コロナ・ショックという“有事”にケチ臭い初期対応をした日本政府

「コロナ転じて福となせ」――コロナ・ショックこそが日本再興のきっかけになる。政治家も、国民も、今すぐ目覚めよ! これ以上、財務省・経済学者・マスコミにダマされてはいけない。日本は「借金大国」などではなく「世界一の金持ち国家」だ! 経済一筋50年のベテラン記者・田村秀男氏が説く日本経済復活の処方箋。

■グローバル経済はコロナ・ショックでお先真っ暗

中国・武漢市発の新型コロナウイルスの被害は、国際金融市場の総本山であるニューヨークを中心とする世界の株式市場に伝播し、2020年3月にはアメリカの代表的な株価指数であるダウ平均株価が大暴落。その後も乱高下を繰り返し「100年に一度の大津波」と言われた2008年9月のリーマン・ショックを超える悪夢になりました。

経済におけるコロナ・ショックは、まず世界のモノの供給源である中国を起点とする、サプライチェーン(部品供給網)の機能がマヒしたことから始まりました。すなわち、中国製部品の材料や供給が乱れ細り、日米欧や東南アジアを問わず、世界のモノの生産が攪乱していったわけです。

リーマン・ショックの時は、カネこそ回らなかったですが、ヒトは動けました。しかし、コロナ・ショックでは、ウイルスへの感染を恐れてヒトの移動も停滞しました。

経済はヒトが動き回ることで支えられています。

ヒトが動かなくなると消費も生産もストップします。

生産・消費を担うヒトの移動が制限されると、景気が悪くなるという“不安にかられたカネ”が、金融市場から逃げ出し、雇用や設備投資にカネが回らなくなります。そうした悪循環が「世界の工場」と言われる中国で起こってしまい、半導体などの電子部品の中間財供給国である韓国にも飛び火しました。

さらに、国境を越えたヒトの移動が自由な欧州連合(EU)の主要国の一つであるイタリアでもそれが起きると、世界経済がこのままおかしくなるのではないか、という不安が投資家の間に広がりました。その結果が先述のニューヨーク株式市場の大暴落です。

▲グローバル経済はコロナ・ショックでお先真っ暗 イメージ:PIXTA?

カネや株はウイルスに感染しませんが、今や瞬時に国境を越え、世界を一周する時代ですから、ときとしてウイルスよりも厄介です。感染症は、入国制限や外出禁止などの隔離政策によって拡大速度を抑えられるかもしれませんが、経済不安が市場に広がるという“感染”は、なかなか抑えられません。

このように、地球全体を覆ってしまうほどの感染症の拡大が、株式市場を大きく揺るがした結果、世界経済は大混乱に陥りました。

新型コロナウイルスの問題は、医療がウイルスそのものを克服するまでは先行きが不透明なため、世界経済の混乱もまだ続きそうです。加えて、同じような未知のウイルスの流行は、これから先もたびたび起こりうるだろう、という専門家の予測もあります。

ヒトもモノもカネも、国境を越えて自由活発に動けるというグローバリゼーションの時代は、新型コロナウイルスの登場によって、一夜にしてお先真っ暗になったと言っても過言ではありません。

■有事には政治とリーダーの決断が必要!

これまで主要国の中央銀行は、金融危機が起こるたびにカネを大量発行し、不況を最小限にとどめてきました。

しかし、新型コロナウイルスがもたらした金融危機は、従来のものとは次元が異なります。

生産や消費を担うヒトが動けなくなったわけですから、金融市場対策だけでは経済危機を止められません。そのため各国の政府は、財政資金を家計や中小・零細企業を中心とする多くの業種、地方自治体に投入せざるを得なくなりました。

コロナ・ショックは、経済政策面で考えると「富める階層のための財政・金融政策を一般国民向けへと、現代史上初めて転換させた」という意味で歴史的だと言えます。

しかし、日本政府の初期の経済対策を振り返ってみると、それはもうひどいものでした。

一言でいうと、ケチ臭い。

すったもんだの末に、2020年4月7日に発表された新型コロナウイルス感染症緊急経済対策は、事業規模が日本のGDP約540兆円の約2割に相当する108兆円をウリにしていました。安倍晋三首相(当時)は、世界最高水準の規模だと胸を張っていましたが、世間からはすこぶる不評でした。

それもそのはず、108兆円と言っておきながら、景気を押し上げるために実際に政府が使うおカネ、すなわちGDPに直接働きかける財政支出は14〜15兆円くらいしかなかったからです。専門家たちの間で、いわゆる「真水」と呼ばれる財政支出がそれですが、この真水の金額が緊急経済対策において、もっとも重要な柱となります。

必要な量の真水を用意せず、見せかけの金額だけ膨らまして「GDPの2割もあるから安心してください」では話になりません。

▲安倍晋三前首相 出典:ウィキメディア・コモンズ

迅速性が求められる国民への現金給付に関しても、当初は所得制限を設けるか否かで、なかなか話がまとまらず、決定が遅れてしまいました。国民が結束しなければならない緊急事態時に「あの人はもらえるのに、私はもらえないかも……」と国民を不安にさせているようでは、結束なんてできるわけがありません。

また、現金給付よりも景気対策として即効性のある消費税の減税については、なんと3月の時点で早々に、麻生太郎財務大臣が否定的な見解を述べていました。

4月7日の緊急経済対策発表の際、政府は「世界経済が戦後最大の危機に直面している」との認識をはっきりと表明しています。

「戦後最大の危機」と言うのなら、それ相応の対応をしてしかるべきです。

政府がこのようにケチ臭い対応しかできなかった背景には、財政均衡絶対主義(緊縮財政・増税路線)の財務省の意思があります。

しかし、有事の際には官僚が得意とする平時のやり方では通用しません。

有事には有事に対応した政治の決断、リーダーの決断が必要です。

この緊急経済対策の一連の議論を通じて、とにかく政府にカネを使わせようとしない財務省の存在を、世間が多少なりとも認識するようになった印象を受けます。その意味でも、コロナ・ショックは日本国民が財務省の洗脳から“目覚める”いいキッカケになるかもしれません。

※本記事は、田村秀男:著『景気回復こそが国守り 脱中国、消費税減税で日本再興』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

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