「トモダチ作戦」2万人の米兵はボランティアだった 住民は「彼らが来て一気に片づいた」と称賛
2021年03月12日 11時20分 デイリー新潮

懸命に瓦礫の撤去作業を行う三沢基地の米空軍兵士
■「自然に手伝いたいと思いました」
東日本大震災からの復興では、諸外国からの援助が欠かせなかった。多くの死者を出した岩手県野田村では、ボランティアで駆けつけた2万人の米兵によって、瓦礫撤去が大きく進んだという。彼らはどのような思いで災害支援に当たったのか――。
(「週刊新潮」別冊「FOCUS」大災害緊急復刊より再掲)
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屈強な米兵たちが泥まみれで巨大な流木に挑んでいる。津波で流れついた無数の流木や電柱、そして山積みの瓦礫を人海戦術で片づけようとしているのだ。彼らが撤去作業に当たっているのは、死者37人を出した岩手県九戸郡野田村。
彼らは海兵隊のような実戦部隊ではない。野田村の北、青森県三沢基地から駆けつけてきた空軍兵士なのである。普段は、F16戦闘機などの保守に当たっている整備兵やエンジニアがほとんどだという。
「バス2台に分乗して来ています。59人中10名が女性兵士です」
こう語るのは、インディアナ州出身のジョージ・ノア少尉(24)。
「惨状を見て、自然に手伝いたいと思いました。“ヘルプ・トゥ・ハッピー”と皆言っています。助けることで充実した気持ちになる、ということですね」
■「ホント、助かるなあ。ありがてぇよ」
野田村を外国人が訪れることはめったにない。そこに突如現れた数多くの米兵。被災者たちはビックリした。
「いきなり背の高いアメリカさんが来たんだよ。瓦礫が多くて全然片づかなかったんだけども、彼らが来て一気に片づいた。重機を使わないで、流木やら電柱を平気で持ち上げるんだ。凄いよ。ホント、助かるなあ。ありがてぇよ」
と、自宅が全壊した男性が言えば、同じく自宅を失った外浦千代美さん(51)も感謝の弁を述べる。
「個人が大切にしている物を集めてきてくれます。女の兵隊さんは、破れて泥まみれになったスカーフをわざわざもってきてくれる。そういう繊細さがとても嬉しい。オバマさんが“必要な支援は何でもする”と言ったけど、その気持ちがここまで届いているんだなあと思います」
■ボランティアで現場に駆けつけた2万人の兵士
“トモダチ作戦”。今回の支援活動に名付けられた作戦名だが、
「これまで米軍が行ったなかで史上最大の災害支援作戦です。沖縄の海兵隊を主力にし、朝鮮半島近海にいた空母ロナルド・レーガンを中心にする艦船部隊が急遽、東北地方の太平洋沖に向かいました。空軍も輸送機を派遣し、陸海空の全軍が出てきた大作戦でした」
とは軍事ジャーナリストの神浦元彰氏だが、今回の“トモダチ作戦”は災害支援活動以上の結果をもたらした。
「米側にすれば、普天間問題でガタガタになった日米安保強化のこれ以上ないアピールになりました。また、日米関係を悪化させたという評価を受けている民主党政権にすれば、今回、同盟が強まったのは本当に救いになっています」
動員数2万弱の空前絶後の作戦だったが、実は、野田村に駆けつけた兵士はボランティアなのだという。
「基地の仲間が自主的に声を掛け合って集まっています。特に上の指示で動いているわけではありません」(ノア少尉)
2021年3月12日 掲載