBのクレジット決済額は、消費増税の影響もコロナの影響も受けなかった2018年の同時期にくらべ、旅行業界で75・8%、宿泊業界で60・9%、交通業界で42・2%、外食業界で30・9%減っています。こうした業界の取引先や関連業界にまで影響は出ているでしょう」

 と指摘するが、事実、おしぼりレンタル業を営む東京すずらんに聞くと、

「感染拡大前はおしぼりを1日15万本配達していましたが、現在約7万本。昨年末には前年比8割にまで持ち直しましたが、2回目の緊急事態宣言を受けて今年1月の売り上げは4割減。飲食店の取引先も支援金をいただけるのですが、売り上げが前年同月比50%を切っている必要があり、当社はいただけません」

 冨士氷室に聞いても、

「飲食店向けに純氷を製造販売していますが、1月の売り上げは前年の4割弱にまで落ち込みました」

 見えないところで苦境は拡大している。ワクチンを打つ前に崩れかねない人たちへの視野は欠かせないはずだ。食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏が言う。

「ワクチン接種が進むまで頑張ろう、という風潮の原因はポピュリズムです。最初は経済を動かすと言っていた菅総理も、メディアが盛んにゼロリスクを主張するなか、支持率も下がっているので、緊急事態宣言を簡単に解除できなくなっている。政治的思惑の裏には専門家集団がいて、いまだゼロリスクを主張する彼らがメディアに出て世論を形成している以上、政治家も従わざるをえないという構図です。でも、日銭が入らず食うにも食えなくなっている人への対策を、だれが本気で考えているのでしょうか。社会的なひずみが増大するなか、ワクチン接種が進むまで頑張ろう、という掛け声は、困っている人には、気楽に聞こえるでしょう。ワクチン接種は大事ですが、日本でも世界でも感染者数は減少しつつあるのだから、その前に、経済の活性化を考えるのが当然だと思います」

 医療体制の整備も、ワクチン接種も、緊急事態宣言の解除も、すべてが後手に回っている以上、日本においてはコロナ禍は人災としか言いようがない。われわれは、あり得ない「ゼロリスク」の煽りに惑わされずに、ウイルスの本質を見極めつつ、ワクチンについて副反応も交えた正しい知識をもって、コロナを「ただの風邪」にするように努める。それしかあるまい。

「週刊新潮」2021年3月4日号 掲載

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