「EV 炎上」バッテリー炎上事故が世界各地で発生している

EVのバッテリー(充電池)は重くて大きくて、実に200〜300kgもあるといいます。これがまた産業廃棄物となり環境に悪い物体で、EVが普及すればするほど、バッテリーの後処理問題は今後大きな課題となりそうです。リユースやリサイクル事業も今後注目される分野です。

そしてなんと、このバッテリーというものは、実によく燃えるらしいのです。そして一度燃えると、消え終わるまで消火することもできなくて大変なんだとか……(水では消せない)。

加藤康子氏(元内閣官房参与)、池田直渡氏(自動車経済評論家)、岡崎五朗氏(モータージャーナリスト)のEVをよく知る3人が、EVの危険性を語り合う。いかに世界中でEVが燃えているのか……ぜひ皆さんも「EV 炎上」で動画検索してみてください。

▲脱炭素とEVの問題は我々の未来がかかっている

※本記事は、加藤康子×池田直渡×岡崎五朗:著『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■300台のEVが炎上! 燃えるリチウムイオン電池

池田 これは本当に大事なことなんですけど、バッテリーというのは、実によく燃えるものなんですよ。恐ろしいことなんですけど「バッテリーは燃えるものだ」という基礎認識は持っていたほうがいいです。

加藤 スマホもPCも、充電できるものは燃えますよね。

池田 はい。バッテリーのタイプによりますが、今普及しているタイプのリチウムイオン電池は燃えます。それをどうやって燃やさないかっていう技術は、もちろんいろいろあるんですけど。

もともとバッテリーというのは、放っておけば燃えるものなんですよ。過充電で燃えるっていうのは、皆さんはなんとなく知っていると思うんですけど、怖いのは“過放電”でも燃えるんです。

過放電っていうのは「この商品、もう使い終わったからいらない」といって、押入れの奥やごみ置き場に放置したりしますよね。こういう状態で燃える可能性があるんです。

加藤 そうすると、今までは中古で使えなくなったクルマなんかは、解体業者が山積みにしていましたけれど、これがEVになったら発火する恐れがあるってことじゃないですか。

EVの普及が進む中国では、使い道のなくなったEVが大量に放置され「EVの墓場」が相次いで出現し、社会問題になっているようですよ。

池田 もちろん、そういうEVの保管の仕方はやっちゃ駄目です。やるとすれば家電リサイクル法と同じように、自治体から伝票を買ってきて、それで然るべき処分場に送るようにしないと廃棄できない、という形にする以外にないのですが……。

「あのクルマ、何十年もここに止まってるなぁ」といったような、捨ててあるのか所有者がいるのか、なんだかよくわからないオンボロのクルマがよくあるじゃないですか。何十年かあとにEVがそうなった場合は、かなり危ないわけですよ。

加藤 そうですね。以前NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に行ったとき、リチウムイオン電池の話になったのですが、やはり「発火・発煙リスクというのは免れない」とは言っていましたね。メーカーは発火事故が起こったら、大変じゃないですか。

岡崎 いやすでに、ネットで「EV 炎上」って検索したら、もういくらでも出てくるわけですよ。燃えている動画なんかもバンバン出てきますから。

池田 あんまりメディアでは報道されていませんが、かなり燃えていますよね。

加藤 中国では、先日も充電中のEVが駐車場で発火し、300台が燃えていましたね。

池田 日本でもEVがもっと増えてくれば、炎上事故も増えると思いますよ。特にビルの地下駐車場で燃えるとヤバいです。

加藤 有毒ガスも充満して、ビルが丸ごと火災になる恐れもありますね。

▲地下駐車場で燃えると大きな被害にもつながる イメージ:PIXTA

■日本製のEVなら発火事故は少ない?

岡崎 でも、日本のものづくりのすごさっていうのがありまして。日産のEVであるリーフって、今まで累計販売台数50万台でしたっけ?

