マスコミの扇動に騙されるな! コロナ対策で評価すべき首長たち

コロナの来たる第二波に備えて、国と自治体の成果を検証する必要がある。政治経済評論家の八幡和郎氏に、地方自治体である北海道や和歌山県など市民から支持を得た実際の成果を検証してもらった。

※本記事は、八幡和郎著『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

■失敗を挽回するも高く評価できない北海道

新型コロナ対策で「政府の動きが緩慢だ」「東京、大阪、北海道の知事こそ首相にしたい」「ほかの知事は何をしているのか」といった声がマスコミにはあふれています。しかし、国と地方の関係についての無理解も目立ちますし、パフォーマンスばかり評価して地道な仕事を軽視して現場を混乱させ、地方自治体の士気を下げかねない意見も散見されています。

週刊誌などでは、パフォーマンス偏重で、国に反抗的な姿勢を見せれば実質と関係なくよしとする「地方分権ごっこ」礼讃の記事も見られました。そこで私なりの視点で、各首長を正確に評価していこうと思います。まずは北海道から見ていきましょう。

北海道の鈴木直道(すずきなおみち)知事については、マスコミでも高く評価されています。学校を休校にしたり、マスクを配布するなど、国がのちにとった政策の先取りをし、モデルのない段階でのフットワークはよいものでした。しかし、私はあえて天邪鬼な意見を書いておきましょう。

そもそも、北海道での流行は「さっぽろ雪まつり」で、中国人観光客が多かったことから始まっているともいわれ「三密」が予想されていたのに無警戒でした。北海道で流行が蔓延していたときに、本州との遮断も勇気を持って行うべきでした。

2月28日に独自の緊急事態宣言をしましたが、北海道への出張を命じられた在日中国人が、日本の対策の甘さに驚いて必死に抵抗した、という話を私も聞いていたころです。

また、いったん収まったのに第二波の襲来を招いたのですから、とても誉められたものではありません。どうも韓国の文在寅大統領やニューヨーク州のクオモ知事もそうですが、対策に失敗したところのトップが、悲愴な戦いの英雄のように振る舞って称賛されるのは、おかしいでしょう。

■マスコミの評価に値する和歌山県

和歌山県の仁坂吉伸(にさかよしのぶ)知事は、大手マスコミも評価しています。済生会有田病院の院内感染のあと「早期発見するために大事なことは、国の基準にこだわらないことだ」として、幅広いPCR検査をして封じ込めに成功したことで、国に反抗して成功したというイメージを持たれているからでしょう。

あのとき、私は「仁坂知事だからあのやり方ができるので、他の知事が真似たら危ない」といいました。なにしろ素晴らしく優秀な頭脳で、細かいし常識にもとらわれません。状況を完全に把握して仕事をするので、かなり綱渡りでも大丈夫なのです。PCR検査を片っ端からといっても、範囲は正しく設定しているし、大阪の医療機関の協力を取り付けるなどして、医療崩壊しないような手当ができていました。

一方「(休業要請した場合は補償をするかと問われて)絶対にしない。外出自粛で客が来ていない店には補償せず、休業要請した店だけ補償すれば不公平になる。また災害時に避難してもらっても補償しないのと同じだ」[日本経済新聞]といっています。また吉村大阪府知事の、基準を設定しての出口戦略についても「(基準だけで判断するのは)ちょっと危ないような気がする。大丈夫かと心配もしている」[紀伊民報]と冷静な意見ですが、こういう大衆受けしない卓見のほうは全国マスコミで話題になりません。

▲仁坂吉伸知事 出典:クリエイティブコモンズ

■災禍を乗り越えてきた経験が繋がった宮城県

宮城県には村井嘉浩(むらいよしひろ)知事がいます。「3・11のとき、村井さんの頑張りは特筆するものがありました」としたうえで、「3・11疲れなのではないか」などと具体性のない批評がされています。

しかし、宮城県が被災のど真ん中だった3・11のときには、全国に向かってその窮状と支援を訴えるべき立場でしたが、今回は宮城県知事として、そういう立場ではありませんでした。

