新型コロナウイルスと紫外線照射による環境表面の感染対策

新型コロナウイルスと紫外線照射による環境表面の感染対策

新型コロナウイルスと紫外線照射による環境表面の感染対策

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と話題の紫外線照射についてお話します。SARS-CoV-2の主要な感染経路は飛沫への曝露と考えられていますが、SARS-CoV-2は汚染された環境表面と接触してから顔の部分(眼、鼻、口)に触れることで感染する可能性があります(1)。また、実験条件によりSARS-CoV-2はプラスチックやステンレスなどの環境表面で数日間生存することが報告されています(2)。日頃から行っている洗浄剤と消毒薬を用いた清掃はもちろん大切ですが、最近では医療施設等の環境を消毒するために、紫外線照射装置などの新しい環境感染対策技術にも関心が寄せられています(3,4)。

太陽光の中には私たちの目で見ることができる可視光線と、目で見ることができない赤外線や紫外線が含まれます。さらに紫外線は波長によってUV-A(315〜400nm)、UV-B(280〜315nm)、UV-C(200〜280nm)などに分けられます。UV-A、UV-Bはオゾン層を通過し地表に到達しますが、短い波長のUV-Cはオゾン層を通り抜けないので地上には到達しません。日焼けの原因となる紫外線ですが、長年の研究でUV-Cは微生物を殺菌する効果があることがわかってきました。国際紫外線協会(International Ultraviolet Association、IUVA)によると、UV-C照射は、飲料水、廃水、空気、医薬品、環境表面におけるヒトの病原体を消毒する際に40年以上にわたって広く使用されています(5)。医療施設においてもUV-C照射装置が環境表面の薬剤耐性菌を不活化することが示されています。現在までに実験条件下で試験された多くの細菌とウイルス(SARS-CoVやMERS-CoVなどのコロナウイルスを含む)に対するUV-Cの消毒効果が示されています。一方で、UV-Cは日光よりもはるかにエネルギーが強く、皮膚に重度の日焼け様反応や眼に紫外線角膜炎を引き起こす可能性があります。また、紫外線照射装置の中にはオゾンを生成するものもあります。

最近の研究でUV-C照射により試験管や環境表面のSARS-CoV-2を不活化した研究結果や、病室環境におけるSARS-CoV-2 RNAの汚染レベルの低下が報告されています(6-8)。紫外線照射装置の環境対策に関するさらなるエビデンスの蓄積が必要ですが、適切なUV-C照射によりSARS-CoV-2を不活化し、感染リスクの軽減に有用であることが期待されています。空気、水、環境表面の消毒のために様々な紫外線照射装置が市販されていますが、性能基準や検証試験が定まっていないことが課題として挙げられています(5)。紫外線照射装置の種類毎に用途、使用方法、有効性、安全性などに違いがありますので、医療施設等で紫外線照射装置を実際に導入する際には、科学的なデータを確認した上で、装置毎の特徴を理解し、適切に使用することが重要と言えます。

(著者:東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座総合感染症学分野 講師 金森 肇)

〔文献〕
(1)The Centers for Disease Control and Prevention:COVID-19 Overview and Infection Prevention and Control Priorities in Non-US Healthcare Settings.Available at https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/non-us-settings/overview/index.html
(2)van Doremalen N et al:Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1.N Engl J Med 382(16):1564-1567,2020
(3)金森 肇:感染対策のための院内整備ガイダンスPart 2 環境整備編 Topics 注目の環境消毒システムを検証する 紫外線照射装置―海外における使用状況とその実績.感染対策ICTジャーナル 12(1):81-85,2017
(4)Kanamori H et al:The role of the healthcare surface environment in SARS-CoV-2 transmission and potential control measures.Clin Infect Dis,2020,DOI https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1467
(5)The International Ultraviolet Association (IUVA):IUVA Fact Sheet on UV Disinfection for COVID-19.Available at https://www.iuva.org/IUVA-Fact-Sheet-on-UV-Disinfection-for-COVID-19
(6)Heilingloh CS et al:Susceptibility of SARS-CoV-2 to UV Irradiation.Am J Infect Control 48(10):1273-1275,2020
(7)Simmons SE et al:Deactivation of SARS-CoV-2 with pulsed-xenon ultraviolet light:Implications for environmental COVID-19 control.Infect Control Hosp Epidemiol,2020 [in press]
(8)Jerry J et al:Do established infection prevention and control measures prevent spread of SARS-CoV-2 to the hospital environment beyond the patient room? J Hosp Infect 105(4):589-592,2020

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