妻以外に二股をかけ…「もてない男」が調子に乗った挙句に招いた“修羅場と結末”

妻以外に二股をかけ…「もてない男」が調子に乗った挙句に招いた“修羅場と結末”

「彼女たちのことも、妻のことも、それぞれに愛していた」と祥治さん(写真はイメージ)

 皇宮警察・京都護衛所長の警視正が、妻以外にふたりの女性と「不適切な関係」を結んでいたと報じられ、話題になっている。筆者が取材をした中にも、同じような状態に陥り、結局、3人すべてを失った男性がいる。長年、まじめに働いてきた彼が突然、女性への関心を深めたわけを聞いた。

 53歳の大原祥治さん(仮名=以下同)は、かつてラグビーをやっていただけあって今も屈強そうでガタイがいい。ムキムキの筋肉には興味はなく、健康体でいられるように努力を重ねてきたそうだ。それは仕事にも言えること。大学を卒業して就職した企業で、彼は特に出世したわけではないが、こつこつとがんばってきた。共通の知り合いに言わせると、「地味だけど信頼できる人」だという。そんな彼が、今は離婚し、女性たちとも別れて実家で80歳になる母親とふたりで暮らしている。職場では前線から退かされて資料整理をしている。定年までに復活劇があるのかどうかは、「まだわからない」そうだ。

「私は若いときからモテなかったんです。口がうまいわけでもなく、女性の気持ちがわかるわけでもない。中高と男子校で、大学も理系だったので男が多くて。だから恋愛経験も乏しかった。男友だちはそれなりにいたので、このままでもいいかと思っていたんですが、30歳になって周りを見渡したらみんな結婚していて。置いてきぼりを食った感じがしました」

 見るに見かねたのか、友人の妻が自分の友だちを紹介してくれた。それが妻となった圭子さんだ。33歳のとき31歳だった圭子さんと結婚。「本当に僕と結婚してくれるの? それでいいの?」と3回も聞いてしまったと祥治さんは笑う。

「それからふたりの子が産まれて、今は19歳と16歳。妻のおかげでふたりともいい子に育ちました。私はあまり家庭的ではなかったかもしれないけど、妻の言うことはちゃんと聞きました。つきあい以外は早く帰って子どもの世話もしましたよ。楽しかった。写真が好きなので、子どもたちの写真はたくさん撮りました」

 どこにでもいる平凡な男が、どこにでもある平凡な家庭を築いただけと祥治さんは微笑んだ。妻は「まじめな夫」を尊重してくれたし、家庭的に大きな問題を抱えることもなく、40代後半に突入した。出世を目指していたわけでもないが、古い体質の会社だったためか、年功序列でそれなりに昇進。新しいことを覚えるために仕事関係のセミナーや勉強会にも積極的に参加した。

「出世しないタイプですが、仕事には情熱をもっていました。いい仕事を着実に積み上げていきたい。自分のためなのか世のため人のためと思っていたのかはわからないけど、まっすぐ愚直にがんばっていればいいことがある。そう考えがちな世代なのかもしれません」

 そんなとき、セミナーで知り合ったのが10歳年下の麻由美さんだ。たまたま隣に座っただけだが、休み時間に世間話をしたことから連絡先を交換。さらにたまたま勤務先がすぐ近くだったので、「今度ランチでも」という社交辞令が3日後には実現した。

「ランチの話題は仕事のことばかりでしたが、彼女はすごく勉強になったと言ってくれて。身内でもない女性に褒められるなんてめったにないから、すっかり舞い上がっちゃったんですよね」

 それが48歳のときだった。ふと、「四十八歳の抵抗」という石川達三の小説を思い出す。1955年から1年にわたって連載された新聞小説だが、55歳定年の時代、四十八歳となったサラリーマンが、恋愛をしたことがないという焦燥感から19歳の女性を口説いて恋をしかけるストーリー。当時は「抵抗族J」という言葉が流行ったらしい。家庭にも仕事にも恵まれていながら、どこか満たされないのは、先が短いと心身が悟るからか。すべての欲を断ち切るにはまだ体内に燃えるものを抱えている、かといって欲望を忠実に満たすには先がないと思ってしまう。中年と高齢の間には、魔のような溝が横たわっているのかもしれない。


