災害危機管理アドバイザーが警鐘「水害は早めの避難を!」

今年の7月、静岡県熱海市で起きた大規模な土石流は甚大な被害をもたらし、多くの被害者や行方不明者が出てしまいました。この件に関しては、盛り土や避難勧告は適切だったかなど、さまざまな問題が浮き彫りになりました。しかし他人事ではありません、日本全体で水害が起こりやすい状況になっている、と災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は警鐘を鳴らしています。

※本記事は、和田隆昌:著『【最新版】中高年のための「読む防災」 -一度読んでおけば一生安心!-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■水害には内水氾濫と外水氾濫がある

水害は河川から大量の水が、より低い土地に流れ込んでくるために起こります。海が近い場合は高潮という水害もあります。台風の影響を受けやすい沿岸地域や一級河川の流域周辺など、水のそばには常に水害というリスクがあるわけです。

ただし、近年の気候変動によって、過去に水害がなかったとしても、今後は降雨量の増大とともに、水害の危険にさらされる地域は増えていくと考えられます。

東京や大阪の一部の地域では海抜がマイナスの地域が存在します。それらの地域では、豪雨発生時に排水機能に支障が出た場合、水没の危機にさらされてしまうことを、常に意識して暮らさなければなりません。

水害には、内水氾濫と外水氾濫の2種類があります。

内水氾濫は、陸地内に降った大雨によって排水用の小河川や排水路の能力が降雨量に追いつかず、下水から水があふれるなどして、低い土地が浸水すること。一方、外水氾濫は河川や海の堤防が決壊し、水が陸地に入ってくるものです。川や海から離れた場所では、内水氾濫のみが起こりますが、河川が近いところでは、内水氾濫・外水氾濫の両方の被害に遭う可能性がある地域もあります。

内水氾濫に比べて、外水氾濫は短時間で大量の水が地域に流入するために、被害が極端に大きくなります。家が流され、死者が発生する場合もあります。

一方、内水氾濫の場合は、死者はほとんど出ませんが(車や地下などに閉じ込められてしまったケースを除く)、家屋や自分の財産、車など、さまざまなものが浸水してしまうので、被害が起きる可能性が高い地域は知っておく必要があります。

■水害が起こった場合は早めの行動を! イメージ:PIXTA

水害は、素早い避難行動さえとれば、生命の危険を免れることが可能になります。いち早く情報を入手し、速やかに移動さえできれば少なくとも死ぬことはありません。被害に遭うのは、情報を手に入れることができなかったり、避難する判断や行動が遅かったりした人になります。

しかも現在、気象庁は48時間から72時間後の降雨量や浸水の状況を発表します。特に降水量は、レーザー光を利用して雲の中の水蒸気量を把握するレーダーが開発されたため、従来とはまったく別物なほど情報の精度が高くなっています。近づいてきた雲の水蒸気量が正確にわかるので、これくらいの気温であれば、降水量がどのくらいになるかという予測が可能になったのです。

こうした技術は、世界でも日本が群を抜いています。皆さんもこのような有益な情報を、ぜひ自分の安全確保に活用してほしいと思います。

また河川の氾濫に関しては、ダムの放流など人為的な要因もありますので、より詳細な情報が必要になります。

洪水のリスクがある地域の戸建て、特に平屋に住む人は、それらの情報を踏まえて、より早めの避難行動が求められます。一方、集合住宅の3階以上にお住まいの人は、避難のタイミングによっては、移動自体がリスクになることもあるのでご注意ください。

2019年の台風接近により、神奈川県で集合住宅の1階が水没してしまったために亡くなられた方がいましたが、リスクの高い建物では、上層階への避難や安否確認などのシステムを含めて自治会などで話し合っておきたいものです。

▲リスクの高い場所にある集合住宅 イメージ:PIXTA

■これまでの常識や備えが通用しなくなっている

「ゲリラ豪雨」は気象用語ではありません。都市開発によって上昇気流が発生し、積乱雲を作るという特殊な地域性を持ったものを指します。2000年代前半からメディアが多用するようになりました。

▲ゲリラ豪雨  イメージ:PIXTA

急激な気温上昇による積乱雲の発生により起きるものであり、発生場所の予測が難しく、短時間で解消する場合も多いため、この名称が使われています。地理的に発生しやすい場所もあり、寒気と暖気がぶつかるような状況で発生するケースもあります。

ゲリラ豪雨予測のキーワードとして、気象予報士が「大気の状態が不安定」と言ったときは発生しやすい状況であると思って間違いありません。場合によっては強風・落雷・竜巻・雹(ひょう)などが発生する場合もあります。しかし短時間で解消するため、大きな被害に至ることはまずありません。

近年では、日本上空で停滞前線が集中豪雨を発生させ、猛烈な大雨が長時間続くケースも続出しています。これを起こす「線状降水帯」は、連続して発生した積乱雲が線状に並んだ集合体が、幅20〜50キロメートル、長さ50〜200キロメートルにもなるもので、2015年の鬼怒川の決壊、2018年の西日本豪雨など甚大な被害を発生させました。

これまで、台風が来るのは9〜10月ぐらいが中心という常識がありましたが、突然、12月ぐらいに、いわゆる「爆弾低気圧」と呼ばれる、太平洋側から来る低気圧も発生するようになりました。

▲台風の進路も変わってきている イメージ:PIXTA

さらに台風の進路が変わっています。20年くらい前までは、東北や北海道に台風はほとんど来ませんでした。また「北海道には梅雨がない」と言われていましたが、今ではそれも昔話になってしまいました。また関東を直撃するような台風は、これまでほぼなかったのですが、2019年は二度の台風直撃により、千葉県を中心に大きな被害が発生したのは記憶に新しいところです。

いまや北海道でも水害は発生しますし、冬に起こることもあるのです。事実、北海道は、2016年に連続して襲来した台風によって、ひどい水害に見舞われ、鉄道や道路などの交通網はズタズタとなり、河川の堤防決壊で多くの家屋が浸水しました。また、ジャガイモ畑などの農地や牧場にも大きな被害が及んだのです。

また、東北地方はこれまで台風が来ることはなかったので、内陸部の治水事業が遅れていたことが災いし、毎年大きな被害が発生するようになってしまいました。津波対策用の堤防を造るだけではなく、河川からの水にも注意を払わなければならなくなってしまったのです。

北海道や東北など、水害の経験値が低い地方が、より激しい気象災害を受けているのが現状です。関東への大型台風襲来で家屋や各種施設が破壊されてしまったのも、これまでの台風は本州に接近する頃には勢力が衰えていたので、被害の経験がほとんどなかったことが大きく影響しています。

これらは日本列島周辺の海水温が上昇傾向にあることが原因とされていますので、今後も被害は増える傾向にあると考えるべきでしょう。

ポイント・・・水害は早めの避難で生命を守ることができる

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