新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(清掃)―うっかりやりがちな感染対策の間違い

新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(清掃)―うっかりやりがちな感染対策の間違い

新型コロナウイルス第2波・第3波にそなえた感染対策(清掃)―うっかりやりがちな感染対策の間違い

新型コロナウイルスが自分の住んでいる地域で流行してくると、感染しないように手洗いや手指消毒を徹底します。また、自分が感染者であった場合に、周囲の人々に感染させないようにマスクを着用します。そして、もう一つ大切なことは、環境の清掃です。

新型コロナウイルスをとても恐れている人々はアルコールなどの消毒薬を用いて、自宅のドアノブやテーブルの上、壁や床、玄関など徹底的に消毒していることでしょう。しかし、アルコールを用いれば家中にアルコール臭が漂い、酔っ払ってしまいます。塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを含む)を用いていれば、家中に塩素の臭いが充満し、息苦しくなってしまいます。本当に床や壁も消毒が必要なのでしょうか? アルコールや漂白剤を用いずに洗剤を使用して清掃してはいけないのでしょうか?

新型コロナウイルスの感染対策としての環境清掃で大切なことは「手指の高頻度接触面」の重点的な清掃です。これはドアノブや手すりのような人々が頻回に触れる環境表面です。このようなところには感染者も触れている可能性があり、そこにはウイルスが付着しているかもしれません。そこに他の人が接触することによって、その手指にウイルスが付着し、そのまま目・鼻・口の粘膜に触れて感染します。そのため、「手指の高頻度接触面」は頻回に清掃することが求められています(1)。

床や天井といった「手指の低頻度接触面」は見かけは汚れているかもしれませんが、感染者の手指が触れることはないので、ウイルスは付着していません。万が一、付着していたとしても、他の人々が触れることはないので、感染源にはならないのです。通常の家庭の清掃は「見かけの汚れを取り除き、外見上の清潔を保つ」のが目的ですが、感染予防の清掃は「見かけの汚れがなくても、手指が頻回に触れるところを重点的に清掃し、病原体を除去して感染源を断つ」ことを目的とします。床や壁などの清掃に時間を消耗するのではなく、「手指の高頻度接触面」の清掃に時間を費やすべきなのです。

それでは、「手指の高頻度接触面」の清掃ではアルコールや漂白剤が必要なのでしょうか? 実は、そうではないのです。家庭用洗剤で十分なのです(2)。極端なことを言えば、台所用石けんで清掃しても構いません。このようなことを言うと、アルコールや漂白剤の方が台所用石けんよりも消毒効果が強いので、それを使用したほうが良いのではないかという人もいることでしょう。ここでマンボウやウミガメの話となります。

マンボウという魚が産卵する卵の数は3億個ですが、成魚となれるのは数匹という話があります。この数字が本当かどうかは明らかではないのですが、もし、すべての卵が成魚になることができれば、太平洋も大西洋もマンボウだらけになることでしょう。毎年5月下旬〜8月中旬になるとウミガメが砂浜で産卵します。そして、孵化したウミガメの赤ちゃんが大人のカメになれるのは1,000 匹に1匹とも5,000匹に1匹とも言われています。自然界で種を維持するためには、相当数が必要なのです。

新型コロナウイルスも同様です。環境表面に付着しているウイルスが人間に感染するためには、相当多くのウイルスが存在していなくてはなりません。数匹のウイルスが環境表面に残っていても問題ないのです。たとえ、1匹・2匹のウイルスが手指に付着し、そのまま眼・鼻・口の粘膜に触れても、粘膜にある粘液に阻まれて人間の細胞にたどり着けないのです。粘液は洗浄効果を持っているので、数匹のウイルスが付着しても、洗い流すことができるのです。もちろん、大量のウイルスが同時に粘膜に付着すると、そのうちの何匹かは体内に侵入できるかもしれません。それを防ぐことができればよいのです。確かに、石けんはアルコール消毒薬に比較して殺菌効果が劣るかもしれませんが、ウイルスの伝播を防ぐレベルは確保されているので大丈夫なのです。

(著者:浜松医療センター 院長補佐 兼 感染症内科部長 兼 衛生管理室長 矢野 邦夫)

〔文献〕
(1)CDC:Guidelines for environmental infection control in health-care facilities, 2003
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/environmental-guidelines-P.pdf
(2)独立行政法人製品評価技術基盤機構:新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告をとりまとめました。〜物品への消毒に活用できます〜
https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html

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