「森友事件」から公文書の重要性を改めて考える

公文書というものの実態、あるいはそれを改ざんすることの意味について、正確に理解している人は、そんなに多くないでしょう。記憶に新しい「森友学園」事件のポイントを、ここでは“公文書の改ざん”という点に置いて憲政史研究家の倉山満氏が解説します。

※本記事は、倉山満:著『救国のアーカイブ』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■「森友事件」の争点となった公文書

文書管理に関する問題が注目を集めています。文書管理の重要性とあり方については、何年も議論され続けているのですが、なかなか成果を生まず、いろいろな事件があとを絶ちません。

皆さんがよくご存知の出来事としては「森友事件」が挙げられるでしょう。2017年2月から新聞やテレビが伝え始めて表面化した森友事件は、各報道内容をまとめると次のようになります。

▲安倍晋三前首相 出典:ウィキメディア・コモンズ

2016年6月、学校法人「森友学園」に大阪府豊中市野田町の国有地が払い下げられた。不動産鑑定士による土地の評価額は9億5,600万円だったが、財務省近畿財務局が決定した森友学園への払い下げ価格は1億3,400万円。

安倍晋三首相(当時)の昭恵夫人が、森友学園が建設を予定していた小学校の名誉校長となっていることが報道され、安倍夫妻の影響、いわゆる“忖度”で払い下げ価格が不当に安くなったのではないか、という疑惑が生じた。

2017年7月、籠池泰典・諄子夫妻が、国・地方自治体の補助金計約1億7,000万円をだまし取った容疑で東京地検特捜部に逮捕、2020年2月19日に大阪地裁判決で夫妻に有罪判決が下る。

これに関し2018年3月、財務省が作成した土地取引に関わる決裁文書につき、その内容が、契約当時の文書と国会議員らに開示した文書とで異なることを朝日新聞がスクープ。内部調査により、財務省は開示文書において、安倍夫妻の関与が疑われかねない記述を削除していたことを認めた。

同年同月、財務省近畿財務局の赤木俊夫上席国有財産管理官が、佐川宣寿当時財務省理財局長の指示で修正および差し替えを行ったことを手記に残して自殺。同年5月、大阪地検特捜部は、公文書の改ざんについての刑事責任は問えないとして佐川宣寿および財務省職員ら計38人を不起訴処分とし2019年8月に捜査は終結。

2020年3月、赤木氏の妻が、国と佐川宣寿氏に対して計約1億1,200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

■極めて幅が広い「公文書」の定義

この事件のポイントを、ここでは「公文書の改ざん」という点に置いてお話しします。公文書というものの実態、あるいはそれを改ざんすることの意味について、正確に理解している人は、そんなに多くないでしょう。

▲財務省本庁舎 出典:PIXTA

公文書にはいろいろな種類があります。たとえば、巨額の取引を政府と取り交わす際の契約書は公文書です。国と国の条約の原本も公文書です。そしてまた、会議メモも公文書になりえます。まず、公文書と呼ばれる文書の範囲は、極めて幅が広いということを知っておいてください。

日常的に仕事をしているなかで、たとえば会議メモの日付を変えておきたい、ということが時々起こります。なんらかの事情で会議をした日を前後にずらしておきたい、といったようなことは問題としては軽いのですが、これも公文書の改ざんであることには変わりありません。公文書の範囲が広い以上、当然ながら公文書の改ざんもまた、幅が広くなります。

森友事件が大きな問題であるのは、改ざんされたのが決裁文書だからです。決裁文書は、組織の意思決定を書き記した文書です。これに基づいて権限と拘束力が発生します。こうした公文書のなかでも、決裁文書という極めて重い文書の改ざんなので、森友事件は大問題なのです。

他はいざ知らず、決裁文書の改ざんが許されるなら、情報公開など意味が無いと批判されていますが、その通りでしょう。

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