米医師連盟が「コロナの特効薬」 なぜ政府は「イベルメクチン」を規制するのか

米医師連盟が「コロナの特効薬」 なぜ政府は「イベルメクチン」を規制するのか

前向きに答えた以上は

■“悲劇”は避けられたのではないか


 ワクチンの国内での接種が開始したが、同時に治療薬も重要だろう。その筆頭、ノーベル賞受賞の大村智博士が発見した「イベルメクチン」は世界各地から目覚ましい効果が報告され、副作用はないという。なぜいつまでも政府は規制を続けるのか――。

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 3月を迎えても緊急事態宣言が出されたままなのは、首都圏だけになった。2月末日には、1都3県の新規感染者数が全国の6割以上を占め、減少のスピードが鈍化していると指摘されている。

 とはいえ、3月2日までの1週間、東京都の平均感染者数は263人と、着実に減少している。それでもなお「厳しい医療態勢が続く」とされているのは、ひとえに医療体制が脆弱なまま放置されてきたからである。

 たとえば、昨年3月28日、つまり最初の緊急事態宣言が出される前に決定された政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、

〈今後、国内で感染者数が急増した場合に備え、重症者等への対応を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整えるよう準備することも必要である〉

 と明記されていた。実行されていれば、感染者数も死亡者数も欧米にくらべて1桁少ない状況で、飲食業者のみならず多くの人を追い詰める緊急事態宣言を出すことは、避けられたのではないか。また、自宅やホテルで療養中に容体が急変する人が続出し、時に救急搬送先も見つからないまま死亡した、という悲劇も避けられたのではないか。


■ブラジルで重症化率、死亡率が低下


 そんななか、主に自宅療養者の重症化を防ぐために、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士が発見した抗寄生虫薬「イベルメクチン」の緊急使用を考えてほしい、と主張したのが、東京都医師会の尾崎治夫会長だった。1月24日にフェイスブックに投稿し、2月9日の会見でも同様の訴えを繰り返した。

「1月には新規感染者が多く、入院患者、ホテル療養者、自宅療養者が増え、かかりつけ医が在宅の感染者を診はじめていた。ですから、重症化を予防できる薬を使いたいと考えていたところでした」

 と話すのは、東京都医師会の角田徹副会長である。

「尾崎会長が今年1月、テレビ番組で、海外のデータを見ると新型コロナによる重症化予防にイベルメクチンが有効だと思われる、と話したのを、大村先生がご覧になっていたのです。大変心強い、とお感じになった先生は、北里大学の方と一緒に東京都医師会を訪ねてくださいました。重症化を予防する作用機序は、まだよくわかりませんが、実際にブラジルのデータでは、感染者に早期にイベルメクチンを飲ませた州と、遅れた州をくらべると、早期に飲ませた州のほうが、重症化率や死亡率が明らかに低かったのです」

 そして、こう続ける。

「一番のポイントは、経口薬なので自宅療養で使いやすい点。感染が判明したのち数日以内に1回、必要量を飲めばいいというので非常に簡便です。しかも、広く世界中で使われていながら、重篤な副作用はほとんどないといわれます。日本でも疥癬(かいせん)の薬として使われていますが、使う疾病を変えるときは、一から治験をし直さなければなりません。すでに治験は始まっていて、東京都医師会も協力したいと考えていますが、通常のプロセスだと時間がかかる。いまは非常事態なので、ぜひ政治的判断で緊急承認などをお願いできれば、と考えています」

 たしかに、自宅療養者が自分で手軽に服用でき、重症化を防げるなら、これほど心強い薬もあるまい。


■米医師連盟が「コロナを解決する特効薬だ」


 実は本誌(「週刊新潮」)は昨年5月、イベルメクチンに新型コロナ撲滅への期待がかかる、と報じていた。同様に早い時期から、この薬に期待を寄せていたのは、作家の楡周平氏である。

「今回注目したのは、オーストラリアの大学の研究で、試験管レベルですが、イベルメクチンが新型コロナウイルスを99%減少させ、ほぼ無力化したと知ったからです。続いて、米ユタ大学も昨春、新型コロナの感染者に投与したところ、大きな効力を発揮したという論文を出しました。ただ、この論文はデータのとり方に問題があったとして、取り下げになりましたが」

 そう語る楡氏は、イベルメクチン自体には、かなり以前から注目していたと言って、こう続ける。

「北里大学特別栄誉教授の大村智先生が、伊豆でもとになる菌を発見しています。ところが、その菌は1回きりしか見つからなかったので、大村先生は“神様の贈りもの”という言い方をしていました。これのおかげで、寄生虫によって引き起こされるアフリカの目の病、オンコセルカ症をほぼ撲滅できたのですが、エイズやほかの感染症にも効くという話も聞こえてきます。新型コロナに対しても、バングラデシュやインド、カンボジア、ペルーにブラジル、または東欧から、イベルメクチンが絶大な効果を発揮している、という話が聞こえてきます。アメリカにはFLCCという、新型コロナに関する医師の連盟があり、昨年12月、そのトップが上院の公聴会に呼ばれ、イベルメクチンはコロナを解決する特効薬だ、と証言しています」