■麻由美さんと出会って知った「嫉妬」、また新たな相手も…


 麻由美さんも既婚だったから、深い関係になる気などなかったはずだった。だが50歳を迎えたとき、麻由美さんから「誕生日祝いをしたい」と言われた。

「ホテルに誘われたんです。私の人生の中で、女性から誘われたのは初めてのできごと。『ダメですか』と目を潤ませて見てくれる女性を拒絶できるわけがない。彼女とはそこから恋愛関係が始まりました」

 始まってみたら、意外な自分を発見した。麻由美さんが夫と親密な時間を過ごしているのではないかと考えると、胸が苦しい。動悸が激しくなって初めて、自分が嫉妬しているのだと気づいた。恋愛による嫉妬など、自分とは無縁の世界だと思っていたのに。彼は麻由美さんとの関係にのめり込んでいった。

 当時、麻由美さんには8歳のひとり娘がいた。「お互いにまずは家庭を大事にする」と決めたのに、デートの日に子どものことで今日は無理だと連絡が来ると、表面上は「また今度ね」と返しながら、祥治さんの心は揺れた。本当は夫との時間を過ごしたいのではないか、あるいは麻由美さんに誰か好きな人ができたのではないか。妄想はとどまることがなかった。だが、そんな嫉妬は「みっともない」から、彼女に直接ぶつけることはできない。

 悶々としているとき、新たな関係が始まった。今度はさらに年下、30歳になったばかりの独身女性、ミオさんだ。

「麻由美と会えないとつらい時間を過ごさなければいけないので、そのころ私、とある写真サークルに入っていたんです。みんなで写真を撮りに行ったり、写真の勉強会をしたり。そこで出会ったのがミオ。彼女はプロを目指したいのだけれど、家庭の事情で彼女の会社員としての収入が途絶えると家族が困る。だからいつかプロになれることを夢みてがんばります、と明るく言うような女性でした」

 若くてけなげにふるまう女性に、祥治さんは心を鷲づかみにされた。ミオさんは写真のこともよく勉強していたので、祥治さんはわからないことがあるとミオさんに聞いた。端的にわかりやすく教えてくれる彼女に、さらに心惹かれた。

「なんていうのかなあ、麻由美との件で少し恋に慣れたというんでしょうか。ミオに関しては自分から口説きました。こんなオジサンを相手にしてくれるとは思っていなかったから、かえって気楽だったのかもしれない。食事に誘っていろいろな話をしましたね。ミオは『私は父親を早くに亡くしているから、お父さんだと思っていいですか』と言ってくれた。それでじゅうぶんだったんですよ、本当は」

 麻由美さんとの関係も続いていた。麻由美さんひとりと恋愛しているときより、ミオさんと会うようになってからのほうが祥治さん自身、気が楽だった。ミオさんも魅力的、麻由美さんともつきあい続けたい。時間的には忙しくなったが、気持ちは充実していく。自分の中に新たな情熱がわき起こってくるような気がしたという。

「半年ほどデートを重ねて、あるときミオに『お父さんでもいいんだけど、男としてはどうかな』と言ってみたんです。ダメ元ですから冗談っぽく。そうしたらミオが妙にまじめな顔になって、『私もそう思っていました』と。それだけでわかりあえた感じがあって、うれしかったですね。ホテルに直行しました」


■しかし妻にはバレていた


 彼はそのころのことが、遠い昔のような気がするとつぶやいた。男として「妙な自信がみなぎっていて、麻由美もミオも、そして実際には妻のことも愛おしくてたまらなかった」のだという。だが、そんな生活は長くは続かなかった。家庭も恋もうまくいっているはずなのに、見破って復讐をしかけてきたのはやはり妻だった。