むしろ3・11で築き上げた政府との密接な関係を生かして、落ち着いた状況判断をし、震災に続く災禍に戸惑う県民に我慢を呼びかけつつ、適切な時期に一条の光を感じる希望をもたせるような発信してきたのには、やはり自衛隊、松下政経塾、裏千家の茶人という経歴の中で、リーダーシップのなんたるかを学んできただけのことはありました。

さらに、9月入学提案を他府県の知事に提案して、うねりを引き起こした仕掛け人となったのは称賛できます。というのは、4月入学では冬の厳寒期が入試となり、東北など寒冷地の若者にとって過酷であり、東北のリーダーとして素晴らしい働きでした。

まずその場を凌ぎ、新しいことはそのあとという人もいますが、村井知事は「物事にはきっかけがある。宮城でも水産特区や仙台空港民営化は、震災がなければ踏み切れなかった。有事を機に見直せることもある」と前向きな発想を強調しています。

「国に予算を求める立場ではあるが、国の財政を考えると複雑だ」というあたりは、“どんな立場にあっても天下国家のことを考えろ”という松下幸之助翁がいま生きていたらどうしただろう、と反芻をくりかえすという村井知事らしさが出ています。

▲村井嘉浩知事 出典:クリエイティブコモンズ

■特色ある政策を打ち出した山梨県

首都圏の一角である山梨県の長崎幸太郎(ながさきこうたろう)知事は、昨年末に中国でペスト発生が伝えられると感染症対策の不備に気付き、春節の中国人観光客到来を念頭に対策を始めていました。

コロナ発生以降は、重症者受け入れ態勢の充実は時間との戦いだと急ぎました。その際に悩んだのは「休業補償を出せ」という圧力でしたが、東京のように裕福ではないところでは出しても少額になるし、一部の業種しか対象にできませんし、医療体制の整備が犠牲になると頑張りました。

そのかわり「持続化給付金」を、業種にかかわらず受け取れるように申請支援することに力を入れました。自身の給与を1円にしたのが話題になりましたが、スタンドプレイではなく、バラマキを避けるために、あえて自分でまず身を切る姿勢が不可欠だったようです。

特色ある政策としては、保育園に預けず両親が仕事を休むことを援助したり、ドライブスルー検査などでPCR検査人口比全国一にする、マスクなどを県内で生産し安心と雇用と両方に役立てるなどし、今後もあらゆる感染症に強い体制を築き上げました。

■東京に比べ財源が乏しい各知事の頑張り

福岡県の小川洋(おがわひろし)知事は「安倍首相が4月7日に緊急事態宣言を正式に打ち出した後、それを受けた小川知事の会見は、対象となった7都府県で最も遅かった」として「どうも上手く動けていない印象があります」と『文春オンライン』の記事で批判されています。

ですが、記者会見が遅かったといっても、1時間程度の話で、発言内容を吟味するのに少し事務的に手間取っただけ。経済対策の内容も、一部の休業業種に集中して金額を目立たせる内容ではなく、その周辺で影響を受ける業種や、そこで働く学生などにも配慮して十分に特色が感じられます。

また医療対策は、これも耳目を集めやすい一般大衆向けではなく、医療機関の体制整備に力を傾注した実質的なものです。

▲向かって左が小川洋知事 出典:クリエイティブコモンズ

「首都圏の知事は小池知事以外は全員『×』ですね」「全員が後手を踏んでいるように見えます」と同じく『文春オンライン』の記事にあります。

パフォーマンス重視はマスコミ出身の黒岩祐治(くろいわゆうじ)神奈川県知事や、芸能界出身の森田健作(もりたけんさく)千葉県知事も小池百合子都知事もよく似たものですが、小池都知事ほどバラマキはできないというだけの話。

埼玉の大野元裕(おおのもとひろ)知事は、首都圏としての足並みを重視したことが独自性のなさと批判されているように思います。

北陸各県では、大都市から帰省した学生や出張者の持ち込みが起点になって、人口の割には感染者などが多いのですが、知事さんたちの失政という根拠はありません。新潟県ではドライブスルー検査をいち早く実施しましたが、これは、新型インフルエンザ流行時に泉田裕彦(いずみだひろひこ)元知事がとりいれたものでした。

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