WHOが変異株の名称を変更!―改めて、変異の意味と新旧名称を整理してみましょう

WHOが変異株の名称を変更!―改めて、変異の意味と新旧名称を整理してみましょう

WHOが変異株の名称を変更!―改めて、変異の意味と新旧名称を整理してみましょう

新型コロナウイルスの変異株について世界保健機関(WHO)は5月31日、イギリス型やインド型などという国名での呼び方を止め、新しい名称を提案しました(1)。その国への偏見や風評被害が懸念されるためですが、そもそも「変異」とは何なのでしょう。

一般にウイルスは、複製の際に変異をよく起こします。多くの変異は大きな問題を持ちませんが、時にウイルスの伝播を拡大させる変異が起こります。2019年末からのパンデミックで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中に蔓延し、複製の回数も激増して変異株の出現確率が大きくなってしまいましたが、生き延びやすくなる変異はウイルスにとっては進化なのです。

ウイルス表面のスパイクと呼ばれる突起に起こる変異が重要です。スパイクは感染相手の細胞に付着する武器ですが、そのタンパク質を構成するアミノ酸がウイルス複製の際に異なる種類に変わると付着する能力が増大することがあり、感染力が高まります。イギリス型のN501Y変異株では、アミノ酸配列の501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に置き換わっており、これによって感染力が約1.3倍高まっています。

WHOは、診断や治療、予防に影響する可能性のある重要な変異株について、「注目される変異株(VOI:Variants of Interest)」」と、一層の注意を要する「懸念される変異株(VOC:Variants of Concern)」とに区別して注意を喚起しています。「懸念される変異株」には現在、指定順にイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型、インド型の4つがありますが、これからはギリシャ文字のアルファベットを用いて、それぞれ新しく「アルファ型」「ベータ型」「ガンマ型」「デルタ型」と呼ぶことになります(2)。

「注目される変異株」の6種類は、これも指定順に「イプシロン」「ゼータ」「イータ」「シータ」「イオタ」「カッパ」と呼ぶことになります。ギリシャ文字のアルファベットには限りがありますから、変異がそれを超えて増えたらどうするのでしょうか? また、「アルファ型」「ベータ型」と言われてもすぐにはピンときません。とはいえ、そうした変異の出現を抑えるためには、ワクチン接種を広げて流行を食い止めることが肝要です。

(著者:東北文化学園大学医療福祉学部抗感染症薬開発研究部門 特任教授/公益財団法人宮城県結核予防会 理事長 渡辺 彰)

〔文献〕
(1)WHO:WHO announces simple, easy-to-say labels for SARS-CoV-2 variants of interest and concern. 2021 May 31, https://www.who.int/news/item/31-05-2021-who-announces-simple-easy-to-say-labels-for-sars-cov-2-variants-of-interest-and-concern
(2)WHO:Tracking SARS-CoV-2 variants, Naming SARS-CoV-2 variants. https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/

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