「自分では外にいるときも家にいるときも変わらないようにしていたし、変わっていないと思っていたんですが、妻から見たらやはりおかしかったんでしょうね。特にミオとの関係が始まってからはすごく怪しかったようです。あとから『急にふふっと笑ったりしていた』『ヒゲを剃りながら鼻歌を歌っていた。今までそんなことはなかった』と言われました。でも、あそこまで手痛い復讐をしてくるとは思っていませんでしたが……」

 ある日、会社に怪文書が送られてきたのだ。『御社の大原祥治は、社命で出向いたセミナーで知り合った女と関係をもっている』と。自腹で行ったセミナーもあったのだが、麻由美さんと知り合ったのは、たまたま会社から受けるよう言われたセミナーだった。会社はそれを重視した。上司に呼ばれたとき、彼はまったく妻を疑っていなかったという。

「上司には正直に言いました。恋愛してしまった、と。上司は『きみが』と驚いたようでしたね。でもそのときはまだことの重大性に気づいていなかった。その後、なぜか会社にミオとのこともバレていて、さすがに焦りました」

 当時のことについては急に口が重くなる。彼にとって大きな屈辱だったのだろう。

 ある日、妻が離婚届をつきつけてきた。そこで初めて、彼は『妻が気づいていたのか』とハッとしたという。それだけ妻に寄せる信頼感が大きかったのだ。一方、妻にとっては信頼していたからこそ、怒りが抑えられなかったのだろう。

「信頼していた私がバカだった。この年になってこんな惨めな思いをさせられるとは想像もしていなかったわ。あなたを信用してきた自分を呪うしかない」

 妻はそう言って泣いた。

「恋愛する前の自信のない私に戻っちゃって、妻には何も言えませんでした。申し訳ないと頭を下げることしかできなかった」


■修羅場の果てに


 もちろん、麻由美さんとミオさんにも頭を下げて別れを告げた。だがミオさんは納得がいかなかったようだ。何度か家に押しかけてきて、妻と一悶着あり、子どもたちが警察を呼ぶという事態にも発展した。

「ドロ沼です。妻はミオに、『あんたね、泥棒猫のくせに何言ってんのよ』『あんたの他にも女がいたの知らないの?』と激しくミオをなじった。それに怒ったミオが妻に飛びかかって。結局、ミオは私を往復ビンタしてきました。そこへ警察がやってきた。週末の午後だったので、近所では噂になったみたいだし。もうここには住めないと妻に責められました」

 ミオさんはその後も何度かやってきたという。あげく、「私が大原さんと結婚する」と言い出した。だが妻はミオさんに向かって「あなたにたっぷり慰謝料を請求するから。それと養育費もお願いね」と攻め込んだ。ミオさんの家庭の事情まで調べ上げていたのか、それができないとわかっているかのような口ぶりだったという。

「妻のそんなイヤな面を見てしまったのも、私が原因ですからね。もういい、すべてやめようと言いました。会社の温情でクビは切られなかったけど、閑職に回されて給料も減りました」

 離婚届に判を押し、彼は実家に戻った。実家で元気にひとり暮らししていた母親を頼るしかなかったのだ。

「この年になって母にも迷惑をかけています。母には詳しい事情を伝えてはいないけど、自分のことはすべて自分でやることという条件付きで、間借りすることを許してくれました」

 長年ひとり暮らしをしている母には、自分なりの生活があるのだと、祥治さんは思い知らされた。

「離婚から1年半たっていますが、私はあの時点で立ち止まったまま。一歩も先に進めません。でも麻由美とミオと、そしてもちろん妻のことも、それぞれに愛していたんです。そんなこと誰もわかってくれないだろうけど……いちばんきついのは子どもたちのことですね。おそらく彼らが私を父親だと認めることは一生、ないでしょうから」

 複数の人を同時に好きになる。それを客観的に理解はできても、当事者となれば受け入れられない。そんなこともあるのだ。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月10日 掲載

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