コロナ禍で“サンカク”の学生を救う方法

コロナ禍で“サンカク”の学生を救う方法

コロナ禍で授業はオフライン…大学生を救う手立てはあるのか

 いま大学生はコロナ禍で苦境にあえいでいる。授業は味気無いオンラインで、仲間との議論や懇親の場もない。バイトは無くなったが、親に仕送りの増額を頼める状況にない。日本の明日を担う彼らを救う術はないのか? 危機管理の専門家に聞いてみた。

(株)リスク・ヘッジ代表取締役でヘッドアナリストの田中優介氏は、大学生の苦境をどう見ているのか。

「1月22日、筑波大学は学生に食料を無料配布し、約3000人の学生が行列を作ったそうです。27日には名古屋大学でも冬野菜の無料配布が行われました。多くの大学生が、そこまで追い詰められているのだと思います。

 ご記憶いただくための語呂合わせですが、大学生はいま“サンカク”の状態にあると思います。“勉強欠く”、“人間関係欠く”、“金銭欠く”の3つです。どれも早急に解決しなければなりません。多様性や国際感覚を身に付ける、人間関係能力や自立心を養う、新たな体験を通して向上心を身に付ける。これらが、なおざりになりかねませんので。心の病も心配です」

 では、学生を“サンカク”から救う手立てはあるのか。

「ヒントは“わせくまデリ”や“デリバリー三鷹”です。これは、商店街が飲食の宅配を地元の大学生に委託するというもの。学生にはアルバイト料が入りますし、飲食店と消費者も助かります。民間の宅配会社よりも手数料や配達料が大幅に安いからです。“金銭欠く”を解決するために、ぜひ全国の商店街にも広げて頂きたいと思います」

 また、オンライン授業についても、

「工夫をすれば改善できます。中部地区の女子大で危機管理の授業をした経験から、大学を運営する方々に次のような提案をしたいと思います。

 1対1で一方通行になっているオンライン講義を、複数で双方向の授業に変えるのです。たとえばZoomには“ブレイクアウトルーム”というグループ分け機能があります。こうした機能を使い、まず学生を幾つかのグループに分けます。そして、教授が示した問題について、グループ内の学生同士が議論して答えを出す。途中で教授がグループに出入りし、学生からの質問に回答しても良いでしょう。その後に、教授が学生と意見を交わしながら、考え方や理論、そして、正解を教える。こうすれば、“人間関係欠く”や“勉強欠く”も、少なからず解消できるでしょう」

 具体的な授業の例を、リスク・ヘッジの取締役でシニアコンサルタントの田中辰巳氏に示してもらうと、

「私は都内の私立大学で危機管理の授業をしたことがあります。その時に使ったのと同じ手法を用いてみましょう。時事ネタを用いて、危機対応のケーススタディをするのです。
 今なら“森喜朗・元東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の辞任の弁”が最適です。

問題1:悪いキーワードは何か?
問題2:その悪いキーワードが及ぼす悪影響は?

 という例題が作れます」

 果たして、正解は?

「(私の発言は)解釈の仕方だと思う、そういう意図で(蔑視発言を)言ったわけではない、(マスコミの)意図的な報道もあった、の3つが悪いキーワードです。
それぞれの悪影響は、

(1)解釈の仕方だ: 責任を半分しか認めず、反省や後悔が不十分だという印象になる。
(2)そういう意図: 弁明の効果が極めて乏しい。差別発言は言った側の意図ではなく、言われた側の心理で決まるから。セクハラやパワハラと同様に。
(3)意図的な報道: 報道したマスコミを怒らせて、更なる批判記事を書かれる。

 といった解説を、私はすると思います」

 こうした授業は実践的だが、危機管理の理論は学べるのか。

「上述の3つについて、<それでは、どんな言葉を用いるべきだったのか?>という問題を与えると良いと思います。しっかり考えさせたうえで、正解とともに考え方や理論を教えるのです。

(1)解釈の仕方だ →「私の解釈と認識が間違っていた」と語るべき。
(2)そういう意図 →「私の言葉は言外に女性の発言を委縮させる弊害があった」が正しい。
(3)意図的な報道 →「マスコミから厳しいお叱りを受けた」が望ましい。

 そもそも、辞任の弁を語る目的(考え方)は、己が発生させた毒を消すことにあります。危機管理には“感知・解析・解毒・再生”という4つのステージがあり、辞任の弁や謝罪は解毒のために行う。そんな理論を教えると、実社会でも役に立つはずです」

 それ以外にも、大学や学生に向けた提言がある。リスク・ヘッジの取締役でチーフオブザーバーの橘茉莉氏が語る。

「私はコンサルの場に陪席していますが、危機管理は本当に興味深いと思います。とても頭脳を使いますが、最終的には頭の整理がつきます。難題を解決した時の爽快感は、授業でも味わうことができると思います。そのうえ、企業の危機管理への関心は極めて高いので、就職の時にも役に立つでしょう。事例を積み重ねていけば“危機管理を勉強した”と、胸を張って言えると思います。危機管理の失敗事案は、政界・財界・芸能界と後を絶ちませんから」

株式会社リスク・ヘッジ
代表取締役 田中優介(ヘッドアナリスト)
1987年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社入社。2014年、株式会社リスク・ヘッジに入社し、現在は代表取締役社長。著書に『地雷を踏むな―大人のための危機突破術―(新潮新書)』『スキャンダル除染請負人(プレジデント社)』。

取締役 田中辰巳(シニアコンサルタント)
1953年、愛知県生まれ。慶応大学法学部卒業後、アイシン精機を経て、リクルートに入社。「リクルート事件」の渦中で業務部長等を歴任。97年に企業の危機管理コンサルティングを手掛ける、株式会社リスク・ヘッジを設立。著書に『企業危機管理実践論』など。

取締役 橘茉莉(チーフオブザーバー)
横浜国立大学卒業。住友生命保険相互会社を経て、株式会社リスク・ヘッジに入社。

デイリー新潮編集部

2021年3月10日 掲載

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