 アフリカで感染爆発が起きなかったのも、イベルメクチンを飲んでいたからだ、という見方もあるようだ。ただ、楡氏は現状に不満で、こう加える。

「本当に効くなら、早急に使わせるべきです。筋がいい解決策は、意外に足元に落ちているんです。しかし、東京都医師会の尾崎会長が、自宅療養中の患者に配布すべきだと提言し、国会でも菅総理が関心を示したのに、動き出す気配がない。メディアもほとんど報じません。私はことあるごとに、報道関係者に“イベルメクチンはどうなっているんですか”と聞いていますが、だれも知りません」


■大阪の製薬会社に300万人分の備蓄が


 事実、イベルメクチンは国会で取り上げられていた。2月17日、衆院予算委員会で立憲民主党の中島克仁議員が、「わが国では疥癬で保険適用になっていて、適用拡大に向けての治験の最中」と紹介し、通常のプロセスでは承認まで1、2年はかかるが、「東京都も治験に協力する姿勢なのだから、国も早期承認できるように治験をバックアップすべきだ」と提言したのだ。

 これに対し、田村憲久厚生労働相は「適用外使用ではいまでも使える」などと返答。菅義偉総理は「日本にとって極めて重要な治療薬と思っているので、最大限の努力をします」と、前向きに答えたのである。

「私は医師で、また大村智先生は同郷かつ高校の大先輩ですので、先生には流行初期の昨年3月ごろからご意見を伺っていました」

 と話すのは、質問した中島議員である。

「大村先生は2012年ごろから、イベルメクチンは抗寄生虫薬だが、エイズやデング熱への抗ウイルス作用があると話されていました。昨年末までに新型コロナへの効果に関し、35の研究成果が世界で出され、ペルーの報告では予防効果も認められています。感染対策の両輪はワクチンと治療薬。昨年末、在宅療養者は3万人を超え、私も医師として対応しましたが、40度の高熱がある人に薬も出されない現実を目の当たりにしました。イベルメクチンは治験段階ですが、過去40年間、世界で毎年3億人ほどが使い、安全性が確立されています。日本発の安全な薬に対し、海外で治験が進むなか、日本はほかの薬と同等のスキームで治験を進めていていいのか。このままではワクチン同様、周回遅れになってしまいます。海外で先に承認されるようなことになれば、本当に恥ずかしい。ですから、治療薬もしくは標準治療として確立できるよう、国策として取り組むべきではないか、と提言したのです」

 厚労相と総理の答弁には、どんな感想をもったか。

「厚労大臣は“いまでも使える”と言っていましたが、ふざけた話で、販売が規制されているので使いたくても使えません。また治験中の薬に対し、治験中でも使える、といった発言は研究者をバカにしています。ただ、菅総理の発言は、海外から“日本はイベルメクチンを治療薬として確立すべく動き出した”と捉えられてもおかしくない。大村先生も私に、“大変力強い言葉だった”というコメントをくださいました。言ったからには具体的に示すよう、求めていきます。現在、大阪の製薬会社マルホに、300万人分ほどの備蓄があるようなので、それを全部出せるように、議員立法で省令を改正するということも考えています」


■副作用がなく、少量で効く


 だが、安倍晋三前総理が昨年4月、承認への強い意欲を示したアビガンでさえ、胎児に奇形が生じる副作用が懸念され、いまも承認されていない。中島議員は、

「いままで治療薬に関する厚労省の返答は、“やっています”“治験段階です”に終始してきた。治療薬でわが国が先頭を切ることをあきらめている、とさえ感じてしまいます」

 と呆れ顔である。試みに厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課に聞いたが、

「特に企業から、承認を申請されているといった状況ではないと思います。現在、北里大学を中心に治験が行われていると思いますので、その結果を見て、どうするか企業が判断されるものだと思います」

 と、冷めた返答だ。

 1月に緊急事態宣言が出され、いまも首都圏で解除されないのは、つまるところ「命を守るため」であった。主として高齢者や基礎疾患がある人の「命を守るため」に、倒産や失業、さらには自殺が増えるのもやむなし、と判断されたのである。このように国民に多大な犠牲を強いて「命を守る」という局面で、有効な治療薬の承認に厚労省がこうも消極的であるのは、どういうことなのか。

 過去の度重なる薬害訴訟がトラウマになり、厚労省は新薬の承認に後ろ向きだといわれるが、わずかなリスクを恐れて目の前の病人を見殺しにすることが、なぜできるのだろうか。

「週刊新潮」2021年3月11日号 掲載

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