池田 はい。10年以上EVを売ってきています。

岡崎 なのに、1台も発火していないんですよ。

加藤 それはすごいですねぇ。

岡崎 なぜかというと、発火しないようにちゃんと作っているからなんですね。これに対して、日産以外のEVはだいたい燃えています。

で、よくネットで出てくるのはテスラですね。

「テスラ事故りました、燃えました」あるいは「駐車場に停めておいたら勝手に燃えました」というニュースは結構あります。

これはね、日産が1台も燃えていないのと比べると、バッテリーの技術、あるいは生産上の品質管理、安全性を高めるための設計技術とか、もうさまざまな……。

池田 ものづくりへの姿勢といいますか。

岡崎 そう。そこに大きな違いがあると考えざるを得ないですよね。

加藤 さすが日産ですね。ヒュンダイ(現代自動車:韓国の自動車メーカー)のEVもリコールで大変問題になっていましたよね。

LG(韓国)の電池が燃えて回収されたりして。フォード(米国)もそうでしたし……。

池田 そうです。今、世界中の自動車メーカーがバッテリーの供給を受けているのは、多くが中国か韓国のメーカーです。

日本製はパナソニックが多いのですが、安全で品質が良いから、限られたところしかもらえないわけですね。

世界の自動車メーカーは、どこも欲しがっているけれども競争率が高い。

▲電気自動車用のモーター駆動 イメージ:PIXTA

■世界のEVバッテリーの多くがメイドイン中国&韓国

岡崎 テスラは最初、パナソニックのバッテリーを使っていたのですが、中国製に一部を切り替えたりしてね。

池田 そうですね。結局、台数を多く作りたくなった結果、今では中国からもバッテリーを買うことになっています。

テスラは10年後でも90%保証するだとか、バッテリーの劣化に対して自信を持っていることをアピールしていましたが、中国製を搭載したとたん、買ったばかりの新車の航続距離が20%もダウンしちゃったりね。

岡崎 中国製のバッテリーを積んだら問題が起きましたね。

で、テスラはお得意の「オンラインアップデートで改良する」とか言って、ユーザーもそれを期待していたわけですが、蓋を開けてみたら航続距離をカタログ値より大幅に減らすという詐欺まがいのアップデートだったわけです。

やっぱり、さっき池田さんが言っていたように「ものづくりの哲学」というものが、命に関わる商品である自動車には特に大事なんです。

日本のものづくりって「壊れちゃいけない」「お客さんに迷惑かけちゃいけない」っていう考えが第一にあるんですよね。

池田 「クルマが燃えるなんてとんでもない!」って、日本のメーカーは普通に思っているわけですよね。日本のお客さんも「そんなの当たり前じゃん」って思ってるわけですけど、世界のメーカーは必ずしもそうは思っていません。

岡崎 だから、日本のバッテリーメーカーは、無茶苦茶厳しい試験をしていたりします。バッテリーの内部って、電極がミルフィーユみたいに幾重にも重なっているものなんですが、これがショートをすると燃える仕組みになっているんですよね。

で、そこに釘を刺すなんていう、とんでもない試験を日本はちゃんとやっているわけです。

そんなことしたら全部導通しちゃうので「そりゃ燃えるだろう」っていうくらいのことなんですけど、それでも燃やさない技術を日本のメーカーは持っています。だから価格も高くなるわけです。

加藤 中国湖南省にある、テスラのバッテリーを供給する工場も爆発していましたよね。

岡崎 日本でもソニーのバッテリー工場が爆発したことがありました。リチウムイオンバッテリーはたしかに革命的なバッテリーですが、その分リスクも高いんです。

加藤 バッテリーは難しい。しかも危険が伴う。EVってバッテリーの上に乗っているようなものでしょう?

岡崎 シートの下にバッテリーが敷き詰められていますからね。

加藤 まさに危険と背中合わせですね。

岡崎 本当にそういうことなんですよ。普通はガソリンエンジンの方が、ガソリンを積んでいるから燃えそうで危ないと思うじゃないですか。でも、危険なのはEVも同じで、むしろEVの燃えかたが激しい。

池田 ガソリンは長い時間をかけて、安全に使う技術が完成されていきました。本当はEVもそうなれるはずなんですが、今、マーケットが興味を持っているのは価格と航続距離。

だから、安く大容量に作るところにどうしても開発が向かってしまう。そういうなかでも、安全性に妥協しない哲学があるかどうかが問われているのです。

それとあまり知られていませんが、リチウムイオン電池って、燃えると消せないんですよ。消火の方法がないんです。

?▲交通事故で火災になると大変なことに… イメージ:?Aちゃん / PIXTA

加藤 じゃあ、事故ったら大変じゃないですか。消防車は役に立たないの?

池田 実はそうなんです。燃えているのがEVだとわかったら水を掛けられない。

新たなショートが発生して、状況がさらに悪化したり、感電したりするリスクがあるからです。

火災のごく初期なら粉末系消火器が使えますが、EVが燃えている動画を見たことがある人ならご存知の通り、バッテリーの火災は火の回りが速く、よっぽど早期でないと間に合わない。

しかも昨今、バッテリーは床下にあるので、消そうにも消火剤が入らないんですよ。煤にも酸化コバルトや酸化ニッケルといった有毒物質が含まれています。

EVが燃えたら、消え終わるまで待つしかないのです。だから極力燃えないように注意深く作るというのが、日本メーカーの考え方です。

多少値段は高くなろうと、僕はその考え方がとても日本らしいし、それは世界に誇るべきものだと思いますね。

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